表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
弱小国の王子だったので、近隣都市を制圧します  作者: レモンティー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/40

第三十三話:同じものを見る者

・レヴァンティア王城 ― 書庫

夜。

静かな部屋。

書類の山。

アルベルトが一人で目を通している。

「……ここまで、やるのですか」

低く呟く。

足音。

振り返る。

レオンが立っている。


・沈黙

しばらく、何も言わない。

紙をめくる音だけが響く。

やがてアルベルトが口を開く。

「兄上」

レオンは短く。

「何だ」

アルベルトは視線を落としたまま言う。

「……あの国は」

「救われたのですか」

沈黙。

レオンは迷わない。

「救われた」

アルベルトが顔を上げる。

「本当に?」

レオンは続ける。

「飢えは消えた」

「流通は戻った」

「人は生きている」

一拍。

「それで十分だ」


・違和感

アルベルトが言う。

「ですが……」

言葉を探す。

「自由は」

「主導権は」

レオンが遮る。

「死んだ人間に、自由は必要か?」

言葉が止まる。


・衝突

アルベルトが強く言う。

「ですが、あれは支配です!!」

「同盟ではない!!」

レオンは動じない。

「そうだ」

即答。

アルベルトが息を呑む。

「……認めるのですか」

レオンは静かに言う。

「名前はどうでもいい」

一拍。

「結果だけ見ろ」


・本音

アルベルトが拳を握る。

「私は……」

「この国を守りたいだけです」

声が震える。

「人が安心して生きられる国を」

レオンはわずかに目を細める。

「同じだ」

沈黙。

アルベルトが固まる。

「……え?」


・核心

レオンが言う。

「俺も同じだ」

一歩近づく。

「この国を守る」

「人を生かす」

「流れを止めない」

静かに。

「そのためにやっている」

アルベルトの目が揺れる。


・違い

アルベルトが絞り出す。

「……やり方が違う」

レオンは頷く。

「そうだな」

一拍。

「お前は理想で考える」

「俺は壊れない方法で考える」


・理解

アルベルトが小さく笑う。

「……冷たいですね」

レオンは否定しない。

「壊れるよりいい」


・共有

しばらく沈黙。

やがてアルベルトが言う。

「……あの国の民は」

「今、笑っています」

レオンは答える。

「知っている」

アルベルトが続ける。

「それを見て……」

一拍。

「安心しました」

レオンは少しだけ視線を外す。

「そうか」


・和解

アルベルトが深く息を吐く。

「……理解しました」

「やり方は違っても」

顔を上げる。

「見ているものは同じです」

レオンは短く。

「ああ」


・確認

アルベルトが言う。

「ならば私は」

「その仕組みを支えます」

「壊れないように」

レオンが見る。

一拍。

「任せる」


・兄弟

アルベルトが少しだけ笑う。

「昔から」

「兄上は変わりませんね」

レオンが聞く。

「何がだ」

アルベルトが答える。

「全部一人で背負おうとするところです」

沈黙。

レオンは何も言わない。


アルベルトが並ぶ。

同じ窓。

同じ景色。

人が流れ。

物資が動く。

アルベルトが言う。

「……この国は強くなります」

レオンは答える。

「ならなければ困る」

一拍。

二人で同じ方向を見る。

目指すものは同じ。

やり方は違う。

だが――

進む先は一つ。

国を守るために。

人を生かすために。



かつてレオンとアルベルトは、同じものを守ろうとしていたにもかかわらず、互いに対立していた。

アルベルトは理想を重んじた。

民の自由、公正、弱小国として正しい形の国家――

「どうあるべきか」を基準に国を見ていた。

弱小国であっても、正しくあれば生き残れるという信念。

力に頼らずとも、道を誤らなければ滅びはしない。

弱さは、罪ではない。

「どうあるべきか」を基準に、国を見ていた。

一方でレオンは、結果を重んじた。

飢えさせないこと、止めないこと、壊さないこと――

弱小であることは、すでに不利であり、

正しさだけでは踏み潰される。

その現実を、レオンは受け入れ

「どうすれば生き残るか」を基準に動いていた。

その違いはやがて決定的な溝となり、

アルベルトは兄のやり方を“支配”と断じ、距離を置くようになる。

しかし戦争が終わり、状況が変わる。

敵国は崩壊しかけ、民は飢え、秩序は失われていた。

だがレオンの介入によって――

食料は流れ、物資は回り、

人々は再び生活を取り戻していく。

その光景を、アルベルトは自分の目で見た。

「正しくないやり方」であっても、

「人は救われている」という現実。

そこで初めて理解する。

兄は冷酷なのではなく、

“壊れない方法”を選び続けていただけだと。

そしてレオンもまた、アルベルトの言葉を否定しなかった。

理想は不要だとは言わない。

だが、それだけでは国は守れないと知っている。

見ているものは同じだった。

国を守ること。

民を生かすこと。

ただ、そのための道が違っていただけだった。

弱小国が道を誤れば、それはただの搾取に堕ちる。

だが同時に、

正しさだけでは守れないものがあることも知っている。

アルベルトは決める。

理想を捨てるのではなく、

現実の上にそれを乗せる役になることを。

レオンは認める。

自分が築いた仕組みを、

壊さずに正す存在として弟を。

こうして二人は対立ではなく、役割として並び立つ。

冷徹に国を動かす者と、

それを人のために調整する者。

レヴァンティアはこの時、初めて――

“完成した統治”へと至ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ