第32話 奴の名は…ディアヴォロ
ちょっとIMEが勝手にインストールされてたものに置き換わってましてそれに気付くのに長いことかかってました。右下とか滅多に見ないし。てなわけでしばらくの間更新が止まっていた事をお詫び申し上げます。
今日もどこかで死んでるんですかね、あの人
〜ウィッシュ・レイ〜
「では、娘は元気にやってると……?」
「えぇ、腕のいい職人のもとに弟子入りしてそこで修行してるみたいですけどぉ(この酒味がないなぁ。コーヒーないかなぁ)」
「……きっつ」
「……いや、俺、未成年」
ローゼ一行はちっこいおっさん、もとい、ドワーフのブランゲラの案内によってドワーフたちの集まる酒場に来て酒を飲んでいた。まあ、ローゼは蒸留酒特有の味気なさに、セリオはそのアルコール度数の高さに、パルス=イーターはそもそも未成年なので飲めないことに少々不満を感じていたが、まあ奢ってもらっている身なので文句は言わなかった。
「そうですか……えぇ、お名前をお伺いしていませんでしたね」
「薔薇の銃士、ローゼでぇす」
「前置き、必要なの?」
「名前広められるよりは抽象的な方がねぇ」
「ふぅん。ま、いいわ。私はセリオ」
「あー、俺はハル。今んところは同行者」
名前を聞かれたので答えるローゼ達。さりげなくパルス・イーターのキャラネームも明らかになった。
「少々急すぎて申し訳ないのですが、少し、冒険者である皆様に頼みたいことが」
「依頼、ですかぁ?」
ローゼはブランゲラに酒の入ったグラスを弄びながら聞き返す。
ブランゲラはローゼの言葉に頷いた。
「えぇ。勿論タダで引き受けてくれとは言いません。ドワーフの武具を報酬に用意させていただきます」
「全員分ですかぁ?」
「はい。あなた方一行の武具を」
「……セリオぉ」
ローゼはブランゲラの言葉を受け相方のようなものであるセリオに相談する。
「どうするぅ? 俺個人としては受けてもいいと思うんだけどぉ」
「それに賛成ね。ドワーフといえば鍛冶が得意な亜種族よ。強力な武器が手に入ると考えていいんじゃないかしら」
「パル……ハルは、一緒に来るぅ?」
「おう。置いてくとか言われたら泣いてたぜ」
「あいよ、なら決まりだぁね。じゃあブランさん、依頼内容は?」
「……実は、町の近くの鉱山に凶暴なモンスターが住み着いたのです。ドワーフの力でどうにかしようとしたのですが、討伐隊が返り討ちにされてしまい……」
「つまりは、そのモンスターを退治して欲しいと。そのモンスターの概要は?」
ローゼの問いにブランゲラは苦々しげな表情を浮かべる。
その表情は、同族の力で解決できなかった悔しさか、強大な化け物に対する憎しみかは見分けが付かなかった。
「奴の名は……ディアヴォロ、ディアヴォロ・ワイバーンです」
「ワイバーン?」
ブランゲラの口から放たれた名前に、ローゼは眉を顰める。なんでそれが? といった感じに。
「鉱山に、ワイバーンがぁ?」
「ええ。元々それなりに広めに作られた通路を、人よりも少し大きい位の角の生えた竜が高速で移動するとそれだけでも沢山の被害が出てしまい……」
「小さくて、早くて、ですかぁ……」
イルムみたい、とローゼは心の中だけで呟く。確かに小さくて早い。これで銀色だったらディアヴォロ・ワイバーン≒イルムの方程式が出来上がる。本人が聞いたらブ千切れるだろうが。
「人ってドワーフって意味? それとも人間って意味? あんたらも亜人種とか呼ばれてるしさ。良くわかんないんだけど」
「人間です。ローゼさんと同じか少しディアヴォロのほうが大きい程度でしょうね」
「へぇ~」
ハルがブランゲラに問うとブランゲラは丁寧に答える。こう聞くとそんなに小さくないような気もする。だがしかし、竜という生物は川、権力などの強大なものから連想されるものであり、人間大ということは小さい、といっても過言ではない。暴論だが。
「わかりましたぁ。その鉱山の方角はぁ、どっちのほうです?」
「大体北北西あたりです。地図をお渡しします」
ブランゲラは腰の横につけた丸めた羊皮紙を取り外してローゼに渡す。ローゼがそれを広げるとシステムウィンドウが開き、【マップに『ワム鉱山』が登録されました!】とメッセージが表示され、ローゼがマップウィンドウを開くとマップ上の一つの山に目印のように旗が立っていた。確かに今の町から見ると北北西辺りにあることを確認する。
「確かに受け取りましたぁ。では、帰りましたらお返ししますね」
「いえ、同族のものは皆場所を覚えています故、そのままお持ちください」
「どうもぉ。では、少しこちらからも頼みたいことが」
「はて、なんでしょう?」
ローゼの言葉にブランゲラは不思議そうな声を上げる。
「この二つの銃を修理してはいただけませんかぁ? 少々手荒く扱っているので耐久度が……」
そういってローゼはS・ファランクスとG・マグナムをホルスターから抜き机に置く。
ブランゲラはその二つの銃を手に取ると繁々と見つめる。
「片方は影隼が落とす銃ですね……中々の腕をお持ちだ。そしてもう片方は……娘が作った銃ですかな?」
「えぇ。二つありまして片方はシンプルなものなんですが、それには師匠の手も加えられてるので少々複雑になっているようでして、ログアウ……寝る前の手入れでどうしても傷みが早くて、ハハ」
ローゼは途中の失言を笑ってごまかす。幸い、ブランゲラはその失言には気付かず、G・マグナムを見つめ続けていた。
「螺旋の溝、弾倉は取り外しやすいように軸がないにも拘らず回転の動力は魔力がない人間にも使えるように魔法を使わずカラクリだけ……なるほど、新しい……だがしかし、確かにこれは消耗しやすい……」
「まあ、鍛冶はついで、基本調薬重視って奴だし。シン……ミラーは」
「え? ハル、ミラーの事知ってるの?」
「高校で同じクラスだよ。んで自慢がうざかった。てめえは弟子だろうと俺は仲間だとか、俺はあいつに武器を作ってやったとか、あいつ現実世界に男友達が俺とユ……コロナの二人しかいねぇからってなぁ」
ブランゲラの言葉にハルが反応し、ローゼが問うとハルはその問いに答える。その表情は心底疲れた顔だった。
「ロゼ、その装備の襟やら何やら調べてみる事をお勧めするぜ。何かあいつ至る所にあいつんとこの際高級品軟膏仕込んだっつってた。チューブで」
「え? 本当に?」
ハルの言葉を受けローゼが自らの体を弄るとポロポロチューブが落ちてきた。所々焦げてたり破けていたりするがやはりそれでもかなりの数のチューブが床に落ちていた。
「これは……軽く、引くわね……」
「あれだねぇ。友達いないからちょっと加減が効かなくてハッスルする的な」
「それでも気持ち悪いけどな」
嫌そうな顔を浮かべ、チューブを拾い上げながらセリオが呟き、ローゼが苦笑しながらフォローし、ハルがきっぱりと否定する。弾いて上げて叩き落す。見事な言葉の三段アタックだ。本人はいないが。
「とりあえず拾い終えたら出発しよう。今日中に終わらせたいしぃ」
「そうね。気持ち悪いけど中々に効果は高いようだし」
「悪い奴ではないんだけど、まあ、変な力持ってたら色々患うのかね」
ローゼがまとめ、セリオがフォローになってないフォローを入れ、(実際おそらくフォローではなく調薬の技術を認めているだけ)ハルが遅すぎるフォローを入れる。どことなく長年の付き合い感を出しているが忘れてはいけない。このトリオ、結成は数時間前だということを。




