第31話 サイレントヒル
別に某ホラーゲームは関係ありません。UFOは出てくるかもしれませんが全てを終わらせません。あしからず。
~トンペチ平野~
喫茶店で茶は飲まずにコーヒーとパフェを堪能した二人は家に帰るとクリエイト・ワールドにログイン。オネストで待ち合わせ(ローゼはまた黒い羊たち、ストレイト・シープの群れに追われた)、現実世界の富士山のあたりにある火山フィールド、【アクダク火山】へと向かっていた。徒歩で。
「くっくるどぅどぅどぅ~」
「その気の抜ける歌をやめなさい。モンスターが一体もいないからって気を抜かないの」
「……言っちゃ悪いけどさ、今から行くの、静岡あたりだよぉ? サイレントヒルゥ。埼玉から、静岡まで、徒歩。何処のHow do you like wednesday?」
「なんで英題よ。それにあの人たちはそれくらいの距離になったらカブとか夜行バスとか車とか使うわよ。いくら近辺の県でも県境跨ぐんだから……」
無駄に本場で鍛えた発音を披露するローゼに冷めた目を送りながら、セリオは髪をなでた。
「そういえばさぁ」
「何よ」
「その装備どこで仕立てたのさぁ? 聞くの忘れてたけど」
ローゼはセリオのゴシックロリータ調でありながらスカートではなくズボン、袖にレースが付いてない服を指しながら問う。
「適当に入った店で適当に見繕っただけよ。特別なところじゃないわ」
「ふぅん。そぉなの? 俺も適当に予備のとか見繕ったほうがいいのかねぇ……ん?」
その時、ローゼは遠めに何かを発見し、腰のホルスターから魔力銃を抜きその何かを撃ち抜いた。
「どうしたの?」
「誰か、襲われてる。行くぞ」
「はいはい。わかったわよ」
ローゼは駆け出し、セリオはその後を追う。
「えぇぇいっ! うっとおしいなぁもう!」
そこにいたのは長槍を振り回している金髪の少年。ローゼの知り合いであるランク12:パルス・イーターだった。
「パルス!?」
「あぁっとロゼ!? お久! ちょっと助けて! HPバーが2割切った!」
「なにやってんのお前!?」
パルス・イーターの涙目の懇願にローゼは思わず突っ込む。研究者としての荒戸葉楽は変人だが一般人としての荒戸葉楽は意外と常識的なのだ。偶にわかってて無視したりするが。
「……ざっと、一時間は戦い続けてるからさぁ」
「バカだなぁ、逃げろよ」
「テンション、乗っちゃって」
「自業自得だ馬鹿野郎」
ローゼはぼやきながらも近くにいた人型のモンスター、恐らく以前戦ったラージゴブリンの亜種……に駆け寄り、鳩尾辺りを踏みつけ、その駆け上がる勢いを載せ顎を蹴り上げる。そして高く降り上がる足を振り下ろし、踵の戦輪で切り裂いた。
ローゼが着地した瞬間に【Congratulations! 徒手空拳技能奥義三段重ね蹴りを習得しました!】とウィンドウが表示された。
「あれぇっ!? 適当に出した技が奥義判定食らった!」
「相変わらず人間離れしてる場慣れした体捌きね、羨ましい。持てぬものの苦しみがわかって?」
「いや、だって、ええっ!?」
「まだ全滅してないんだよ! 漫才してないで助けてくれよぉっ!?」
「あ、ごめんごめん。行くよ、セリオ!」
「はいはい」
ローゼが敵を撃ち抜き、セリオが切り裂き、パルス・イーターがなぎ払う。暫くの間それが続き、終わる頃には全員のレベルが20を超えていた。
「か、数が多すぎだろあれ……」
「無駄に、強かったしね……」
「弾薬は……アクダク火山の麓まで持つか……?」
そして3人は満身創痍だった。なぜパルス・イーターが生き残れているかは謎だが。
「でもまぁ、今なら薬飲めるか。ロゼ達も要る?」
「くれ……ていうか寄越せ」
「なんでそんなものがあって死にかけてたのよ……?」
「え? もしかしてまったくもってないパターン? いやいやあんたら今までどうやってたんだよ回復」
「寝てりゃあ……治るだろ」
「必要な時がなかったから」
「馬鹿かあんたら」
パルス・イーターはポーションを投げ渡しながら溜息をつく。先ほどの戦闘を(自分で精一杯でじっくりは無理だったが)チラ見した限りは恐らく自分、パルス・イーターより明らかに強い。しかも片方は自分の師匠だ。弱いわけがない。ていうかAMでは完膚なきにぶちのめされている。までとかつかない。
しかし、それは一回限り、回復とかできない極限状態に身を置くからこそ発揮されている力なのでは? そこまで考えたあとにその考えを否定する。メッサ美味そうにポーション飲んでる。「うっわまじやっべ、これやっべってほらセリオやっべ」とか初めて高級料理食べたそこら辺のチャラ男みたいな状態でもう一人のパッキンロリに絡んで「うざいわねこのダボが」と鳩尾にきっついボディブローを貰っていた。なぜ浮く。
とりあえずなんというかこのゲームの仕様を調べていないだけっぽいので、パルス・イーターはその確認のためにもとある提案をする。
「あぁっと、俺さ、結構遠い場所が目的地だから馬車借りに行くんだけどあんたらは?」
「「そんなのあるの?」」
おおっと、ビンゴだこれ。とパルス・イーターは冷や汗を垂らしながら目的地の案内をし始める。打算半分、親切半分で。
―――――
~ウィッシュ・レイ~
「ここが、馬車が借りられるところぉ?」
「確かな。後、このパンフによれば珍しくNPCの方が十人の割合が多いとか」
「? プレイヤーは旅してるから当然じゃあない?」
「いや、広すぎるからな。大抵どっかを拠点にしているもの、らしいぜ。ハルバード買うためだけに情報くれっつったのにどうでもいいことばかり書いてあんなこのパンフ」
手に持った妙に小綺麗なパンフレットを睨むパルス・イーターを尻目にローゼは街を見回す。
「……殆ど、人間と変わらないな。やっぱり」
街を行き交う人々は、世間話をしていたり、口喧嘩をしていたり、弾き語りをしておひねりをもらっていたり、店先で値段交渉をしていたり、とてもじゃないが単純なAIで動いてるとは考えられない、とても複雑なAIであることを物語り、もしくは中に人がいて動かしているのでは? と思ってしまうほどに人間と変わらなかった。ローゼは、二人のNPCを思い出す。大地の|賢者≪バカヤロウ≫ガイアルク、ハーフドワーフのプーラン。ガイアルクは殺しても死なないだろうしプーランに対して思いを馳せる。
「元気かなぁプーラン」
「誰それ?」
「ん? ああ、そういやなんやかんやセリオあってなかったっけぇ。ハーフドワーフのNPC〜。家出同然に実家飛び出してひったくりにあってたのを助けたんだよぉ」
そのあったことのない人物について聞くセリオにローゼは自分の覚えているプーランについて教える。その時、ローゼは急に何者かに背中を叩かれた。
「どうしたのパル……」
連れの少年かと思いローゼは振り向くが、その少年は少し離れた場所で驚愕で顔をしかめていた。ローゼの腰元を見ながら。ローゼは視線を下ろす。そこにはヒゲもじゃで四頭身程度しかない身長のその顔の不細……歪さも合間ってローゼ以上の強面の中年男性がローゼを睨みつけていた。
「プーランと申したか」
「ほ、ほわぁぁああぁっ!?」
ローゼは叫び声を上げる。物凄い威圧感に包まれながら。




