第75話 舐めた報いだ疵面
ようやくトール戦まで書き終えました。というわけでこれから少しの間毎日投稿です。増えないかな、読者
~フィフトハ・リーン・大通り~
「準備はいいかい、カウボーイ」
「御託はいいよ、カラテカサン?」
「悪いが、グラップラーだ!」
建物から出て直ぐの大通りでローゼとシロウは対峙し、二人以外の人間はギャラリーとして遠巻きに見守る形となる。当然、セリオたちの姿もそこにある。
シロウが虚空に浮かぶウィンドウを操作するとローゼの目の前に【 シロウ からPvP申請がありました。受領しますか?】というウィンドウが浮かび上がり、ローゼは迷わずその下に浮かぶ【はい】のウィンドウを叩く。するとシロウとローゼの丁度中間点あたりから球状のエネルギーフィールドが広がっていき、シロウとローゼ以外の人物はそのエネルギーフィールド外に押し出されるようにされ、エネルギーフィールド内にシロウとローゼ以外の人物はいなくなる。
【3】
「お手並み拝見……!」
「あぁ、そうそう」
グラップラーとの宣言どおりにシロウが投げ技重視の手を広げ、腰を低く落とした体制に入ったことを確認してからローゼは思い出したように言う。
【2】
「言い忘れていたけれど」
ローゼは腹部前あたりに固定されているホルスターのベルト固定部の金具を外す。
【1】
「今回銃は使わない」
「なっ!?」
そのまま重力に従い落下する銃が入ったホルスターとともに告げられた台詞はシロウやギャラリーの表情を驚愕に染める。
【GO】
「ふざけているのかぁぁぁっ!?」
その一言はシロウの瞳を憤怒に染めて、カウントダウン終了直後にその身を突進させるに十分な一言だった。
ローゼはそれを見ても帽子を押さえながら跳び、シロウの背後をとった上でシロウに指を突き出しながら改めて宣言する。
「くどいよ。流石にそこまでハンデもらった状態で勝ったってしょうがないし」
「……舐めるなッ!」
表情一つ変えずに告げられた言葉は更にシロウの頭に血を上らせ、シロウは振り向きながら足払いを仕掛けるも、ローゼは側宙でそれを躱し、少しだけ距離を取る。
「おいおい……足払いがグラップルか?」
「ちぃぃ!」
シロウは組み付くためにすばやく手を突き出すが、ローゼはそれを身を反らすだけで躱しながら一定数避けるごとにカウンター気味にシロウの胴体にパンチを打ち込み、拳が胴体に突き刺さるたびにシロウは少しずつ後退し、ローゼは段々とエネルギーフィールドの端へとシロウを追い詰めていく。
その最中、シロウはローゼの胸倉を捕らえることに成功する。
「! もらったっ!」
シロウは足腰と腕に力を籠め、腕こそ掴んでいないものの変形の背負い投げの体制に入り、ローゼの体が宙に浮く。
しかし、腕を掴んでいない背負い投げなど天地揃っていないマッスルスパークと同じである。つまり、格上に対しては簡単に返され、それがそのまま隙になる。
「舐めた報いだ疵面!」
「舐めているのはどっちさ」
ローゼは背負われた瞬間に脚を曲げて回転速度を上げると同時に回転軸をシロウの腰からシロウの背後の空間、シロウの制御外へと無理やり変更、シロウの右腕を取りながらシロウの目の前へと足から綺麗に着地する。
「背負い投げってのはこうするもんさ、アドリブが入ってるがね」
ローゼは着地の勢いを投げるエネルギーへと転換、腕を持って背負い投げ、更に前に倒れこむようにすることでシロウを頭から地面に叩きつけ、肩を入れて梃子の原理を使ってシロウの右腕の肘を破壊する。
少し遅れてシロウの背中が地面に着くか着かないかぐらいのところでローゼはシロウの腕を放して体を跳ね起こしながら飛び退く。
「さて、起きられるかい?」
「ウググ……」
わざとらしく肩を竦めたローゼがおどけた調子でシロウに問うと、シロウは右手に力を入れて起きようとし、右腕に激痛が走り呻き声を上げて左手を地面に突いて起き上がる。
「降参、する?」
「誰が!」
ローゼは右手で帽子を押さえながら問い、シロウは精一杯に声を張り上げてそれを跳ね除ける。
次の瞬間、ローゼの回し蹴りがシロウの側頭部に突き刺さった。
「ああ、そう」
ローゼは興味がなさそうに呟くと、帽子を頭の上から押さえて地面に落としたホルスターを拾う。シロウはしばらくの間転がり、PvPフィールドの壁にぶつかった際にHPが消滅、勢いを止め、あっけない幕引きを迎える。
「ま、これくらいの力量はあるさ」
ホルスターを固定し終えたローゼは事もな下げにそう呟いた。




