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第13話 大丈夫だよ。気にしなくて

 ローゼの喋り方は、普段と真面目な時で変わります。真剣な時は格好良い感じにしたいんですが、どっかふざけるせいで格好付ききらないというか。最初のイメージはバイオのクリスだったのに最近書いてるとデッドライジングのフランクのイメージなんですよね。どっちも間延びした喋り方じゃないけれど。あ、ミラーの実家は神社です。なんか陰陽術っぽいの使ったけど。

 ~マリオス荒野~


「……あっちぃ」

「まあ~、荒野だしィ、夏だしぃ。仕方ないねぇ」

「サービス開始2日目からこんなとこ来るの僕らくらいだろうけどねー……まだ始めたばかりの人たちは行けて森だろうし、βの人は資源も取れないここに来ずに鉱山か洞窟だろうし。鞭狙いの二人パーティとかじゃないといないだろうなぁ」


 燦々と太陽が降りつける中、ローゼ、ケイト、ミラーの三人は荒野を淡々と歩いていた。カウボーイ姿のローゼの似合いっぷりと魔法少……ゲフンゲフン、魔法使い姿のミラーの浮きっぷりの対比が物凄いが。

 そんな中ケイトはローゼのバックルに取り付けられたメダルケースに気づく。


「あれ、ローゼさんそのバックル、魔法使えるようにイベント起こしたんです?」

「あれぇ? ケイト知ってるのぉ?」

「まあ一応、兄が風属性のそれを持っているもので」

「そういや持ってたなあ、あいつ。性格的には闇だろうに」

「先に風に出会ったら風なんじゃないです?」

「それもそうだがな」


 二人だけでしか通じない話をし始めたケイトとミラーを尻目に、ローゼはバックルを叩き上に射出されたメダルを掴む。そしてそのまま指で何回か弾いた。


「どうしたんです?」

「暇だからァ」

「……ほっといたのは謝るがな。あんまりMPの無駄遣いすんなよ? それ、魔力で象られた物だから3分で消えるぞ」

「え? 本当にぃ?」


 ローゼは弾いたメダルをもう一度掴むと、ミラーに聞き返す。ミラーは背中に背負った剣を背負い直しながら憮然とした態度で言う。


「ああ、本当だ。MPは時間経過で回復するがな。今からエンカウントボスと戦おうとする人間が、だ。無駄遣いしてる場合か?」

「……爆発させた一回だけしか使ってないから知らなかった」

「そうかい……っ!?」


 ミラーはそう言うと何かを見つけ、背負っていた剣を鞘から引き抜いた。


「どうした!? ミラー!?」

「人がモンスターの群れを引き連れてこっちに走ってきてる!」

「マジですかシンさん!? 悪意のないトレインかMPK(モンスタープレイヤーキラー)かは知らないですけどそれってかなりやばいんじゃ!?」

「だから戦闘態勢整えてんだろ!?」

「……いや、来るだけなら少しの準備でいいな。飛行型はいないみたいだし」

「は?」


 ローゼは遠視スキルで飛行型モンスターがいないことを確認するとバックルを連打してメダルを大量に作り出し、モンスター達の方向へとばら撒いた。


「ちょっとローゼさん!? 何する気!?」

「魔法さ! 魔法詠唱(チャントオブマジック)!『膨張し、破裂せよ、鉛よ! 敵の体を吹きとばせ! 地属性魔法【メタリック・エクスプロージョン】! 』遅延魔法(マジックスイッチ)条件は『30キロ以上の重量負荷』! 」

「地雷替わりか!? 成程、一網打尽に……」


 ミラーはそこまで言いかけるとあることに気づいた。割と重要なことに。


「おい、あのプレイヤー達は?」

「大丈夫だよ。気にしなくて」

「巻き込む気なんだな!? あれら共々一網打尽にする気だったんだな!?」


 割と容赦のないローゼに対し、ミラーは怒鳴る。もうばらまいたから無意味としても。


「忠告すればいいじゃない。それなら躱せるか、も」

「その変な間はなんだ。まあいい。おーい! そこのプレイヤー! メダルは踏むな! 死ぬぞ!」

「抽象的だねぇ~」

「だぁまらっしゃいっ!」


 プレイヤーは聞こえていないのかどうかわからないが、変わらず走り続ける。そしてメダルの辺りまで走ってきていた。


「まずい! 爆発するぞっ!?」

「衝撃にだけは備えとこう~」

「うぅ、僕とシンさんは悪くないから恨まないでー……」


 そう言いながら三人は衝撃に備えて屈む。


 だが、プレイヤーはメダルを踏んだにも関わらず通り抜けた。


「なにぃっ!?」

「……やっぱり」

「やっぱりって何がですかローゼさん!? あのプレーヤーが30キロ未満だったとか!?」

「そんなわけあるか。あれはモンスターの生み出した幻影だよ。あのプレイヤーに、影はないでしょ?遠視スキルで見たときに気づいたんだよね」

「じゃああのメダル地雷は!?」

「見てればわかる。衝撃に備えたままのほうがいいよ」


 ローゼの言葉に従い、ケイトとミラーは屈んで衝撃に備える。

 走っていたモンスターたちがメダルを踏んだ。すると、メダルは爆発を起こし、モンスターの群れをまとめて吹き飛ばす。


「モンスターたちは幻影じゃあなかったっていうことか!? だとしたら、一体何故……」

「ケイト、君の言葉の中に答えがある。思い出してみたらいい」

「『悪意のないトレインかMPKかは知らないけれど』……まさか、あのプレイヤーの幻影は!?」

「君たちも、あれと戦ったことはなかったようだね。影を確認しなかったところを見るに……シェード・ファルケンの特殊技能は幻影を生み出すこと。それを使用した特殊行動がその幻影を利用したMPK! 幻影を見分ける方法は簡単だ。影があるかどうかを確かめればいい。だけどひとつ厄介なことがある……」


 ローゼは説明をしているとふと急に言いづらそうにした。それをミラーが急かす。


「なんだよ、勿体つけてないでさっさと言え!」

「wikiにも発見方法が書かれてなかったんだよね。だから相手の射程範囲内であるにも関わらずこっちから打って出られない」

「……見つけだしゃあいいんだな?」


 ローゼの言葉に、ミラーが答えた。ミラーは応えた直後から、剣で地面を切りつけ、五芒星の模様と横に五本、縦に四本の線で作られた紋様を作り出す。それはドーマンセーマン。星がセーマン、複雑な井桁っぽいのがドーマンである。


「魔除けなんて書いてどうするんだ!?」

「俺のイメージに必要なんだよ! 魔法詠唱(チャントオブマジック)! 『日よ、生命の源である炎よ! 汝を宿す物の怪の場所を、どうか吾へと示し給え! 火術、【炎検示図(ホノオガシラベシメスバショ)】!』」


 ミラーが唱え終わり、剣をセーマンへと突き刺すと、魔力が迸りセーマンから火の鳥が生まれ、高く飛び立つ。そして空中を旋回したあとドーマンへと急降下し、火の玉となってドーマンの左下、七時と八時の方向の間を示した。


「あっちにいやがるぜ、卑怯者の鳥野郎がな!」

「君が生み出してたのも鳥だけどね」


 ローゼは方向を確認するとライフルをインベントリから取り出し、遠視スキルで本当にトサカの生えた、鼠色の大きな隼、シェード・ファルケンの存在を確認する。


「確かにいるね。どうやって感知したか仕組みは知らないが……脳天、狙わせてもらう。幸い遠くから撃ち殺してもドロップ品はアイテムボックスに入る……罠にかけようとしやがって、何も気づかないまま往ね」


 遠視スキルを発動したままライフルに弾丸を装填し、シェード・ファルケンのクリティカルポイントであろうところを狙う。スキルを発動しているとスコープマーカーが浮かぶのでそれを合わせるように腕を動かす。この間、ローゼは仁王立ちでライフルだけ構えていることになる。無防備なので、見張りと露払いを他の二人に任せ、集中してマーカーを合わせる。そして、マーカーがシェード・ファルケンの顳かみ辺りに合った瞬間、シェードファルケンとローゼの目が合った。遠視スキルを発動しているにも関わらずだ。


「なにぃっ!?」


 ローゼは反射的に引き金を引くが、弾丸はシェードファルケンの嘴を掠めただけに終わり、シェード・ファルケンは羽ばたき、ローゼ達の方へと高速で近づいてくる。


「どうした、ローゼ!」

「ごめん! 気づかれた! 接近してくる!」

「遠視スキル使った上に撃ったの一回だけなのに!?」

「いいや、一発も撃ってないにも拘らず反応していた! 何か俺達の知らない感知方法を持っている! 感覚の目、というものなのか野生の勘、というものなのか! わからないが相手は確かに俺たちの予想の枠外の感知方法を持っている! 視覚とか、聴覚とかじゃない! もっと何か……別の感知方法を!」

「感知方法って何回言ってんだ!」

「三回!」

「どうでもいい! そんなことよりそろそろ来るぞ!」

「ちっ!」


 ローゼはライフルのボルトを引くと、インベントリにしまい、ホルスターからG・リボルバーと無骨な銃を引き抜く。ケイトとミラーは獲物は用意できているので戦闘の構えを取るだけだ。

 三人が同時に戦闘準備を終わらせた直後、空から影の名を持つ隼が大きな音を立てて舞い降りた。

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