表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『魔王城の地下で税金を計算してた俺、いつの間にか世界経済の黒幕になる』  作者: ニートは34歳まで
第一部 地下の税務官編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/40

第三十九話 信用交換会議


 三日後。

 魔王城。

 かつて軍議が行われていた大広間は、今や別の戦場になっていた。


「狭いですね」


 俺は思わず呟く。


「当たり前だ」


 魔王が言う。


「竜が来るとは思わん」


 正論だった。

 大広間には、

•魔王軍中央銀行

•地方通貨同盟

•十三商会

•ドワーフ工房連盟

•魔導士ギルド

 そして。

 契約竜オルガディア。

 各勢力の代表が勢揃いしていた。


「……よく集まりましたね」


「集めたのはあなたです」


 ベルクがため息をつく。

 確かにそうだった。

 でも。

 ここでやらなければならない。


     ◆


「会議を始めましょう」


 俺が立ち上がる。

 すると。


「反対だ」


 即座にラウルが言った。

 早いな。


「まだ何も言ってませんよ」


「どうせ中央銀行が支配する案だろう」


「違います」


「本当か?」


「本当です」


 周囲も疑わしそうな顔をしている。

 信用ないな俺。


「今回の案は単純です」


 机へ地図を広げる。


「統一しません」


 沈黙。


「……は?」


「中央通貨も作りません」


「は?」


「地方通貨も残します」


 さらに沈黙。


「何がしたいんだ?」


 グランが聞く。


「交換です」


 俺は地図を指差した。


「人間国家の通貨」


「地方通貨同盟の信用証」


「竜族の契約証」


「全部残す」


「ただし」


 俺は続ける。


「相互交換できるようにする」


 ざわめきが広がる。


     ◆


「交換比率は?」


 ラウルが聞く。


「市場が決めます」


「ほう」


 興味を示した。


「国家が決めないのか」


「決めません」


 前世でもそうだった。

 為替だ。

 価値は固定じゃない。

 変動する。


「つまり」


 ベルクが整理する。


「信用そのものを統一するのではなく」


「信用同士を繋ぐ?」


「はい」


 その通りだ。


「中央契約炉は?」


 今度はグラン。


「認証だけ」


 沈黙。


「認証?」


「本物かどうかだけ保証する」


 価値は決めない。

 価格も決めない。

 支配もしない。


「中央は審判役です」


「選手じゃない」


 魔王が首を傾げた。


「分からん」


「私もです」


 ラウルが真顔で言う。

 やめてくれ。


     ◆


 そのとき。

『分析完了』

 エルシアが言った。

『提案内容を確認』

 空中に文字が浮かぶ。

『中央契約炉機能を99.7%縮小可能』


「縮小?」


『信用支配機能を停止』

『認証機能のみ維持』

 ざわめきが起きる。


「できるのか」


 ベルクが驚いていた。

『可能です』


「じゃあ最初からやれ」


『提案されませんでした』

 うん。

 この精霊、融通が利かない。


     ◆


 そのときだった。

 オルガディアがゆっくり口を開く。

『人類種』


「はい」


『一つ聞く』

 黄金の瞳がこちらを見る。

『なぜ支配を選ばない』

 静かな問いだった。

 でも。

 核心だった。


「簡単ですよ」


 俺は笑った。


「支配したことないので」


 沈黙。


「国家を支配したこともない」


「市場もない」


「竜族もない」


「だから」


 俺は肩を竦めた。


「皆が勝手に動く前提で考えた方が楽なんです」


 数秒の静寂。

 そして。

 オルガディアが大きく笑った。

 初めてだった。

 本当に楽しそうに笑った。

『なるほど』

『古代文明にはいなかった発想だ』

 その瞬間。

 エルシアの瞳が輝く。

『新制度名を登録』

 空中に文字が浮かぶ。

『世界信用交換網』

 世界中の信用を統一しない。

 だが繋ぐ。

 そんな仕組み。

 そして。

 俺は気付かなかった。

 この会議の結果が。

 後に、


「世界経済史最大の転換点」


と呼ばれることになることを。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ