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『魔王城の地下で税金を計算してた俺、いつの間にか世界経済の黒幕になる』  作者: ニートは34歳まで
第一部 地下の税務官編

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第三十一話 契約精霊


『推奨』

『中央認証統一』

 蒼い文字が、地下空洞に浮かび続けている。


「……圧がすごいな、これ」


 俺は思わず呟いた。

 ただ文字が出ているだけなのに。

 妙な威圧感がある。

 まるで、


「統一しないと終わる」


と、世界そのものに言われているみたいだった。


「古代文明は」


 グランが静かに言う。


「“統一こそ正義”だと考えていた」


「だから中央契約炉を作った?」


「そうだ」


 物流。

 通貨。

 魔力。

 契約。

 全部を繋げた。


「でも滅びた」


「ええ」


 ベルクが頷く。


「便利すぎたんですよ」


 重いなその言葉。

 かなり。


     ◆


『現行管理者候補へ質問』

 突然、文字が変わる。


「うわっ」


『質問』

『現在文明における最大信用源を回答してください』

 沈黙。


「……は?」


「答えろってことか?」


 魔王が聞く。


「多分」


 嫌だなぁ。

 面接みたいになってきた。


「最大信用源……」


 俺は少し考える。

 この世界で、人が一番信じているもの。

 国家?

 市場?

 宗教?

 違う気がした。


「……契約ですかね」


『確認』

『理由を要求』

 めんどくさ!


「ええと」


 俺は頭を整理する。


「国家も市場も、“約束を守る”前提で成立しているので」


 税。

 物流。

 通貨。

 全部。

 結局は、


「後で払う」


「交換できる」


「価値がある」


という約束だ。


「つまり」


 俺は契約炉を見る。


「信用の正体って、“守られると思っている約束”なんですよ」


 地下空洞が静まり返る。

 すると。

 中央結晶が、強く発光した。

『回答適合』


「おい」


 グランが嫌そうな顔をする。


「適合するな」


「俺のせいじゃないですよ」


『追加質問』

『契約維持に必要な要素を回答してください』

 まだ続くの!?


「……責任」


 今度はすぐ答えた。


「責任?」


 ベルクがこちらを見る。


「約束って、“破った時に困る”から成立するので」


 契約書。

 国家。

 通貨。

 全部そうだ。


「だから」


 俺は静かに言った。


「信用って、“責任を引き受ける覚悟”だと思います」


 その瞬間。

 地下回路全体が青白く輝いた。

『高適合』

『管理者候補適性 更新』


「……嫌な予感しかしませんね」


 老ドワーフが青ざめていた。


     ◆


 そのときだった。

 地下空間の奥から、足音が響く。

 硬い音。

 カツ、カツ、と。


「誰だ」


 魔王の声が低くなる。

 全員が身構えた。

 やがて。

 青白い光の中から、“それ”が現れる。


「……人?」


 違う。

 人型ではある。

 だが。

 半透明。

 銀色の髪。

 淡く光る瞳。

 衣装には、無数の契約紋様。


「精霊か」


 グランが低く呟く。

 その存在は、ゆっくりこちらを見る。

 感情のない瞳。

『中央契約補助精霊』

『識別名:エルシア』

 空中へ文字が浮かぶ。


「喋るんだ……」


『管理者候補を確認』

 銀髪の精霊――エルシアが、真っ直ぐこちらを見た。

『質問します』

 嫌な予感しかしない。

『あなたは、“世界全体の信用”を背負う覚悟がありますか?』

 地下空洞が静まり返る。

 重い。

 めちゃくちゃ重い。


「……いや」


 俺は思わず苦笑した。


「税務官だったんですけど、俺」


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


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