表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『魔王城の地下で税金を計算してた俺、いつの間にか世界経済の黒幕になる』  作者: ニートは34歳まで
第一部 地下の税務官編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/40

第十九話 地方領主は金を手放さない


「反対ですな」


 即答だった。

 しかも食い気味。

 魔王城・円卓会議。

 地方領主たちがずらりと並ぶ中、最初に口を開いたのは北方侯ヴァルドだった。


「中央造幣局など、地方自治への侵害です」


「侵害って」


 俺は思わず呟く。


「今の通貨制度、ほぼ無法地帯じゃないですか」


「それが問題か?」


 西部鉱山伯が鼻を鳴らす。


「各地で必要な量を鋳造して何が悪い」


「価値バラバラなんですよ」


「市場が決める」


「偽貨混じっています」


「流通の中で淘汰される」


 うわぁ。

 完全に既得権益側の理屈だ。


「……なるほど」


 ベルクが後ろで小さく笑った。


「面白いですね」


「何がです?」


「今まであなた、“商人側”と戦っていましたよね?」


「ええ」


「でも本当に厄介なのは、国家側なんですよ」


 その通りだった。

 商人は利益で動く。

 だが領主は違う。

 権力そのものを握っている。


「そもそも」


 南部領主が口を開く。


「なぜ中央だけが貨幣を作る必要がある?」


「信用統一のためです」


「地方貨幣でも回っている」


「だから混乱しているんです」


 俺は机に銀貨を並べた。

 北方銀。

 南部銀。

 鉱山貨。

 全部微妙に違う。


「商人、毎回計算していますよ」


「それが商売だろう」


「物流コスト増えています」


「利益で吸収できる」


 ダメだ。

 話が通じない。

 というより。

 “困ってない側”なんだ。


「……なるほど」


 俺は少しだけ理解した。

 地方領主って今、

“通貨発行益”

で儲けているのか。

 つまり貨幣鋳造そのものが利益源。


「銀の純度落としていますよね?」


 沈黙。

 空気が止まる。


「……何だと?」


「最近の南部銀、銀含有率落ちています」


 俺は資料を出した。


「でも額面価値は同じ」


「……」


「差額で儲けていますよね」


 図星だった。

 数人の顔色が変わる。


「なるほど」


 ベルクが感心したように呟く。


「貨幣改鋳利益か」


「前世でもよくあったやつです」


「前世?」


「こっちの話です」


 危ない。


「つまり」


 俺は続ける。


「地方領主って今、“金を作って儲けている”」


「当然だ!」


 西部鉱山伯が怒鳴る。


「鉱山を守っているのは誰だと思っている!」


「いや、その結果、通貨の信用がガタガタなんですが」


「中央に奪われる方が問題だ!」


 会議が荒れ始める。

 怒号。

 睨み合い。

 殺気。

 だが。


「静まれ」


 魔王の一言で全て止まった。

 空気が凍る。


「余は問う」


 赤い瞳が領主たちを見回す。


「貴様らは、“地方の利益”と“国家の信用”どちらを優先する?」


 誰も答えない。

 いや、答えられない。

 だって本音は決まっている。

 地方利益だ。


「……面白いですね」


 俺は思わず笑ってしまった。


「何がおかしい」


「いや、通貨って結局、“誰が信用を持つか”なんだなって」


 前世でも同じだった。

 中央銀行。

 国家信用。

 通貨発行権。

 全部、権力そのものだ。


「つまり」


 俺はゆっくり言った。


「今からやるのって、“貨幣統一”じゃない」


「“権力統一”なんですね」


 沈黙。

 領主たちの目が変わる。

 理解した。

 俺が何を奪おうとしているのか。


「……危険だな」


 北方侯が低く呟く。


「貴様、本当に税務官か?」


「元です」


「違う」


 その目が細まる。


「貴様、“国家そのもの”を作り変えようとしている」


 その瞬間。

 会議室の扉が勢いよく開いた。


「失礼します!!」


 兵士が飛び込んでくる。


「中央市場で大混乱です!」


「今度は何だ」


「新銀貨が出回っています!」


 空気が変わる。


「新銀貨?」


「はい! しかも魔王軍認証印付きです!」


 ……は?


「認証印?」


 俺は立ち上がる。


「そんなもの、まだ作っていませんよ」


 沈黙。

 そして。

 ベルクが、ゆっくり呟いた。


「……先にやられましたね」


「何を」


「“国家通貨”を」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ