第33話 俺のミスだな
ハルの身長設定は178~186位となっております。迷っているとも言う。
題名、かりあんとして一時的に変えました。旧名は『VR・ロボゲプレイヤがMMOに挑戦してみた(仮)』です。
~ワム鉱山~
依頼を受けたローゼ一行はウィッシュ・レイの北西にあるワム鉱山へとやってきていた。徒歩で。馬車借りる暇もなく来たのである。で、長身の男2人にダッシュでついてきた結果。
「もっと早く言えばいいのにぃ」
「背中刺すわよ……」
セリオがグロッキーになっていた。さもありなん。現在ローゼの背中でうなだれるセリオは、鼓動が落ち着いてきた事を確認すると、とある提案をする。
「少し、提案があるのだけれ」
「どうしたのォ? セリオ」
セリオの言葉にいち早く反応したのはローゼ。少し食い気味に返事をして、背中をつねられる。
「あだだだ!?」
「かぶせるんじゃないわよ。次やったら串刺しにするわ。えっと、ハル、とか言ったかしら」
痛がるローゼを放って、セリオはハルに話しかける。
「それでオッケー、だぜ。あんたはセリオ、って言ったっけ。提案って?」
ハルもローゼを無視してセリオに問い返すと、セリオはローゼの背中をつねるのをやめて、その問いに答える。
「全員のメインウェポンをシェアできるようにしよう、ということよ。これなら銃、私なら剣。あなたは……」
「槍、か。RPはさっきの大量のモンスター倒した件で有り余ってるし……いいぜ。その提案、乗った」
そう言うとハルはウィンドウを開き、銃技能を修得する。そしてステータスを開示状態にして二人に見せた。
「レベルが22、武具技能が槍技能lv22、徒手空拳lv1、剣技能lv1、銃技能lv1……取得スキルが移動強化lv5,武具纏気lv6,鑑定lv8,腕力強化lv5,木工lv1,楽器演奏lv2,滑空lv1,武具強度強化lv10,????lv?……ちらほら戦いに関係ないのが混じってるねぇ」
「いやそこじゃなくて武具纏気と????について聞くべきでしょうが」
冷静に分析するローゼと、約二つほど意味の分からない名前について言及するセリオ。ローゼはその問いにこともなく答える。
「武具纏気なんて読んで字のごとく、でしょぉ? 武器にオーガニック的な……オーラ的な何かをまとわせるって事だと思うけどぉ」
「オーガニック的なって何よ」
「そりゃあ陰陽や男と女みたいにはっきりと反発して……」
「あんたのノリで言った言葉に疑問を持ったこっちが悪かったわね」
うーむ、と考え込みながら答えるローゼに呆れながらセリオはその思考を遮る。そして????については追及をやめる。恐らくローゼも似たようなものを持っていると気づいたからだ。そしてそのまま取り止めのない話をしながら山路を登る。
そしてハルは気づかなかった。自分だけ手札を晒されたことに。別に考えてないわけではないが。
「そんなことより、さ。あんたら二人はなんでアクダクヘ?」
「なんでっ……?」
ハルの問いにセリオが問い返すが、ローゼはそれをセリオの顔の目の前に手を出して遮る。
セリオは途端に不機嫌そうな顔になってローゼの背中に顔を埋めるが、ローゼは気にせずにハルの問いに答える。
「火属性魔法を覚えたくってねぇ。九州あたりまで行くのは面倒だし、ねぇ?」
「ふぅん。南アルプスあたりでも良さそうなもんだけど」
「火山、あったっけぇ?」
「宇宙の果てを知らないようにそんなこと知らないよ……んっ、横穴発見。ここが坑道の入口か?」
ハルがローゼに問いかけ、ローゼはマップウィンドウを出現させ、入口と現在地の座標が重なったことを確認する。
「うん。ここであってるみたいだねぇ」
ローゼはそう言うとついて来いのハンドサインを出して坑道に足を踏み入れ、ハルはその後に続く。
「見たところ随分床が痛んでる。ディアヴォロは結構パワフルみたいだねぇ。あぁ、慎重に。あまりしっかりした場所じゃない、崩れるかも知れない」
「えっ!? マジ……!?」
その瞬間、全くの偶然だった。ディアヴォロ・ワイバーンの影響で床が痛んでなければ。ローゼがセリオを背負ったまま先導しなければ、ハルが驚愕で体を硬直させなければ。どれか一つの条件だけでもなければ起こらなかったであろう自体が起こる。
ハルの場所だけ地盤が崩れ、ハルは反射的に手を伸ばすが地面に手が届かない。ローゼも刹那遅れて手を伸ばすがハルの手は掴めず、ハルは天井に手を伸ばしながら暗い闇の底へと落ちていく。
「くっそっ」
「やめなさい、手遅れよ。今から鞭を振るってもその長さじゃ届かない」
立ち上がり腰のベルトから鞭を抜き取ろうとするローゼをセリオが制する。鞭の長さが多少伸びたとして7mちょっと。物理法則無視してる気がするが気にしない。そして自由落下の加速度は9.8m毎秒の2乗となっている。手を伸ばして闇に消えたのを見送って1秒でも経っていたら、もう既に間に合わない位置にハルはたどり着いてしまっている。
「……俺のミスだな。後で謝ろう」
「ついでに何か奢ってあげなさいな。デスペナルティは……半日全ステータスダウンとHP自然回復量の減少だったかしら?」
「あ~、積極的に依頼受けなきゃ路銀ないぞ……!? セリオ、しっかり掴まってろ! もしも崩れたら投げてやっから!」
ローゼとセリオは後でハルに謝ると決めてディアヴォロ・ワイバーンを探し、一刻も早く討伐するために坑道の奥へと駆ける。
駆けるローゼの背中でセリオは見えなくなる寸前のハルの顔を思い出していた。
「(あの虚無感を感じさせる無表情……似ている、こいつに助けられる前の私に……力になれたらなろう、それでダメなら……)」
セリオはローゼの背中を握り締めながら決意する。ハルの力になることを。そして、
「どうした? 速すぎたか?」
「遅いくらい、もっと飛ばしなさい(こいつの力に頼る。格好悪いかもしれないけれど……他人に頼らず自滅なんて馬鹿のすることよ)」
少し、格好がつかないが恩人の力を借りることを。この大きな背中なら、あれの抱える大きな闇も払えるかもしれない。
「飛ばしすぎてまた地盤が崩れても困るんだが……ッ!? セリオ!」
「言われなくてもわかっているわ……この、プレッシャー、確実にヤツよ」
ローゼが戦闘態勢に入る際の僅かな跳ねを利用し、セリオはローゼの背中から飛び降りる。ローゼの隣へと。そしてローゼはホルスターから無骨な銃を抜き、セリオはレイシェントからもらって適当に名前をつけた魔剣・燐を構えながら奥へと進む。
そこにそいつはいた。
赤黒い体表、筋肉質な身体。羊の角を向きを攻撃的に変えて付けたような禍々しい角、コウモリのような翼。そして巨大な爪を前足……いや、腕に生やし、三つの金色の目がギョロギョロと辺りを伺っている。
しかしローゼにはそんなことよりも重要なことがあった。
それは、ディアヴォロ・ワイバーンの口元、鋭い牙が何かを噛みちぎり、元々赤黒い口元をさらに赤黒く染めている。ぐちゃ、ぐちゃ、と、身の毛のよだつような音を立てながら何かを、貪り食っていた。
その何かのシルエットは、ローゼの知り合いであるとあるハーフドワーフによく似ていた。
いるわけがない、こんな場所に来る意味もない。そもそもオネストで平和に暮らしているはずだ。ならば、何故、シルエットがよく似ている?
もうこの時点でローゼは思考を放棄し、右手で銃を乱射しながら駆け出した。
「ちぃぃぃっ!」
ローゼの出した結論はこうだった。
『あれはプーランの血縁かもしれない』
それを肯定しているのか否かは分からない、が、ディアヴォロ・ワイバーンはまるでローゼを歓迎するかのように雄叫びをあげた。




