第38話 鎧装宝玉(アームド・ジュエル)
色々と説明回です。要素詰め込みすぎたかも?
~ウィッシュ・レイ~
ローゼ達一行は鉱山を降り、街に降りてきていた。町並みは暗く深き夜の闇に覆われ、人並みも疎らだ。帰りのモンスターはローゼが憂さ晴らしに爆殺しました。
「耐久値確認忘れてたぁ……」
「いいかげんテンション戻しなさいよ。帰り中の高笑い状態までは戻さなくてもいいけれど」
「涙流しながら高笑いとかパないなぁ。そんなに大切なものだったのかよ?」
落ち込みながらトボトボ歩くローゼ、その背中に負ぶさられながら頭をペシペシ叩くセリオ、鎧のずれを直しながらローゼに問うハル。
「まあ、このゲームにおける初依頼の報酬の一つだしねぇ。それなりに……思い入れは、あったさぁ」
ローゼはその依頼者、プーランを思い出しながら答える。
「ふぅん。センチメンタルって奴か」
ハルはそう返事しながら空を見上げる。明かりも少ないこの町では、綺麗な星空が広がっていた。
「所で、さっきのドロップ品だけどさ」
ハルはインベントリからディアヴォロ・ワイバーンのドロップ品のひとつである黒い目玉のような宝石を空に掲げ、星空を透かす。
「これ、ねぇ」
ローゼもインベントリから金色の目玉のような宝石を取り出し、鑑定する。
悪魔竜の目玉:金
マジックアイテム
秘められし力は強靭な肉体。願い届く時、その力は鎧となる。
「……わっかんないなぁ。ブランゲラさんに聞いてみたら何か分かったりするのかも」
「しかもそれぞれおあつらえ向きに別々の力を秘めてるみたいなのよね。私のは角。あんたたちのは?」
ローゼがインベントリにしまうとセリオがローゼ達に問う。
「俺のは肉体。ドーピングアイテムとかだったりするのかなぁ?」
「俺のは翼だ。それだと俺とこのちみっ子のが判らんでしょうが」
ローゼが憶測をあげ、ハルがそれに突っ込む。そんなことをしていると待ち合わせ場所の酒場へと辿り着いていた。
「んじゃ、報告ついでに聞いておこうかぁ」
「分からなかったらインベントリの肥やしだな」
そんなことを言いながら酒場の扉を開け中に入る。そこにはブランゲラが酒を飲みながらカウンター席に座っていた。
「依頼、完了しましたぁ」
「おぉっ、ローゼさん! 奴を見事討伐してくれましたか!」
「えぇ。証拠は、これです」
ローゼはインベントリから悪魔竜の目玉を取り出してカウンターテーブルに置き、討伐した証拠として歓喜するブランゲラに見せる。
「これは……確かに奴の目玉のようですね」
「後黒いのと白いのがありますけどね」
じっくりと眺めるブランゲラにローゼは軽く補足を入れる。そして、切り出した。
「所で、聞きたいことがあるのですが」
「何でしょうか?」
「……プーランの、母親のことです」
「……妻の、ことですか」
「兄弟って可能性はあるんですがね、ここは確実にいるであろう人間……の事を、聞くことにします」
ローゼの問いに、ブランゲラは言い辛そうに、その輪郭を思い浮かべながら答える。
「妻は、強い、女剣士でした。奴の討伐隊も、妻が仕切っていたんです。大丈夫、だと思っていましたが遂には帰らず……聞くという事は、それは、つまり……」
「……えぇ。恐らく、ですが、奥様らしき肉塊を、奴が貪っていました。奥様の姿はわかりませんが、プーランに似ていたのでもしかしたら、と思いまして」
「……妻の仇を取って頂き、真に感謝します」
ブランゲラは静かに涙を流し、ローゼはズボンを握り締める。間に合わなかった、その無念を抱きながら。
「心中、お察しします……この流れで聞くのもおかしいですが、この目玉、何か秘められし力があるそうなのですが……ご存知、ありませんか?」
ローゼは気になっていた疑問を問う。今聞くのは無神経かもしれないが、聞かずには居られなかった。
「秘められし力……? もしや、鎧装宝玉」
「鎧装宝玉? それは、一体」
ブランゲラの答えた単語を問うローゼ。もうあまり無神経かも、なんて配慮はない。
「加工すれば魔力を流す事によって身をまとう鎧となる宝玉の事です。基本的に球形なので宝玉と名付けられていますが、形はさまざまなものがあります」
「鎧……確かに、そう書いてあったな」
「どこにです?」
「えっ、あっ、頭に! 頭にそういうイメージが浮かんだんですよぅ! あはは!」
ローゼのロールプレイの原則、『NPCにゲームの仕様で話さない』。度々忘れているような気がするが、実際に生きていそうな超AIを搭載しているNPC、リアルな物理演算。もう一つの現実世界といっても良いこのクリエイト・ワールドの世界を、雰囲気を堪能したいと思うのは傲慢だろうか。いや、傲慢ではなく当たり前の感情である。NPCをシステムメッセージだと思うと味気ないし。
「はぁ、そうですか」
「えぇ! それで、どうやって使うんですか?」
「それは……」
ローゼはブランゲラに謎の鎧装宝玉、という物の使い方を聞くと、ブランゲラは少しだけ言いよどみ、答える。
「使い方は簡単です。宝玉に触れながら合言葉を唱えるだけ……しかし、加工しなければ使えないんです」
「そうなんですか……二人とも、明日は何時から空いてるぅ?」
加工しなければ使用できないと聞いて、ローゼは二人へと振り返り明日の予定を聞く。
「明日は水曜日……バイトあるから夜10時くらいかな」
「大丈夫なの? 学生。私は講義が八限のを一つとっちゃってるから夜6時くらいかしら」
「了解。じゃあ明日夜10時半くらいにこの酒場で待ち合わせねぇ。ブランゲラさん。報酬ついでにこれらの宝玉を加工してもらえますか?」
「えぇ。いいですよ。明日の夜、その他の報酬とともに持ってきます」
ブランゲラのその言葉を聞き、セリオとハルの二人もインベントリから目玉を取り出しカウンターテーブルへと置き、ブランゲラへと渡す。
「確かに、悪魔竜の目玉受け取りました。では、今から作業に入りますので失礼します」
「えぇ。よろしくお願いします」
仕事場へと向かうブランゲラを見送りローゼ達一行は席を立つ。
「じゃあ、ログアウトするために宿探そぉう。夜も更けてるしぃ」
「そうね。ハル、パンフレットにいい宿屋とか書いていないかしら?」
「待ってくれ、今探す」
その後、パンフレットに書いてあった宿屋で部屋を取り、それぞれログアウトしたのであった。




