第4話 決意固まる
この代理の案件は後でボイル部長に知られて、案の定ネチネチと文句を言われた。どうして戻ってくるまで待たせなかったのだとか、勝手なことをして、とかそう言った文句だった。
仕方ないよね。だって、それは先日の食糧倉庫の雨漏りで、ダメになった小麦粉の支払い許可だったのですもの。損傷した分は捨てて、新たに買い替えることに、決定済みだった。ただ確認判を押すだけ。経費の管轄部門であるウチの部署の確認印は必要不可欠だが、この場合、変更とか良し悪しの判断は要らない。
「お急ぎだそうでした」
「だからと言って、やっていいこととダメなことがあるだろう!」
ボイル部長は怒鳴る。私はしおらしく嵐が過ぎ去るのを待つ。
アグネスはまた怒っていた。
あとでマリリンたちに文句を言われた。
「ロビア上席、あなたが勝手なことをしなければよかったのではないですか?」
マリリンが文句を言った。
「私たちまで、不愉快な思いをしましたわ」
他の二人も乗っかってきた。大声に不満ならボイル部長に言った方がよいのでは?
「でも、他の部署の方から申し入れがあったので……小麦粉の搬入遅れは、問題になります」
「それは、あなたが判断することではないと思いますわ」
マリリンが偉そうに言った。
あれ? なんでこんなに態度が大きいのかな?
私はちょっと顔をあげた。
「その通りだ。ロビア上席の判断なんか聞いていないぞ」
ボイル部長が聞きつけて、話に乗ってきた。
マリリンの口元が得意そうにニヤリとした。
「やっていいことと、いけないことの区別がつかないだなんて。十年も勤務してそれですか」
マリリンはなかなか口達者だな。一つの理屈だけを絶対的に優先すれば、理由はどうとでもいえるよね。でも、どうしてマリリンだけそんなに強気なのかしら?
「何を行っても、反省がないんですね、ロビア上席」
最後はこれだった。私の背中では、ボイル部長が愉快そうに声を立てて笑っていた。
後でわかったことだけど、恐ろしいことにボイル部長とマリリンは「できていた」。
本当に、この職場に何の未練もなかった。




