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第12話 あんまり高いのとかは無理だけど

 ~調剤屋兼鍛冶屋【Warnin' Boobm】~


「お師匠様!どうですか!?」

「ふん……まぁ、いいんじゃないか?そろそろ、機関銃の開発に目を向けてもいいかもしれんな。手間がかかるから嫌だったが」


 店内で、ハーフドワーフのプーランと店主のミラーが話し合う。プーランがミラーのことを師匠と呼んでいるのは作品を売る場所を提供して技術を提供したからである。実際、プーランの作品は客数人に売れた上にその技術から加工評価だった。

 プーランが見せているのはローゼに渡す予定のシングルアクションのリボルバーマグナムだ。

 あの無骨な銃の感想を聞いていないのでどういうものがイイのかが分からなかったが、この前取れた鉱石の中でもいい物を選んで、出来る限りの技術を詰め込んだ。

 壊れにくいように、威力が出るように、狙いをつけやすいように。プーランのハーフドワーフとしての器用さと、ミラーが持てる技術の粋を集めて作った物がこの【G・マグナム】である。Gはグレートとかジャイアントとかギガントとか。

 装填方式は無骨な銃と同じ装填口とスイングアウト方式。弾倉の軸と銃身は取ってきた中で一番頑丈なものを。グリップのは柔らかく、柔軟な鉱石を使い、木材を加工したものを取り付け手に馴染みやすくした。重心の先端の銃口側には一つの出っ張り、撃鉄側には二つの出っ張り。邪魔にならず、狙いを付ける補助にするためのものだ。断層には軽くて硬いものを。回りやすくするために。


 その銃を眺めながら、ミラーは先の事を考える。技術はあってもそこまで手間をかけられるほど辛抱強くもない。単純機構を作りたくなるのもこの性格が原因だ。だが、自分の指示に文句なく従ってくれる弟子のようなものができた。なら、自分が図面を引き、指示をすれば今まで作れなかったものも作れるようになるのではないか?


 そんな事を考えていた時、扉をノックハンドルが叩く音がした。


 コココン、コココン、コココココココン。


 3・3・7拍子のそのリズムは、お客が店主、ミラーの知り合いと知らせる合図でもある。


「シンさん、ケイトです」

「おうカル坊。ローゼは?昨日頼まれてたものができたんだが……って、俺が受けたんじゃねぇしお前、居なかったな」

「は、はぁ……ローゼさんはまだ入ってないみたいだし、泊まってる宿屋も知らないし、先にこっちに来たら待ち合わせみたいになるかなって」

「へぇ。ま、椅子出すから座ってろ。茶位は出す。ま、別にステボがつくわけでもないが」

「料理スキルもないのに露店のはどうやってステボ付けてるんでしょうねぇ……?よくわかんないです」

「ああいうのはリアル料理スキルが高いやつらだよ。ネットに調理風景上げてるのが何人かいるしな」

「へぇ、そうなんです?」

「受け売りだがな」


 ミラーは木で出来た小さい椅子と湯呑を取り出し、椅子はケイト側に置き、湯呑は二つカウンターに並べる。そして急須を出したところで気がついた。


「……湯、沸かさなきゃいけねぇよなぁ」


 ヤカンに水を汲み、釜に火をつけ、繰べる。一応薪に火を付ける為のマジックアイテムはあるが、割と手順がめんどくさい。

 薪を並べ、細かい枝をかけ、火をつけ、火の勢いをつけて燃え移らせるために息を吹く。スイッチひとつで火がつくコンロを知る現代人にとっては割と重労働だ。

 だがまぁ客人をもてなすのは最低限の礼儀だろう。そう思いながらミラーは湯を沸かすために台所に入った。そこにいたのは、プーランだった。


「あ、お師匠様のお客様に出すためのお湯、ちょうど沸いたところですよ?」

「……よく出来た弟子だ。全く、ローゼの奴中々良い土産持ってきたな」


 はい、どうぞ、とヤカンを渡されたミラーはくつくつと笑いながら、茶棚から茶葉を取り出し、急須の茶笊に入れ、渡された湯を注ぐ。そして蓋を閉めて踵を返した。


「あれ、お師匠様、蒸らさなくてもいいんですか?」

「持ってく間に蒸れるさ。それに、蒸らしすぎても不味いしな」



 ミラーはそう言いながらカウンターに戻ると、濃さを均等にするために二つの湯呑に交互に茶を注いでいく。ただの煎茶だが、美味いほうがいい、というのは当然の欲求だからだ。


「今さっき女の人の声が聞こえてきたんですけど、浮気です?」

「ダァホ。ローゼが昨日連れ込んできたNPCだよ。武器作ってって頼んだんだと。後面倒任されたくらいか」

「……やっぱ、噂って本当なんですかね?」

「AIも進化してる。故に、NPCが生きてるようにしか思えなかろうが噂を肯定する要素にはならん。『生体CPUの実験場』なんて……眉唾だろうが」

「セリオさんも怪しんでるみたいなんですよねー……だからどうも」

「誰だ?セリオって」

「ほら、昨日の毒舌ロリ。覚えあるでしょ?」

「あぁ、あの」


 ミラーは先日見たちっこいのの姿を思い出し、頷く。だが、同時に疑問が浮かんだ。


「まあ、あれが疑ってたとしてだ。なんで気にする必要がある?それがわからん」

「さあ?僕もそこのところはよく。でも、どうも、気にかかる」

「……お前ら兄弟の勘は当てにならん。あれらも、信用してねぇだろ」

「まあ、あの人らは根拠のないものは信用しませんから。第六感なんて、そんなオカルトありえません、で一蹴でしょ」

「だろうがな……」


 ミラーが茶を啜ったその時、扉をノックハンドルが叩く音がした。


 コココン、コココン


「ん、ローゼか?」

「ですかね」


 コン、ココン!


 立ち上がろうとした二人はつんのめって転けかける。なんかいきなりアイドルのコールのリズムみたいになったし。


「三三……何拍子だこれ!?」

「三三一二拍子……?」


 また音が響く。


 コココン、コココン、コココココココン


「今度こそ合ってるだろ……」

「どちらにしても出ましょうよ。ローゼさん入ってるっぽいから可能性高いですし」


 コン! コン! コン!


「なぁに三三七一一一拍子にアレンジ加えてんだてめぇっ!」

「あれぇ? 間違えてたァ?」


 ミラーが怒鳴りながら扉を開けると、そこには予想通りにローゼが立っていた。


「あのなぁ……うちの合図は三三七拍子だ。オーケー?」

「Okey,Dokey。で、プーヤンは?」

「プーランだろ? 名前間違えてやんなよ」

「ロォーぜさぁん!」


 どこから声を聞きつけたのか、プーランが店の奥から出てきてものすごい勢いで走り、ローゼに飛びつく。


「おぉっと」

「ぎゃんっ」


 しかしローゼは半身逸らしてプーランを躱すと。プーランは店の外の地面に頭から飛び込む。


「あぁ、うん、大丈夫ぅ?」

「大丈夫じゃないよぉ……なんで避けるの!? 女の子の抱きつき!」


 プーランはローゼに猛抗議するが、ローゼはそれに取り合わない。


「たとえ君からしてぇ、あれが女の子の抱きつきだろうとぉ。俺から見たらあのスピードは飛びつき式DDTの前準備にしか見えなかったんだよぉ」

「もし本当に仕掛けようとしてたんなら恩知らずすぎるだろうがそれ」

「そうですよっ! なんで恩人にプロレス技仕掛けなきゃいけないんですか!」

「いやぁ、ほらぁ。頭いじりでぇ?」

「自覚あるんならやめてよ!?」

「ところでミラー、ケイトはぁ?」

「ちょっと、話変えないでよぉ!?」

「あぁー、あいつな。あいつなら、そこで、ほら」


 ミラーは親指を指す。そこにケイトがいた。だが、なんかすごい勢いで噎せていた。


「げっほ! くくっ、げぇっほ!」

「お前らのコントがツボにはまって茶ぁ気管詰まらせて噎せてる」

「わ、笑わないでくださいよぉっ!」

「あぁ、面白いもんねぇ、この子」


 笑っているケイトを見て、プーランは笑われたくないと思い、ローゼは、自分が笑われてるとみじんも思わない。割と人間性が浮き出たりするのがこういう時の反応だったりする。


「まぁ、そこらへんは今回来たのに関係ない話だから、割愛って事でぇ。あ、出来てるぅ?銃」

「あっと、はい。これが私とお師匠様が力を合わせて作った銃、G・リボルバーですっ!」

「……いい趣味してんね」

「お前が何を思ってるのかは知らんが否定させてもらうぞ?」


 銃を受け取りながらジト目で見るローゼに対しミラーは顔を逸らしながら手を振った。


「でだ。銃の為だけに来たんじゃねぇだろ? 出来ることなら、手伝ってやる」

「ふっふぅん。話が早ぁい。まぁ、ユニークボス討伐手伝って、って話なんだよぉ」

「どのユニークボスです?」


 復活したケイトがローゼに問う。ローゼはテキストウィンドウを開き、今さっきダウンロードしたテキストデータをウィンドウに流し込み、ウィンドウをよく見えるように大きくしたあとウィンドウをバン!と叩きながら告げた。


「シェード・ファルケン。三人パーティ用ユニークボス。フィールドはオネスト南の荒野!」

「……鳥か」

「どうしたのぉ? ミラー」

「ちょっと待ってろ」


 ミラーはそう言うと商品棚のワゴンセール品から一本の古ぼけたライフルを取り出した。少し埃をかぶっているのも考えると、βの最初期から売れ残っているものだろう。だが、その機構はボルトアクションで、そうそう壊れるような複雑な気候ではない。銃身の中もブラシで簡単に掃除されて手渡された。


「これはァ?」

「対空にリボルバーじゃ心許ないだろ? だからな。どうせ在庫品だ。15ハヴェンでいいぞ」

「へぇ、15……ってぇ、金取るのぉ?」

「タダでやれるか。あの薬草の時だって利益出すためにちょっと安めに買ったからおまけでつけただけだからな」

「……相場より高いって聞いたけど」

「うちで調剤した奴は割と評判がいいんだ。元手の5倍つけたって買うのがわんさかいるのさ。それでも安いくらいだしな」

「……調剤屋って、儲かるんだねぇ」

「いや、ここが特殊なだけ」


 しみじみと呟くローゼに、ケイトがツッコむ。そして、15ハヴェン分の貨幣をカウンターに置いた。


「あれぇ、ケイト、それぇ」

「あんまり高いのとかは無理だけど、これくらいは払わせて。助けてもらっといて今までここ紹介するくらいしか役に立ててないから」

「……気にしなくても、いいのに」

「どっちが払うかはどうでもいいからな。毎度あり、だ。じゃあそろそろ行くぞ。準備は済んだか?」


 ミラーの言葉に、ローゼは手に持ったライフルをインベントリに入れながら答えた。


「できてるよぉ! じゃあ、行くよケイト!」

「はいさ!」

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