表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
弱小国の王子だったので、近隣都市を制圧します  作者: レモンティー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/40

第四話:塩の生産(国家のスイッチ)

翌朝、俺は海沿いに立っていた。

潮の匂いが濃い。風は重く、少しだけ湿っている。

そして――目の前には、ただの“海岸線”が広がっていた。

「ここだ」

側近が恐る恐る口を開く。

「殿下、本当に……ここで塩を?」

「他にどこで作るんだ」

俺は即答した。

背後には、まだ誰も手を付けていない塩田予定地。

正確には“放置された湿地”だ。

設備もない。技術もない。予算も薄い。

(つまり、最悪のスタート地点ってやつだ)

でも逆に言えば、いじり放題だ。

俺はしゃがみ込み、地面の泥を指でこする。

「まず確認」

「この海水、濃度は?」

側近が戸惑いながら答える。

「測定は……過去に行われた記録では平均的とされています」

「平均ってことは“使える”ってことだな」

俺は立ち上がる。

「なら工程は単純化できる」

側近が顔を曇らせる。

「単純化、とは?」

俺は指を三本立てた。

「三段階だ」

「①濃縮」「②結晶化」「③分離」

そして海を指差す。

「この国は今まで“自然乾燥だけ”でやってたんだろ」

側近がうなずく。

「はい。天日による蒸発のみです」

「そりゃ効率死ぬわ」

俺は即答した。

「まずは“流れ”を作る」

その日のうちに、作業が始まった。

――と言っても大規模ではない。

ただの溝だ。

海から引いた水を段階的に流す、単純な構造。

側近が不安そうに見ている。

「殿下、それは……ただの水路では?」

「そうだ」

俺は迷わず言った。

「でも“順番”が違う」

最初の区画は浅く広い。

次は狭く深い。

さらに次は、石灰質の層を敷いた区画。

「蒸発速度を段階で変える」

「不純物を先に落とす」

「最後に結晶化だけ残す」

側近は黙ったまま作業を見ている。

やがて一人の作業員が呟いた。

「……これ、ただの水路じゃないのか?」

「いや」

俺は即答した。

「“塩を作る装置”だ」

その瞬間、空気が変わった。

誰も理解していないのに、なぜか“意味だけは伝わった”顔になる。

数日後。

最初の結果が出た。

桶の底に、白い粒が残っていた。

「……塩だ」

側近の声が震える。

「天日だけではない、純度の高い結晶……」

俺はそれを指でつまむ。

舐める。

しょっぱい。

普通の塩だ。

いや――

「悪くないな」

俺は小さく笑った。

「これで輸入は止められる」

側近が息を呑む。

「殿下……これは国家予算の一割を削減できる可能性があります」

「一割どころじゃない」

俺は海を見た。

「ここ、まだ拡張できる」

「規模を十倍にする」

「いや、百倍でもいける」

側近の顔が引きつる。

「百倍……ですか?」

「塩は金になる」

俺は淡々と言った。

「生活必需品を握るってのは、国を握るってことだ」

風が吹く。

海が揺れる。

その瞬間、この国に初めて“収益の構造”が生まれた。

そしてその夜。

城に報告が上がる。

――塩の自給、成功。

――輸入依存の解消見込み。

王宮は一瞬だけ静まり返ったあと、ざわついた。

「たった数日で?」

「誰がそんなことを……?」

誰も理解していない。

だが一つだけ確かなことがあった。

この国は、まだ死んでいない。

そして――

誰かが初めて、“回る仕組み”を作り始めていた。

海沿いでは、次の区画の工事が始まっている。

俺はその様子を見ながら呟く。

「次は港だな」

塩の流れは、まだ始まったばかりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ