第22話 フラッシュバック
なんか本筋の話を進めようとするほどにあらすじから内容が剥離していきます。あらすじまた変えたほうがいいんでしょうか? でも、これ関係あるの最初の予定の4分の1までだしなぁ
~荒野ステージ【ラスティアーデ】~
「当たれっ! っらぁぁぁ!」
ヘルメットと身に吸い付くような青と白のパイロットスーツを着た少年はモニターを睨みつけて操縦桿を操作して自らの青、白、赤のフランス国旗みたいな配色の機体を操り、青白い噴射炎を撒き散らし、ロックオンマーカーも追いつかないような機動をする銀と赤の機体に向かって当たりもしないアサルトライフルを乱射する。
コックピットの中に怒号が響く。
《パルス! 軌道予測をしろと言っているだろう!》
「んなこと言われてもっ、予測した瞬間に軌道変えるとか無しだろ!?」
怒号に怒鳴り返しながら必死にコックピットのパッドを操作してロックオンマーカーを必死に敵の機体に合わせる。そして操縦桿のトリガーを引き、肩に取り付けられた小型コンテナから熱源誘導式ミサイルを撃ち出す。
「いっけぇ!」
《誘導弾ばかりに頼るな!》
当たる寸前に煙幕が機体を隠し、煙幕から飛び出た熱源の方をミサイルは追っていく。
「煙幕にフレア!? まずい、弾幕を……」
《遅い》
「ひっ」
慌ててブーストを噴かせて逃げようとした時には既に遅く、煙幕から大きな噴射炎を見せつけながら飛び出てきた機体はその手に持ったブレードで少年の乗るコックピットを貫いた。
~AM待機室~
「……ふぅ」
葉楽はメットを脱いでチャットウィンドウを開く。VRアバターを使っているとはいえ、顔を合わせて対話するのだ。メット越しでは失礼だろう。……頑なにメットを外そうとしなかった奴もいたが。まぁそこらへんはどうでもいい。美味いメシも食わせてもらったし、と葉楽は考え首を振って頭の中からランク9、レイヴン・クロウへの嫌悪感を振り払った。
さっきまでクリエイト・ワールドをプレイしていて、今日が週1の指導約束であることを思い出し、急いでAMにログインしたのだ。腕も鈍っていなかったし、いつもよりも反応速度が良かった気すらしてくる。クリエイト・ワールドで鍛えられたのだろうか。そう考えながら葉楽はウィンドウに金髪の少年が映ったのを見て意識を切り替える。
《相変わらずスパルタだな、ロゼは。もうちょい優しく教えてくれてもよくね?》
「良くないよぉ。エイトランカーになれるまで特訓してくれ、って言ったのはパルスの方でしょう~?」
《そりゃあまあ、そうだけどさぁ》
ウィンドウの向こうの金髪の少年はクシャ、と髪を手でかきあげる。VRとはいえ感覚は限りなく現実と近い。現実世界での癖が出ることも普通にある。
葉楽と金髪の少年を容姿だけ比べてみれば葉楽の方は銀髪金眼の先輩パイロットの脇役ポジションでで金髪の少年の方は金髪翠眼の新入りのパイロットの主人公、といったところか。そうすると葉楽の方に死亡フラグが立つが。なんかスーパーパイロットとか名乗りそうだよね。
「ま、高機動戦に慣れなきゃねぇ~。エイトランカーなんて夢のまた夢だよぉ? 最低でも高周波ブレードを敵に当てられないと今のランク8に勝てないからねぇ」
《どういう装甲にすればあんな実弾、ビーム無効なんて化物機体に出来るんだよ……インブレには無力だけどさぁ》
「……確か軍事企業関係者だってぇ。防衛軍に機体卸してるとこぉ。理論上の機体作れるからってはっちゃけちゃったらしいよぉ?」
葉楽が噂話を思い出しながら話すと、金髪の少年は一度だけ遭遇した侵略の光景を思い出しながら納得したような声を上げる。
《あぁ、怪獣の火球でなんか簡単に落ちるもんな。戦闘機》
「後何故か肉薄して叩き落とされたりねぇ。馬鹿じゃないの、って思っちゃったり」
《もしも高ランクプレイヤーの機体全部再現できたらどうなるんだろうな》
「トップテンだけでも侵略者の墓場の異名が強まるだけだと思うけどぉ? 一応たまにやらかすポカ以外は有能だし。防衛軍」
《……誰だっけ? 怪獣完全消滅させる兵器作っちゃった防衛隊員》
「君高校生だよねぇ? Dr.イデだよ。試験に出なかった?」
《お恥ずかしながら成績はギリギリ留年しない程度ですはい》
「……勉強しなよぉ……」
《大学教授なんて頭良さそうな職の人間に言われるとマジで凹むなぁ……》
葉楽が呆れながら突っ込むと金髪の少年は罪悪感に苛まれたのか頭をクシャクシャと掻き毟る。
《まぁ、同じ高校の頭いい友人にもそれ言われて電話帳みたいなテキスト貰ったんで落ちるよ。今日はありがとロゼー》
「ん。じゃぁねぇパルス。また来週~」
それだけ言葉を交わすとウィンドウを閉じる。
「……侵略者、怪獣。この言葉にはデジャヴを覚えない。でも、化物、この言葉にはデジャヴを覚える。カラードの奴と話してからずっとこうだ……いや、クリエイト・ワールドを始めてから、か? テロリストやら強盗やらぶちのめした時は全く何も反応がなかったのに今更になってフラッシュバック……違いは? 相手をしているのが化物? いや、完全に人型じゃあない生き物とも戦ったことはある……人の意思が介入……欲望? 訳が、わからない……」
葉楽は頭に次々と浮かぶ単語を整理する。この状態で寝ようと思っても無理だろうから。
「魔、ディバイン、雷、箱庭、イザナギ、ノ……いや、デーモン? AI、ゼウス、英雄、バベルタワー、狐の面、料理、青春、一角獣、ランスロット……円卓の騎士」
関連性がまるでわからない。神聖なるものと魔なるもの、日本神話かと思ったらアーサー王伝説、まとまりがない。その時、葉楽の脳裏にアルファベットがぼんやりと浮かぶ。霞んで判別できないものもあるが、それを取り除き、判別できるものだけを左側から口に出して記憶に刻む。
「M……AR……E、T……U?」
M・A・R・E・T・U。ローマ字読みで希月。英語っぽく無理やり読んでみてメアーテュ。でも掠れた文字からして多分関係ない。しかし、何故かとても大事なことなのだろうと葉楽は直感で悟った。
「普通に分からない。ゼミの奴らにも聞いてみるか? いや、やめておいたほうがいいな。無駄に心配させるだけだ」
しかし、自分には繋げられない。まるで、繋げることを拒んでいるかのように繋がらない。他人の干渉が必要なのか? と葉楽は考えるが、他人を心配させてまで記憶を取り戻そうとは思えなかった。今の毎日だって、記憶がなくとも十分に幸せだ。なのに、その幸せを壊す必要性が感じられない。葉楽は、そんな冷徹な男では、目的のために何もかを犠牲にするような思いを持ち合わせていなかった。
「……カラード・トール。お前がなにか、鍵を……?」
今の記憶の断片を掘り出す原因となったものが、それ以外に考えられなかった。少なくとも葉楽の頭にはそれ以外の選択肢が含まれてはいなかった。
「もしも、本当にお前が何かを持っているなら、俺の記憶の鍵ならば、俺は……」
葉楽はアバターの拳を握る。鬱血して手のひらが青白くなるまでに。
「お前をぶっ倒す」
そして何故か斜め上の方向の決意をしたのであった。教育、間違ったんじゃないだろうか、引取り先。




