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第36話 Восприятие(了解)!

 ロシア語って聞いててなんて言ってるかわっけわかんないですよね。某アイドルゲームのロシアハーフアイドルのカタカナロシア語の苦労がわかりました。

 あ、ハルは奥義を覚えていますが奥義はデフォで非公開設定です。あ、後付けじゃないよ!?

 〜ワム鉱山?〜


 ハルは槍を構えながらいきなり現れた老婆、シェダルクに対して問い返す。


「力? 一体何の」

「魔法の力さ。暗黒の力。あんたは条件を満たした」


 シェダルクの物言いにハルは眉を顰めながらさらに問い返す。


「暗黒の力? あんた、俺を悪人とでも言いたいのか?」

「悪人なら気に入りはしない。しかし、闇を潜ませてはいるだろう?」

「闇? どういう意味だ、答えろよ、婆さん」


 ハルはシェダルクを睨みつけながら槍を構えなおす。何が起こるのかわからないからだ。


「嫉妬。あんたは助けてくれた恩人の薔薇の様に華やかな性格に、嫉妬しているだろう?」

「人の心を勝手に覗いて占い師気取りか。個人情報保護法って知ってるか?」

「べっつに記憶読み取ったからって架空請求送りつけたりやしないさ」


 シェダルクはさらに近づきながら告げる。


「あんたの深い闇、それが見たいだけさ」

「ハン、嫉妬心でスプラッタホラーでも見たいのか? 趣味が悪いな。しかし、残念だったな? 俺は警察官を目指しているからそういう倫理観は無理やりにでも詰め込んだしたとえ嫉妬していたとしても」


 ハルは左手を槍から離し鉄と革でできた防具で覆われた自らの胸へと当てると高らかに宣言する。


「俺はその嫉妬心を向上心へと昇華する! たまに八つ当たりとかするけど概ねな!」

「だから気に入った!」

「あらぁ!?」


 思っていた反応と違いハルは少しつんのめる。シェダルクはそんなハルを気にせずにベラベラと喋り始める。


「大体、闇=悪なんて考えかたそのものが古い!」

「あんたの見た目も古いけど」

「だぁらっしゃい! 光があれば闇があるとは言うけどね、善が光で闇が悪なわけじゃあない! ただのプロパガンダ!」

「たまあに光が破滅側の時あるけどなー」


 なんかだんだんと面倒になってきたハルはどことなく適当に返事をする。そんな時、悲鳴が響き渡る。


 《 ロォーゼェーッ! 》


「っ! なあ、シェダルク、とかいったか婆さん!?」

「あぁ。私の名はシェダルク。暗黒の賢者だよ」

「俺に、力をよこせ! 並び立ちたい恩人(ヒト)がいる! 見返してやりたい奴がいる! 俺に、力を!」

「叫ばなくたって聞こえているよ」


 シェダルクはそう言うと両手を広げると、シェダルクの前に漆黒の気、艶消しされた黒い槍、槍とは対照的に綺麗に磨き上げられた金属製の黒い箱が虚空より現出する。


「受け取りな。これが力だ」


 ハルは漆黒の気が自身の体に染み込んだことを確認すると手に持った槍をインベントリにしまい、黒き槍と黒き箱を受け取る。


「覚えておきな。合言葉は、魔法詠唱(チャントオブマジック)」

「……Восприятие(了解)!」


 ハルは短く返事をするとまるで今この場所がどこかとわかっているかのように、まるで無重力の中にいるかのように体を上下反転し、真っ直ぐに下を目指す。


「魔法詠唱(チャントオブマジック)―――!『闇深き。一は全、全は一。闇、あらゆる場所に通ず。【ダークネス・ブデット・ドゥヴィチェニィェ】!』」


 ハルが呪文を詠唱するとその身体は闇に溶けていく。そして、ハルの体は闇しかない空間から消え失せた。


 ―――――


 〜ワム鉱山〜


「キャルキャルキャルキャル!」

「ローゼっ! ロォーゼェッ!」


 ディアヴォロ・ワイバーンは勝利の雄叫びをあげ、ローゼは虫の息、そしてセリオはパニック状態に陥っている。とても逆転できるような状況ではない。


「キャルルゥ」


 ディアヴォロ・ワイバーンは突如雄叫びをあげるのをやめたかと思うとゆっくりと、一歩ずつ、一歩ずつ、セリオたちへと近づいていく。ローゼの息の根を止めるためでもなく、唯追い詰めて追い詰めて追い詰め抜いて。自らの嗜虐本能を満たすためだけに。まるで知性を持っているかのように、実際の生き物かのように。合理性も何もない動きをしているのだ。AIの進化を感じさせる。

 ディアヴォロ・ワイバーンとセリオたちの距離も腕一本分程度にまで縮まり、ディアヴォロ・ワイバーンはその腕を振り上げる。そして振り下ろそうとした瞬間、天井のデコボコに僅かにできた影が揺れた。


「頭上注意、ってなぁ!」


 ハルは影の中から現れると振り上げられた腕を黒き槍で切り落とし、そのまま体勢を立て直す途中の錐揉み状態のままディアヴォロ・ワイバーンを蹴り飛ばし、わずかながら距離を開く。


「ローゼス・ノブレスの一番弟子! パルス・イーター、見ッッッッ参!」


 空中でポーズを決めながら名乗りを上げるとハルはバク宙でセリオ達の近くへと降り立つ。


「ローゼの様態は!?」

「ローゼ!? わかんないわよ! お腹に穴が空いてて、落ちてないのが不思議なくらい……ッ!」

「ならHPはまだ残ってる! 軟膏を患部に! 少し時間はかかるだろうが確実に治ってくれる!」

「あんたは!?」

「時間を、稼ぐ!」


 ハルは指示を出し終わり、セリオがインベントリから軟膏を取り出しローゼの腹部に塗り始めたのを確認すると、ディアヴォロ・ワイバーンに向き直り、革製のベルト(おそらくズボンベルトの予備)を取り出し、黒い箱を左腕に括りつける。そして黒い箱をトトンッと叩き、メダルを左手に持ち、右手で槍を持って駆け出す。


「さあ、行くぜ! 並び立つために!」

【イベント名】闇属性魔法習得

【イベント発生条件】プレイヤーのレベルが10を超え、奥義を使用できること。

 3人以上のパーティを組んでいること。

 上記の条件を満たした上で、パーティからはぐれた際にイベント発生。記憶を読んだりするのは特殊すぎる例で基本的には行われない。

 ぼっちに良く似合いそうだがぼっちはそもそもこの属性の魔法を覚えられない。とてもアレな二律背反である。

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