第43話 黄信号にすら届かねぇ
今回は短めです。
~フォーリン・カーズ~
車の中で揺られること30分、ようやく着いたようで天井のハッチが開く。
「着いたぞ」
イルムがハッチの上から声を掛けてきたのでローゼ達3人は起き上がりハッチを見上げる。
「……ん、ついたぁ?」
「がんばれば課題って10分で終わるんだなぁ。知らなかった……」
「あんたログアウトしてる間に課題やってたの? レポート期限、いつだったかしら」
「明後日だから落ちたらさっさとしろ」
そのまましゃべりながら出てきた三人を見て、イルムはげんなりした顔で呟いた。
「お前らリアル大丈夫か?」
「ぶっちゃけ働かなくても暮らしには困らないよぉ。やんないけどぉ」
「2年前までニートやってたわね。引きこもりの。今は学生」
「いやお前、俺のは知ってんだろうが」
「心配してるんだよ。色々。まあ、いいからさっさと降りろ」
イルムはそう返しながら機体を降りるように三人に急かす。
「宿屋も手配しておいた。”ストリングス”ぶっちゃけ時代劇風のこの町にふさわしくない現代風の建物だからすぐ分かる。テンスのイルム……いや、レイヴンからの紹介って言えば優遇するから」
「テンス? エレメンツじゃあ?」
ローゼはイルムの言葉に疑問に思いテンスとは何かを問う。
「ギルド内のクランだよ。うちは上から順に【テンス】【ハンドレッツ】【サウザン】【ヨロズ】【ヤオヨロズ】って風に組み分けされてんの。まあこの中で気が合う同士で組むチームとかもあるが……まあ、外に伝わりやすいのはクランまでだよ」
「ふぅん」
イルムの説明にローゼは納得いった様子で頷く。
「ま、俺がするのはここまでだ。そうだローゼ。一つ言っとく」
「何を?」
「まだお前じゃ青信号どころか黄信号にすら届かねぇ」
イルムはそれだけ言うと機体に乗って走り去ってしまった。
「……負け惜しみをッ」
ローゼは苦々しげに顔を歪めながら呟く。しかし、思い当たりはあった。残りの三人はレイヴンが青、トールが黄、コロナが赤。一般的な信号の色となる。ここからAMの強さ順にすると、レイヴン>コロナ>トール。つまり黄信号にすら、とは、お前はトールにすら敵わない、という決めつけ。今の、ままでは。
「早急だな……パワーアップ」
ローゼはそう呟きながら町に向かって歩き出す。それに追随するように残りの二人も歩き出す。
「所で、場所は分かってるの?」
「歩いてりゃ分かるでしょう?」
「つまり、行き当たりばったりってことね」
セリオの言葉にローゼがそう返すと、セリオはため息をついた。そんな様子を見ながら、ハルはある提案をする。
「ならさ、手分けするのは? 見つけたらマーカー出すってことで」
ローゼとセリオはその提案に少し考えた後に賛成する。
「……オーライ。それで行こう」
「まあ、それが一番手っ取り早いわね」
「んじゃ、俺はこっちに行くから」
ハルはそうとだけ言って路地裏へと消える。
「じゃあ、またあとでぇ」
「えぇ。また後で」
そして二人は分かれ、セリオは大通りを、ローゼはハルとはまた違う方向の路地裏へと向かう。
「……妙だな」
そしてしばらく歩いているとローゼは違和感を感じて立ち止まる。
「誰も居る様子はない。喧騒とか、そういうのがない。なのに、視線を感じる……?」
ローゼが思案していると、風切り音が響いた。ローゼはそれにすばやく反応して飛んできた何かをコートで防ぐ。
「手裏剣っ?」
防ぎ、コートに刺さっていたものは、手裏剣。くないでも十字でもなく、歯車型の手裏剣がコートに突き刺さっていた。
「シャツもだけど、コートも新しいの調達しなきゃな……!」
また新たに飛んできた手裏剣をローゼはEx-Sを使い全て撃ち落す。そのうち落とした手裏剣が地面に落ちるとともに夜の闇にまぎれて黒い影が飛び出した。
飛び出てきた黒い影はその手に持ったつばの広い刀の刀身を月明かりに煌かせ、ローゼに切りかかってくる。
「忍者!? 何で俺を!?」
ローゼは混乱しながらEx-Sのブレードで刀を受け止める。空に輝く月が、雲に隠れた。




