第24話 魔法使い(マジックユーザー)
セントウォルフの外壁は高さ40mくらいと仮定しております。
……ローゼなんでこんなの登れたんだよ
~ガン・ホー・ガンズ傘下ガンショップ【AIMEN】~
ここはセントウォルフにあるガンショップ。人が疎らにしか存在しない店内のカウンターでは一人の女性店員が売上の記録を見ながら百面相していた。
「(サービス始まってまだ3日……まだまだこの街に来れる人も少ないのに上納金は上がるばっかりで売上の方は伸びない……どうすればいいの……?)」
そんな中、一人のカウボーイのような格好をした男が店内に入ってきた。それを見て女性店員は接客のために頭を切り替える。
「いらっしゃいませ! 何をお探しでしょうか?」
「う~ん、マグナムの弾、ライフルの弾、あぁ、炸裂弾とかもあったらもらえるぅ?」
「あっ、はい! 畏まりました!」
鋭い目つきの男はその整ってはいるが人を殺していても驚かないような顔からは想像できないような間延びした喋り方で要望を言った。それに女性店員は少し驚きながらも笑顔で返事をする。
「マグナム弾と、ライフル弾と、ナパーム弾。それとご一緒にガンオイルはいかがでしょうか?」
「ハハッ、ポテトみたいだねぇ。まあいいや。貰うよぉ。拠点から移動してきたばかりでかかりつけのショップがないんだ。点検用具は欲しいからねぇ。合わせていくら?」
「マグナム弾一ケース50発が100ハヴェン、ライフル弾が1ケース30発80ハヴェン、ナパーム弾が1ケース12発、70ハヴェンで、ガンオイルが一瓶500ハヴェン。以上で750ハヴェンになります」
「弾はダースで頂戴? さっき臨時収入があったばかりだからさぁ。使っちゃおうと思ってぇ」
ハハハ、と笑いながら言う銀髪の男に女性店員は少し嫌悪感を抱いた。
「(こんなところで臨時収入? この人、PKPかしら。そう言われればそう見えるし……)そうですかぁ。それなら……」
間違ってはいないが少し間違えている。PKした方ではなくしなかった方から巻き上げた金である。ちなみに店外で待機させられているが。
「1200、960、840、500で3500ハヴェンになります」
「3千、5百、ハヴェン、っとぉ。これでいいかなぁ?」
銀髪の男はウィンドウを操作し貨幣の詰まった袋を取り出しカウンターに置き、女性店員はそれを受け取り中に入っている貨幣を鑑定することにより確認する。
「はい、確かに3500ハヴェンですね。商品はこちらにあります。お確かめください」
「はいはい、っと。うん、確かに全部あるねぇ。しかもなかなかいい腕前だぁ」
「(なんで戦闘側っぽいのに鑑定スキル? 一々モンスターのHPバー見ながら戦ってるって言うの? 面倒な人もいたものね)」
そして女性店員はさらに銀髪の男に不信感を抱いた。そんなことも気にせずに銀髪の男は話を切り出す。
「そういえばここって大きなギルドの系列店らしいけどさぁ。技術とかもそこからァ?」
「……いえ。そういう手段は運営の手で使いづらくされていますので。そういう手段を取った場合劣悪品しか作られません」
「そうなんだァ。じゃあ系列店になったからってメリットはないワケぇ?」
「一応有名ギルドなので看板の力はありますが、それ以外は特に……」
「そうなんだァ。じゃあもし、もしだよ? ギルドが潰れたとして、君にデメリットは?」
「それは……」
答えてどうなる。そう女性店員の心の中に考えが浮かぶが、口の中から勝手に言葉は吐き出されていた。
「ありませんね。むしろさっさと潰れてしまえばいいのに、って思ってます。上納金も馬鹿にならないし、細々とやってた頃のほうがマシです」
「そうなんだぁ」
女性店員の目には心なしか銀髪の男の顔が綻んで見えた。まるで一番聞きたかったことを一番最初に入った店で聞けた、というような顔に。しかし次の瞬間にはまるでそんな顔をしていなかったように最初からの微笑み顔の銀髪の男がいた。
そして銀髪の男は用は済んだとばかりに立ち上がり出口へ向かう。
「さてと、お話聞かせてくれて、ありがとぉ~。大事に使わせてもらうよぉ~」
「あ、はい。ありがとうございました!」
「あぁ、それと」
銀髪の男は振り返りながら告げる。
「魔法で話は周りに聞こえてないから。中にいたギルドの監視員とかにも聞かれてないから安心してねぇ?」
それだけ言って立ち去る男をぼんやりと見送り、男が出口から出たあとでハッとした顔で女性店員は叫んだ。
「えっ、魔法使いって、えぇぇぇぇぇっ!?」
―――――
~ギルド【ガン・ホー・ガンズ】本部~
ここは銀髪の男が踏み台にした一番高い建物、木製の11階建て、地上30m……もうそこまでの階層にするのなら別に医師積み上げるとかのほうが違和感は少ないし、強度も心配ないと思われるが、まあ建てられたあとのものだし、実際今までで歪んだ様子すら見られないので気にしないものとする。その最上階、二人の男が佇んでいた。片方の男は扉の前で立ち、もう片方の男は豪奢な机の椅子に座っていた。
「総帥、報告が」
「なんだ? ナイプ」
革のジャケットを着た総帥と呼ばれた男は、ナイプと呼ばれたデニムジャケットにデニムズボンのデニムづくしの男からスクリーンショットで撮られた写真を一枚渡された。
「この先程うちのギルドハウスを踏みつけて行った人外みたいな男が路地裏に入った途端に取立て担当者達がリスポーンしてきた件です」
「あぁ、あれか。何かわかったか?」
「先程リスポーンしてきた者たちによると目の前に男が現れて数度言葉を交わした所、瞬く間に頭を撃ち抜かれてしまったとのこと。そしてベックだけリスポーンしていないところを見るに話を聞くために連れ去られたと思われます」
「話を聞くために? 一体何故」
総帥が不思議そうな顔をすると、デニ……ナイプはすぐさま答えた。
「内容が内容でして。上納金の取立てをすること、意思を伴った脱退不可などがバレたようでして」
「何をやっているんだそのバカどもは……! しかし、一人だけでは表立って敵対しよう等と……」
「そのことですが」
総帥の希望的観測を遮りナイプは淡々と告げる。
「この男のことを詳しく調べようと思い各支部にこの男の写真を送ったところ、この男、少なくともエレメンツのイルム、ケイトと関わりがある模様。これでまず後ろ盾が生まれます」
「何!? エレメンツだと!? βテスト時代にあそこの幹部とレイドボスを挑んだことはあるが、単騎でこのギルドを潰せるレベルだぞ!?」
「さらにもう一つ悪い知らせが。そのトップのうちのひとりであるイルムと対等に話していた模様。そして何らかの同等の力を保有しているものと思われます」
「何だと!? ……潰されてたまるか……! 俺の作った結晶だぞ! 潰されてたまるものか……! ナイプ、全戦闘員を本部に招集!」
「総帥はどうなさるので?」
ナイプが問うと総帥は深刻な顔をしながら告げる。
「魔法使いの爆弾魔を呼びに行く。シャレにならん被害が出るだろうが、ギルドハウスを潰されたらギルドが壊滅する! 背に腹は変えられん!」
それだけ言って総帥が部屋を出て行ってすぐ後に小さい少女が部屋の中に入ってきた。
「あの~、ボスが走って言ってたんですがどうしたんですか?」
「あぁ、ミリィか。ボスなら人を呼びにいった。お前はどうした?」
ミリィと呼ばれた少女ははい、とプリントをナイプに渡す。
「あの銀の人の報告結果って監視員の人が慌てて指定コールしてきた内容を纏めたものです。割と緊急事態なんですけど、ボスは?」
「緊急事態……?一体、何て……」
ナイプがプリントのないように素早く目を通すとそこにはこう書かれていた。
【監視対象:銀髪の男(※以下、銀と称する)についての監査結果
系列店で買い物したあと店員と何らかの会話をして立ち去った後
店員が突如立ち上がり【魔法使い】と叫ぶ。
実際に聞こえるはずの会話が聞こえていなかったため
銀を魔法使い(マジックユーザー)と判定。
属性は不明。武器は銃。
バックルに謎の箱を発見。弾薬箱かなにかだと思われる
監視員:アッサ 】
「……まずい、これはギルドが潰れるかもしれない」
「え? どうしてですか?」
「総帥は爆弾魔の奴を呼びに行った。真正面から戦わせるとギルドハウスは潰れかねない。最後の手段として奴は最上階に置かれるだろう。だから絶対に最上階までこの銀を到達させてはいけない!」
「な、なるほど、わかりました! 戦闘側の人たちを呼んできます!」
「頼んだぞ!」
そして魔法使いの襲撃に備え、ギルド【ガン・ホー・ガンズ】は慌ただしく動く。魔法使いの襲撃は、近い。
主人公って壊滅させられる側から見れば絶対的な暴力で悪ですよね。見ようによっては、という話ですが。悪の反対は善ですしね。今回の場合どちらにも義があるせいで分かりづらいですけども。




