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第14話 いいとこ無しはキツいからね

先日、初めて評価を頂きました。本にありがたいことです。これからも頑張っていきたいと思います。

 ~マリオス荒野~


「ちぃぃっ!」

「いなせるかっ!? カル坊!」

「なんとか、だけどっ!」


 シェード・ファルケンの着地と同時に舞い上がった石礫(イシツブテ)が三人を襲う。

 ローゼは後ろに飛び退き、ミラーは石礫を剣で切り払い、ケイトは革のグローブを着けた拳で石礫を砕く。


「早いな、やっぱり。AMだったら爆導索撒くんだが……!」

「メダルで再現してみろよ」

「MPはモンスター群相手にメタリック・エクスプロージョンぶっぱした時点で3分の2切ったし点を幾つか置くだけじゃ効果は薄い。荒野ってのもきついな。障害物が遠くに見える岩山くらいしかないっていうのもね」

「仕方がないな。それが荒野だ。まあ、どうにかして取り付いたほうがいいんだが……」

「その格好、飛べたりしないの!?」

「これは他人の没装備着てるだけだ! 元々からの俺の装備はこの剣くらいしかない!」


 ローゼの言葉に、ミラーは怒鳴りながら返す。


「……まあ、銃で風切羽を狙ってくれ。どっちかでも打ち抜けりゃバランス崩して飛べないはずだ」

「風切羽無くなっても長距離の飛行ができないだけですけど。飛び立つのには胸筋使ってるから。だからどうにかして近づいて、頭を揺らす!」


 ケイトはそう叫ぶと全身のバネを駆使してジグザグに移動する。それを見たローゼは、ふと、呟いた。


「……直線の方が早くね?」

「あー、あれは蛇歩って言ってな……あー、確かに石礫で全方位攻撃できるのに直線の攻撃避けるあれやるよりも直線のほうがいいな」

「泣くぞあんたら!?」


 ケイトは後ろの二人にそう叫びながらもシェード・ファルケンに向かって飛びかかる。だが、シェード・ファルケンの口から何かが放たれ、ケイトの体を切り刻んだ。


「ぐあぁっ!?」

「ああっ、どうせあんな動きするなら回り込めばよかったものの!」

「そういうこと言ってる場合か! 魔法詠唱(チャントオブマジック)! 『木よ! 総てを包み込む大樹よ! どうかその身をもって我が友人を受け止め給え! 木術【木葉広受(コノハヒロガリウケトメル)】!』」


 ミラーが唱え終わるとケイトの軌道上にある雑草が大樹へと育ちケイトを受け止め、しなって衝撃を受け止める。


「ちょ、超音波カッター……! 遠距離攻撃まで……!?」

「超音波……逆位相、風とかで生み出せない?」

「無茶だな。人間は機械みたいに正確に感じたものを測定できるわけじゃない。専門家でもなけりゃ無理だろうよ」

「……なら俺が囮になる。本命が君だ。行くぞ!」

「ああ!」


 ローゼは両銃の撃鉄を起こし、全身のバネを使って高速で動き、一直線にシェード・ファルケンの懐の横側に潜り込む。


「撃(ブ)ち抜け!」


 そのまま銃口をシェード・ファルケンに向け、同時に引き金を引くが、G・マグナムを持った右手が反動で横に逸れた。威力はその分高かったものの、翼ではなく胴体に銃弾が突き刺さった。


「ケェェェン!」

「うおっ!?」


 シェード・ファルケンはひと鳴きすると、その大きな翼をはためかせ、周りに大きな突風を撒き散らす。これにはローゼもたまらず吹き飛ばされた。その時、ローゼの頭に疑問が浮かぶ。


「(なぜ、顔がまだ向けられる位置取りだったにもかかわらず、超音波カッターを使わなかった? 自分が傷つくから? いや、そこまで体は膨らんでいない。胸も腹も射線に被らない。ちょっと斜め下を向けばいいだけだ。なのに何故?)」

「そこだぁっ!スキル発動!ソードスタブ!」


 ローゼが飛ばされ、考え込んでいる間に回り込んでいたミラーは剣を構えながら跳び、脳天に剣を突き立て(スタブし)ようとする。だが、シェード・ファルケンは素早く反応、翼を羽ばたかせ飛翔、ミラーのスタブを躱す。


「避けられたっ!? まずっ」


 シェード・ファルケンは空中で反転。体をミラーの方に向け、嘴を開いた。そこで、ローゼの頭の中であることが繋がった。


「ぐあぁぁっ!」

「(そうか!あの下でも上でも右でも左でもない、まさに真正面! あの姿勢じゃないと超音波カッターは放てない! そして今無理やりその姿勢を取ったのは最大火力の攻撃が超音波カッターだから……いや、この仮定はまだ早い。素早く出せて距離が出せるからかもしれない。もしかしたらあのトサカからビームとか出るかもしれない。そう可能性を頭に入れたまま……!)」


 ローゼはホルスターに銃を収めた後、先程ケイトを受け止めた大樹の頂辺を掴み、大樹をしならせる。その間、ローゼの腕は自分の体重の何倍かの負荷をかけられることになる。


「吶喊する!」


 そして大樹は元に戻ろうとし、超簡易式人間大砲(カタパルト)が完成する。大樹が元の姿になった瞬間、ローゼは掴んでいた手を離し、シェード・ファルケンへと突撃する。そして幸い、シェード・ファルケンはミラーを迎撃してローゼに背を向けている。チャンスだ。


「せいやぁっ!」


 そのままローゼは勢いのままシェード・ファルケンの後頭部を殴りぬけ、運動エネルギーの反作用をすべてシェード・ファルケンに伝え、シェード・ファルケンを弾き飛ばす。そしてそのままローゼは落下し、着地した。


「さて、と。起きろミラー」

「起きてるよ……だがまあ、全員で協力してのダメージ1、ってところか?」

「とりあえずわかった、っていうか仮定してもいいな、ていうのは二つ。威力が出せて吹き飛ばせるのは超音波カッター、っていうことと、その超音波カッターは一定の姿勢をとらないと出せない、ってところだな」

「否定するならするで反応してくれ……それにしても、どうする?まだ未知の感知方法の問題があるんだろ?」

「何個か可能性があるんだよなぁ。だが一々試してる暇はない。ミラー。先に言っておくけど。『スキルは使うな。魔法もだ』」

「……そういうこと。くっそ、ゲームに慣れてれば慣れてるほど不利になるってことか?」


 そうごちりながらミラーは剣を構え、シェード・ファルケンの元へと駆け出す。それを見てローゼは両手に銃を構える。


「このアタックが判断基準……! 援護する!」

「あぁ、当てんなよっ!」


 ローゼの放った銃弾はミラーに当たらず、シェード・ファルケンを襲うコースを描き、シェード・ファルケンに突き刺さる。

 シェード・ファルケンはそれに耐えかねたのか地面すれすれを飛び石礫を飛ばすが、やはりローゼの放った銃弾がミラーを襲う石礫を砕く。その砕けた石礫を尻目に、石礫と共にやってきた風を剣で切り裂きながら、ミラーは駆ける。


「そこぉぉぉっ!」


 シェード・ファルケンの下へとたどり着き、潜り込んだミラーは滑り込みながらシェード・ファルケンの腹をすれ違いざまに切り裂く。

 その攻撃に堪らずシェード・ファルケンは地面へと堕ち、地を転がる。そこに走りこんできた影が一つ。


「いいとこ無しはキツいからね!」


 走ってきたケイトは走ってきた勢いのまま跳び上がり、シェード・ファルケンを頭上から殴りぬけ、クレーターを作りシェード・ファルケンを地面へと埋め込む。。そしてローゼに見えるシェード・ファルケンの弱点(クリティカルポイント)は脳天。お誂え向きにそこ剥き出しで埋まって抜け出すのに時間がかかることだろう。


「影は、ある。幻影じゃあないな……飛ばれて幻影で翻弄されたらやばかったが、MPKしか脳がなかったのかね」


 そう呟きながらローゼはインベントリから“装填し終わった”ライフルを取り出し、狙いを付ける。


「念の為に装填したままインベントリに仕舞っておいてよかったよ。……逃がす間も与えなくて済む」


 そして引き金が引かれ、銃弾はシェード・ファルケンを貫く。照準を合わせられなかったため少々ズレたが、ローゼの人間大砲、ミラーの剣、ケイトの拳であと一撃、というところまで削れていたようだ。シェード・ファルケンは光の粒子となって散り、ローゼの目の前に【LEVEL UP!12→15】【銃技能 10→12】【徒手空拳技能 8→11】【遠視技能 3→5】と描かれたウィンドウと、平行に取り付けられた複数の銃口が特徴的な鼠色の銃が浮かぶ。

 目の前に浮かぶ銃を手に取り、鑑定技能を発動すると、鑑定結果を記したウィンドウにはこう書かれていた。


 隼昇銃【S・ファランクス】


 ATK+8 射撃精度補正3% 連射機能 MP消費幻影作成 SP消費超音波カッター発射 耐久値 100%


 影の名を持つ隼の嘴が銃の形に砕かれたもの。偶然がこの形を生み出し、この形に砕かれたことにより何らかの力が加わり、銃そのものの機構を持つに至った。

 装填には弾丸の入った箱ごとグリップに取り付けることにより自動で行われる。これによる弾詰まりは起こらないようになっている。その機能からか引き金を引いておくだけで連射が可能となっている。しかし負担がかかりやすいので注意。

 魔力を消費することによりイメージに沿った幻影を生み出せ、体力を使い隼の刃を放つことが可能。


 これは、目当ての物だという証拠だ。ローゼはたまらずガッツポーズを取り、そのまま拳を天に突き上げながら叫ぶ。


「よぉっしゃぁ! S・ファランクスゲットぉ~っ!」

「……疲れた。っていうか、一人だけまともなダメージ食らってなくね?」

「はは、ローゼさん今回後衛ばっかりだったから。なんか奢ってもらえばいいや」

「うん~。今日は気前良くおごるよぉ~。手伝いありがとうねぇ~」


 後ろでぐったりしている二人へと振り返り、ローゼはいつも通りの、いや、いつも以上の間延びした喋り方で労う。


「……俺、いい店知ってるんだ。VRで食事が、味覚が再現されてて良かった、って心の底から言えるようなところ。そこ連れてけ。値は張るがな」

「じゃあ僕もそこで」

「……立ちなよぉ、帰るよぉ?」

「「疲れて立てない」」

「…ははっ、やれやれ」


 ローゼは笑いながらミラーとケイトの腕を肩にかけて担ぐ。そしてオネストへと歩き始めた。


「女の子でもいたらモチベーション違ったんだけどねぇ」

「うっせぇさっさと歩け」

「セリオさん連れてこなかったのローゼさんでしょー? 文句言わなーい」

「ケイト、君、言うねぇ~」


 足取りは軽い。目的は達成したし、ユニークボスの素材は高く売れる。そしてこのあと帰れば美味しいご飯が待っている。足取りが重いはずがなかった。

【イベント名】シェード・ファルケン襲来

【イベント発生条件】3人パーティでマリオス荒野を歩いている時イベント発生。

3人とも魔法を使えた場合追加で【幻影MPK】イベントが発生する。

そして3人の平均レベルが20を超えていた場合シェード・ファルケンに【消費感知(MP、SPが消費されたとき、その方向を感知する)スキル】が追加される。

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