第74話 構わないさ
なんとなく書き溜めたほうがいいと思ったので、この話の後は、この件が一段落するまで書き溜めた後投稿します。出来るだけ早めに投稿したいんだけれど、プロットの修正も行うため絶対時間がかかります。ご容赦を
~フィフトハ・リーン~
レイヴンと別れた後、迷わず馬車屋へと向かったローゼ達はしばらくの間馬車へと揺られ、オネストとそう変わらぬ中世的な街並みの町へと辿り着いた。
「……あんたが鬼気迫りすぎてて聞けなかったけれど、リーゼロッテはどうするのよ。まだレベル上げもしてないのよ」
馬車から降りるや否やセリオから発せられた問いにローゼはバツが悪そうに頭を掻く。
「あぁ、トールって聞いて頭からすっぽ抜けてた。ゴメン」
「ゴメンってあんたね」
セリオが呆れた目でローゼをじっと眺めていると、考え込んでいたリーゼロッテが口を開いた。
「……もしかして、記憶絡み?」
「……まぁ、ね」
ローゼはその問いに関係者ではないハルが居るにも拘らず答え、中途半端に開いた自らの右手を目の前にもって行き、その掌を見つめる。
「最近、もう気にしないって決めたはずの記憶の欠片がポロポロと目の淵に移る。落ち着けないんだよ。本腰入れて探してた時はその欠片の端も見せなかった癖して探さなくなった途端に目の淵にその存在を示して。その所為でちょっとノイローゼ気味だ」
ローゼはそのまま掌を顔に押し付け、そのまま奥歯をかみ締める。精神的に不安定であり、今自分がここにいるのかもおぼろげで。とにかく、この状態から脱することが出来ると考えて受けた。だがそれをまったく持って冷静な思考を持っていない状態で受けてしまった。ノイローゼになっているとはいえ、それで良い訳がない。
「まあ、だからって俺がやらかしたことが正当化されるわけじゃあないんだが。だから、ゴメン、リーゼロッテ」
「まとめ役の偶の我侭位聞きますって。私も中々やらかして後始末頼んでるもの」
リーゼロッテのその言葉を聞いた途端にローゼの表情がピシ、と消える。ローゼのその表情を見た途端にハルはやばげな気配を感知する。が、今この状況で物理的被害が出ないだろうと考えてハルとセリオはそれを放置した。
「……それもそうだな。謝って損した」
「ちょっ!? 流石に損したは」
ローゼは自分の言葉に抗議するリーゼロッテを見据えて簡潔に述べる。
「キミ、今まで自分のやらかした騒動で俺が何回後始末のために奔走した?」
「……両手両足の指でたりないかな?」
「足りる訳ないだろうが一ヶ月に一度の頻度で起こしてた癖してさ」
「あははー……」
「……フン」
リーゼロッテはローゼの言葉に何も言い返せずに笑って誤魔化す。ローゼはそんなリーゼロッテを見て鼻を一度鳴らすと、帽子を被りなおして大通りへと歩き出した。
―――――
~ギルド・エレメンツ【フィフトハ・リーン】支部~
「ああ、あんたらがうちのマスターから紹介があった助っ人か。トールさんはまだ来ちゃいねぇが、中々な面構えだなぁ」
「えぇ~。俺達も無法者は嫌いな性質なのでぇ。レイヴンさんから相談されたので受けようって思いましてねぇ?」
ローゼ達は周りの建物よりも少し大きい建物に入ると、ローゼとためを張れるくらいの巨漢がローゼ達を出迎え、ローゼはそれまでの鬱屈した感情を隠して飛びっきりの営業スマイルでそれに応える。
「言っちゃあ悪いがうちのお偉方は体格の割りに強いってぇのが多すぎてな。アンタは中々見た目からも強そうで信用できる。マスターからの紹介だしな。ああ、名乗り忘れた、俺はシロウ。この支部の支部長をやらせてもらっている。まあまだサウザンなんだが」
「……あぁ、エレメンツの上から3番目のグループ」
ローゼはシロウと名乗った巨漢の言葉に以前イルムが言っていた組み分けの内容を思い出す。そして、名乗ることを思い出してはっとした表情に変わる。
「あっ、俺の名前は「ローゼ、だろ? 知っているよ」えっ」
名乗りに横入りされたローゼは更に呆気に取られた表情へと変わり、シロウはそんなローゼを見て笑いながらローゼの中にあるであろう疑問に答える。
「あんた、結構有名なんだぜ? うちのお偉方の一人に勝ってたりとかさ。お手合わせ、願いたいんだけど、いいかい?」
「……構わないさ」
「構うわよ馬鹿」
シロウの申し込みに同意しようとしたローゼをセリオはジャンプして頭を引っ叩き、止める。
「アンタここに何しに来たの? 街守ってって依頼でしょう? エレメンツの支部長と戦いに来たわけじゃあないでしょう?」
「さっさと終わらせるってぇ」
セリオの言葉に対するローゼの問いにシロウはムッとしながら口を挟む。
「おいおい。いくらうちの幹部の一人倒せたからっていくらなんでも甘く見すぎじゃないか?」
「いや、襲撃してくるであろう時間を見てってことだってぇ。長く戦っても30分程度だろう?」
掴み掛からん勢いで食いかかってくるシロウにローゼは鬱陶しそうに告げ、辺りを見回す。
「見たところ、まだトールは来ていないみたいだし、さっさと済ませよう。ギリギリに終わっても回復するし」
「……甘く見た報い程度は受けてもらう」
「どうぞご自由に」
シロウはそのローゼの反応を見ると鼻を鳴らして建物から出て行く。往来で戦うつもりなのだろう。
セリオはシロウがいなくなったのを見計らってローゼに食いかかる。
「ちょっと、何考えてるのよ!?」
「好都合で渡りの船。乗らないほうがおかしいね」
「あんたねぇ……」
ローゼの答えに納得行っていない様子のセリオに、ハルとリーゼロッテが横から自分の考えを述べる。
「ロゼのやり方は間違ってないと思うぜ。ロゼがイルムに勝ったとアレが言っていた。それが信用する根拠足りえるともな。でも、内心はそうじゃなくて外っ面だけ取り繕った可能性のほうが高い」
「そうそ。まあ確信に至るのは最後のあの捨て台詞がなきゃあわたしには無理だけど。たまたま勝った、相性が良かった。そう考えているんでしょうね、あの人。実際には信用されてなくて捨て駒にされるのはゴメンだね」
ハルとリーゼロッテの言葉に、セリオは無意識に握っていた拳を口に当て、二人の話を聞いた結果自身が出した総合的な結論を呟く。
「……だから、実力を見せて、信用させる?」
「そう。ま、後ろで応援しといてくれ。一目おかれる存在の仲間なら、向こうだって無碍に扱わないさ」
「ちょっ、やめなさい!」
「ハハッ」
セリオの頭を強引に撫でたあと、ローゼは帽子を押さえながら建物の外に出る。負けたならば策略もご破算、負けられない前哨戦に向かう。




