第二十九話:火種の手配 ― 買われた反乱
・レヴァンティア ― 密室
夜。
灯りは一つ。
机の上には金貨と書状。
向かい合う二人の貴族。
一人はやつれている。
もう一人は――余裕がある。
「……本当にできるのか」
やつれた貴族が言う。
「王を引きずり下ろすなど」
対面の男は微笑む。
「できますよ」
「資金と食糧があれば」
一拍。
「そして――後ろ盾が」
貴族の視線が動く。
部屋の奥。
影。
「……条件は」
静かな声。
影が答える。
「簡単だ」
一歩、前に出る。
レオン。
「国を安定させろ」
「流通を止めるな」
貴族が息を呑む。
「それだけ、か」
レオンは頷く。
「それだけでいい」
副官が横で笑う。
「安いもんだろ?」
・取引
金貨が滑る。
「これは前金だ」
袋が三つ。
「……こんなに」
貴族の手が震える。
レオンは続ける。
「足りなければ言え」
「武器も出す」
「人も出す」
静かに。
「勝て」
その一言が重い。
・敵国 ― 地下
密談。
複数の貴族。
「このままでは終わる」
「民は飢え、兵は装備がない」
「王は何もできない」
一人が低く言う。
「……ならば、変えるしかない」
沈黙。
そして――
「賛成だ」
「賛成する」
「もう遅いくらいだ」
決まる。
反乱。
・準備
夜の城。
金が配られる。
「これは……」
「どこからだ」
「気にするな」
武器が配られる。
「新しい剣だ」
「こんな時に……?」
兵が呟く。
「誰が……」
答えはない。
ただ一つ。
“流れてきた”。
・暴動再燃
民衆。
「また値上げだ!!」
「もう無理だ!!」
そこに――
声。
「王が原因だ!!」
「無能な王が!!」
一人が叫ぶ。
「変えろ!!」
それは火種。
すぐに燃え広がる。
・クーデター
夜。
城門が開く。
「今だ」
内側から。
兵が動く。
「裏切りだ!!」
叫び。
剣が交わる。
だが――
数が違う。
流れが違う。
「止めろ!!」
「誰の命令だ!!」
返ってくる声。
「新しい王だ」
・玉座の間
扉が開く。
王が立ち上がる。
「……何だこれは」
貴族たちが進む。
「終わりです、陛下」
王が笑う。
「愚かだな」
「こんなことをして、国が保つと思うか」
一人の貴族が言う。
「保たせる」
一拍。
「我々ではない」
王の目が細くなる。
「……誰だ」
沈黙。
誰も答えない。
だが――
全員が理解している。
・王の最期
剣が向けられる。
王は動かない。
「……売ったな、この国を」
誰も否定しない。
「……そうか」
最後に呟く。
「戦って負けたのではない」
「買われたのか」
剣が振り下ろされる。
・レヴァンティア
報告。
「クーデター成功」
「敵国の王、死亡」
「新政権樹立」
副官が笑う。
アルベルトが言う。
「……これで、実質支配ですか」
レオンは首を振る。
「違う」
一拍。
「まだだ」
副官が聞く。
「まだ何かあるのですか?」
レオンは地図を見る。
新しく塗り替えられた国。
「維持させる」
「壊させない」
静かに。
「利益が出る形で」
・新王
玉座。
新しい王。
だが、その手は震えている。
側近が言う。
「これで国は――」
新王が遮る。
「違う」
一拍。
「これは始まりだ」
机の上。
一通の書状。
差出人はない。
だが、内容は明確。
「流通を維持しろ」
「価格を守れ」
「逆らうな」
新王は目を閉じる。
「……従うしかない」
剣ではなく。
金で。
国は落ちた。
そして――
その国はまだ気づいていない。
自分たちが“勝った”のではなく
“使われている”ことに。




