第35話 Break out(砕けろ)!
何故か35話はよくクリスマスイヴに投稿されることが多いです。そういえば詩魔転も35話はイヴだったなぁ
〜ワム鉱山〜
「ちょっと!? 一体どうしたってのよ!?」
セリオはいきなり駆け出したローゼに叫ぶ。ローゼは全力疾走しながらセリオを一瞥もせずに答える。
「人を喰らう獣! 駆除しなくてはならないだろう!」
ローゼは嘘はついていない。本心を言ってもいないが。実際、人を喰らう凶暴な獣がいるならば迅速に確実に処理しなくてはいけない。猟友会などの存在意義はそんなところにあったりする。想像して欲しい。檻の中に入ったライオンならば見て談笑出来るが、身の着ままにライオンと対峙したら誰だって泣き叫ぶだろう。地上最強の生物は知らない。話通じるならなんとか見逃してもらおう。
本心を言ったとて、セリオがその本心を理解してくれるかはまた別。ならばわかりやすい理由を話せばいい。
「……わかったわ。無理は禁物よ!」
「言われなくてもわかってる!」
セリオはローゼが本心を言っていないことには気づいた。しかし、この場で聞くものではないとも悟ったため、無理はしないように窘め、自身もディアヴォロ・ワイバーンへと向かって駆け出す。
ローゼは一足先にディアヴォロ・ワイバーンを射程範囲へと入れると、ベルトとズボンの隙間に挿した鞭を引き抜き空気の破裂する音を響かせながら振るう。
「Snake Bind!」
ネイティブな掛け声とともに振るわれたその鞭はディアヴォロ・ワイバーンの体を締め上げ、ローゼは鞭を引っ張りディアヴォロ・ワイバーンの体を引き寄せる。
「Eat it!」
そのままだらしなく開いた口にナパーム弾を投げ込みそのまま掌底で顎を打ち上げ口の中でナパーム弾を爆破させる。その爆風が牙の隙間から吹き出しローゼを吹き飛ばす。
「くぅっ!?」
「何やってるの! 無茶しすぎ!」
「理解してる! しかし、無駄だったみたいだな」
「え?」
ローゼの言葉にセリオが目をやると、そこには口から白煙を上げながら気味悪く口角を吊り上げるディアヴォロ・ワイバーン。
口内の爆発にも全く堪えていない様子にローゼとセリオは警戒を強める。
「キャルキャルキャルキャルッ!」
「「(……来るっ!)」」
甲高い笑い声のような鳴き声を上げながら、ディアヴォロ・ワイバーンは翼を広げローゼたちの方へ衝撃波を生み出しながら突進してくる。
衝撃波を生み出すほどのスピードにセリオは体が反応できず、ローゼは辛うじて動いた腕でなんとかディアヴォロ・ワイバーンの角を掴む。しかし。
「ぐぅぅっ!?」
「ローゼっ!?」
勢いを殺しきれずローゼの足は宙に浮き、ディアヴォロ・ワイバーンに掴まったまま空を飛ぶ。そしてそのまま鉱道の内壁に叩きつけられ、ゴツゴツとした壁に押し付けられ、背中が擦り切れそうな勢いで引き摺られる。
「っの! 離しなさいっ!」
ローゼを助けるためにセリオは跳躍し、ディアヴォロ・ワイバーンの背中を斬りつける。しかしディアヴォロ・ワイバーンはやはり一切堪えた様子を見せず、ローゼを掴みセリオに投げつける。
「ちぃっ」
「くぅっ」
両方とも空中で体勢を立て直し、地面を滑り、砂煙を上げながら着地する。そしてローゼはセリオが無事体勢を立て直したことを確認するとディアヴォロ・ワイバーンへと駆け出し、振り向きもせずにセリオに指示を出す。
「カタパルトになる、タイミングは任せる!」
こんな抽象的すぎる指示に対してセリオは文句ひとつ言わずローゼの後を駆ける。
「カウント3!」
「2!」
「「1!」」
カウントがゼロになる瞬間、セリオは高く飛び上がり、ローゼは両腕を後ろに振りかぶる。
「Go shoot!」
「魔法詠唱!『眩き閃光はあらゆる物よりも鋭く、澄んだ光の前に魔なる物、その身を滅ぼす! エンチャントマジック【サンライト・ブレード】!』」
ローゼが腕を振りセリオが投石器の石のように射出される瞬間、セリオが詠唱を済ませるとその右手の魔剣・燐に光が集中し、膨大な魔力が溢れ出す。
「Dust to Dust! Ash to Ash!」
そのまま右腕を突き出し、ディアヴォロ・ワイバーンに剣を突き立てる。しかし。
「っ!? 光が、流れない!?」
「……どういう技かわからないから反応に困るな」
予想外の事態にセリオは驚愕し、ローゼは一歩下がってディアヴォロ・ワイバーンの攻撃に備える。
「キャルォゥ!」
「きゃぁっ!?」
「あっぶなっ」
ディアヴォロ・ワイバーンは空中で回転してセリオを弾き飛ばし、ローゼはセリオをジャンプして抱きとめる。
「あんの竜、むっっっだに強いわね」
「主力武器預けて来たのは間違いだったか……?」
ローゼはセリオを下ろし、ホルスターから無骨な銃を抜き、撃鉄を上げながら銃口をディアヴォロ・ワイバーンへと向ける。
「パイルバンカー、欲しいとこだがっ!」
足をバネのようにして力を蓄積、そして蓄積された力を解放し、銃弾を発射しながら自身も銃弾のように飛び出す。
「きゃるるぅ!」
ディアヴォロ・ワイバーンはその放たれた銃弾を腕に生やした爪を振り抜いてはじき、コウモリのような翼をはためかせてローゼと同じくらいの勢いで飛び出す。もっとスピードを出せるはずなのに同等のスピードで向かう、要するにディアヴォロ・ワイバーンはローゼを舐めている、ということだ。その事実にローゼは不快感を感じながら、バックルを左手で叩きメダルを左手の指に挟み込む。
「Chant of Magic!『explode a lead !Blow away an enemy's body! Burst, fly and become a lance! Ground attribute magic 【metallic explosion Lance】! "』
湧き上がるテンションのままローゼは全て英語で呪文を詠唱、その詠唱はシステムに届き、左手に挟み込んだメダルが鈍く光る。
「キャルルルル!」
ディアヴォロ・ワイバーンはその光をも恐れず勢いを落とさず真っ直ぐに突っ込んでくる。そしてローゼはタイミングを見計らい跳ぶ。狙いはローゼから見て右側、ディアヴォロ・ワイバーンの左角。左手で自然と拳をかたどり、その型どられた拳は一寸の迷い無く振り抜かれる。
「Break out(砕けろ)!」
ローゼの左拳がディアヴォロ・ワイバーンの左角に命中した瞬間にメダルは指向性を持って爆発し、ディアヴォロ・ワイバーンの左角をへし折る。
「やった!」
セリオが喜んだその瞬間、ズブシャ! と肉に穴が空く音が坑道内に鳴り響く。
「ま、まずったか……」
「ローゼっ!?」
ローゼの腹には、ディアヴォロ・ワイバーンの爪が、深々と、まるで狙い済まされていたかのように突き刺さっていた。
「キャルゥッ!」
「ぐあっ」
ディアヴォロ・ワイバーンはつまらなそうに腕を振るうとローゼは坑道に投げ捨てられる。
「ロォーゼェーッ!」
セリオの叫びが響き渡る。その叫びは行動の中の深き闇にも響き渡っていた。
あ、ローゼ死んでません。ギリ生きてます。




