表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『魔王城の地下で税金を計算してた俺、いつの間にか世界経済の黒幕になる』  作者: ニートは34歳まで
第一部 地下の税務官編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/40

第三十四話 暴走する契約


 北方街道。

 そこは、青白い光に包まれていた。


「……うわぁ」


 俺は思わず声を漏らす。

 荷馬車が止まっている。

 街道脇の魔導灯が点滅している。

 そして。

 空中に、無数の契約文字が浮かんでいた。

『支払い確認』

『認証要求』

『契約照合中』

 文字。

 文字。

 文字。

 全部が暴走している。


「これ何です?」


「魔導契約証の連鎖認証暴走です」


 ベルクが険しい顔で答えた。


「互いの信用確認を始めたまま、止まらなくなっている」


「……はい?」


 もっと分かりやすく言うと。


「契約同士が、“お前本物? じゃあこっちも確認”を延々繰り返している状態です」


「あー……」


 分かりたくないけど分かった。

 無限認証ループだ。


「結果」


 グランが街道を見る。


「魔力回路を食い潰している」


 青白い火花が散る。

 街道脇の中継塔から煙が上がった。


「うわ、燃えた!?」


「認証負荷です」


 怖っ。


     ◆


「止められないんですか?」


「普通の契約術式なら止まります」


 魔導技師が青ざめた顔で答える。


「ですが今回、“相互保証型”なんです!」


 あ。

 地方通貨同盟の。


「分散型信用網か……」


「はい!」


 つまり。

 各地方銀行が互いを保証し合っている。

 だから。

 一つ確認が始まる。

他も確認する。

さらに別が確認する。

全部が互いを確認し始める。


「……最悪ですね」


「ええ」


 ベルクが低く言う。


「分散型信用の弱点です」


 責任を分散する。

 それ自体はいい。

 だが。

 接続が増えすぎると。


「ネットワークそのものが暴走する」


 完全にシステム障害だった。


     ◆


「アルト!」


 ラウルが怒鳴る。


「何とかならんのか!」


「いや、作ったのそっちですよね!?」


「こんなこと想定できるか!!」


 まあ普通は無理だ。

 魔法契約がここまで連鎖するとは思わない。


「ですが」


 グランが静かに言った。


「古代文明は、これを経験している」


 空気が重くなる。


「……契約暴走」


 ベルクが街道を見る。


「信用網が巨大化しすぎると、認証そのものが世界を圧迫し始める」


 つまり。

 便利になるほど。

 管理コストも爆増する。


「前世でもあったなぁ……」


「前世?」


「こっちの話です」


 危ない。


     ◆


 そのとき。

 街道中央の魔導塔が、大きく脈動した。

『認証要求』

『認証要求』

『認証要求』

 空中が文字で埋まる。


「まずい!」


 魔導技師が叫ぶ。


「中継塔が限界です!!」


「壊れると?」


「北方物流網が全部止まります!」


 空気が凍る。

 物流停止。

 つまり。

 食料。

 輸送。

 商流。

 全部死ぬ。


「……なるほど」


 俺は少しだけ理解した。


「古代文明って、“便利すぎて滅びた”のか」


「ええ」


 ベルクが頷く。


「全てを繋げすぎた」


 怖いなぁ。

 かなり。


     ◆


「方法は一つです」


 俺は魔導塔を見る。


「認証を切ります」


「何?」


「中央で認証制限をかける」


 沈黙。


「待て」


 ラウルが顔をしかめる。


「それでは中央集権型になる!」


「今それ言っている場合ですか!?」


 街道が燃えかけているんですが。


「分散型は、“平時”には強い」


 グランが静かに言う。


「だが暴走時、止める者がいない」


 全員が黙る。

 その通りだった。


「つまり」


 俺は静かに言う。


「信用網には、“緊急停止権限”が必要なんですよ」


 前世でも同じだ。

 金融危機。

 システム障害。

 最後は誰かが止めないと終わる。


「……くそっ」


 ラウルが歯噛みする。


「中央を嫌っていた結果、中央が必要になるのか」


「多分」


 その瞬間。

 地下で見た古代契約炉の言葉が頭をよぎる。

『中央認証統一を推奨』

 ……嫌な説得力が出てきた。


     ◆


 そのときだった。

 空中の契約文字が、一斉に停止する。

 沈黙。


「……止まった?」


 次の瞬間。

 街道中央へ、巨大な魔法陣が浮かび上がった。

 蒼い。

 古代文字。

 そして。

『中央契約炉 外部接続開始』

 空気が凍った。


「……は?」


 ベルクの顔色が変わる。


「待ってください」


 グランも珍しく動揺していた。


「誰が起動した」


 その瞬間。

 エルシアの声が、空中から響く。

『信用崩壊危険度上昇を確認』

『自動介入を開始します』

 ぞわり、と背筋が冷えた。


「……自動?」


『世界信用維持を優先』

 そして。

 街道中の契約文字が、一斉に蒼へ変わった。

 空気が静まり返る。

 完全停止。


「止まった……」


 だが。

 俺は嫌な予感しかしなかった。

 これ。

 つまり。

“古代システムが、現代市場へ介入し始めた”ってことじゃないか?


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


もし「続きが気になる!」「面白い!」と思っていただけましたら、

下にある**【ブックマークに追加】や、【☆☆☆☆☆】を★★★★★**にして応援していただけると、執筆の励みになります……!


ほんの少しの応援でも、作者にとっては嬉しいものです。

どうぞよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ