第30話 法は犯さないように
すいません、キーボードが逝かれてました。なんかずーっと『(((((((((((((((((((』ってなったたんですよね。
てなわけで今回は短めですすいません。
~白南大学~
クリエイト・ワールドでエレメンツの幹部、イルムにローゼ、荒戸葉楽が敗北を喫した次の日。空は清々しく晴れ渡っている。因みに屋根をいじり倒された建物の主人には迷惑料としてターレットとホリックをPKした時に奪っ……獲得した金を全額渡したら満面の笑みで宿屋に案内してくれて宿泊費までサービスしてくれた。幸運だった。そんなことを思いながら空を仰ぐ。
「……つまりだね、感情というのは脳神経の信号を解析分析して完全に理解したらAIにも搭載することができてだね、実際それをやり遂げた先人もいてその博士はマイナスエネルギーについても……」
「あっ、い、居た教授……あれ、な、何やってるんですか?」
「え?」
葉楽に呼び出された林音は大学の中庭で、顔面が元の形がわからぬ程にボコボコに腫らした、恐らくこの学校の生徒達数人を跪かせ、分厚い脳医学書で一人ずつ頭をとんとんと叩きながら感情について講義している葉楽を発見した。何やっとるんだ本当に。
「あぁ~、なんか煙草吸ってるのがいたんだよねぇ、んでさぁ、学内での喫煙はご遠慮くださァい、って注意したら『年下のくせに生意気な!』とか逆ギレしてきてぇ」
「い、言ってな……」
「ていうか注意してきた直後に殴りかかって……」
「あ゛ァ?」
「すみませんでした!」
「タバコは健康に悪いですもんねありがとうございます!」
「教授のおかげで感情について理解することができました!」
ヤクザ顔負けの睨みで生徒を脅す教授。こうして書くと色々と不祥事っぽい。あとたぶん最後の言葉の意味は主に恐怖という感情について。
「ま、待ってたの来たから帰っていいよ。解散」
「しつぇっしたーっ!」
「お、おい早く帰ろうぜ」
「何されるかわかんねぇ」
「……これからずぅっとマナーモードみたいに震える体にしてやろうか」
「ひぃっ!」
「ごめんなさいでしたー!」
葉楽は蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていく不良生徒たちを見てフン、と鼻を鳴らすと林音に向き直る。
「んじゃ、林音。報酬は……何がいい?」
「フ、フヒ、最新のCPU、お願いしたいんですけど」
「All light。いいよ。それで。こんな感じの奴についてどんなネトゲでどんな動きをしてたか調べてくれる? 名前、っていうかCNはイルム。ゲームで負けちゃったから癖とか知りたいんだけど」
そう言って葉楽はイルムのスクリーンショットをプリントアウトしたものを林音に見せる。割とヤバイ行為だが、ネットゲームの範囲だけで頼んでおり、現実のプロフィールを聞くことはしない。それをしたら割とマジで犯罪者だし。
「……こ、こいつ?」
「こいつって呼び方なんて、君らしくも……もしかして知り合い?」
「う、うん。長野に住んでる親戚。割と性根をねじ曲げてる気味が悪い奴」
「リアルのことはいいよ。マナー違反だ。とりあえず家のパソコンに動画ファイルにまとめて送ってきて。何時も言っている事だけど、法は犯さないように」
「フヒ、了解です……」
林音が葉楽にそうかえすと同時に葉楽の胸ポケットから軽快なメロディとともにフラッシュが焚かれる。
「メールですか?」
「そうだと思う。ちょっと失礼」
葉楽は胸ポケットから携帯を取り出すと送信元をまず最初に確認する。【パルス・イーター】。AMでの葉楽の弟子的なポジションだ。携帯のではなくフリーメールアドレスなのでリアルがバレる心配もない。
そこには【クリエイト・ワールドのディスクもらった! 会ったらよろしく!】とだけ短い文章で綴られていた。
「誰から、ですか?」
「ネットの知り合い。今俺がやってるゲームのディスクもらったんだってさぁ。んでぇ、あったらよろしくって」
葉楽はそう言いながら携帯を操作して【ローゼって名前でやってる。下手したらあり得ない位悪名高いかもしれないけどよろしく】と返信する。ピロリンと返信のメロディが鳴った時、灰羅が学舎から出てきた。
「あ、灰羅ぁ、レポート終わったぁ?」
「終わったわよ。あのハゲ教授、いきなり期限早めるとかなに考えてるんだか。あぁ、そうそう、棒田、あんた伊月教授に呼ばれてたわよ」
「え、と、本当? な、なら教授、失礼します」
「んー、君なら不祥事とかじゃないだろうし気ィ張らずに行ってらっしゃァーい」
林音が学舎へと走って行くと、葉楽はその後ろ姿に手を振る。そして灰羅の方へと向き直った。
「んじゃあ、用事も済んだし帰ろうかぁ」
「そうね、あんた前期暇だものね」
「それ言うー?全くー、そうだ、帰りチューリップ寄ってくぅ?」
「パフェ奢って頂戴?」
「なんでさ普通にいつも通り……奢りか」
「まだ頼むだけマシじゃない?」
「自覚あるなら直しなよぉ。二十歳だろうに」
「うるさいわね、あなたは私の母親? 口うるさい」
「口うるさくさせてるのは誰ェ? 全く」
「ゼミの女子でしょ?」
「……間違っちゃいないなぁ」
そのまま二人は帰路に着く。他愛ない話をして、隠し事もなく。それは、まるで兄妹のような距離感だった。
見た目の年齢はかけ離れているのにも関わらず、立場的にはほぼ対等。不思議な、関係だった。
今回一番考えたところは林音を呼んだ教授の名前でした。




