第三十話:謁見 ―新王と支配者
・レヴァンティア王城
広間。
張り詰めた空気。
新王が膝をついたまま、ゆっくり顔を上げる。
「……此度の支援、感謝する」
レオンは玉座の前に立ち、淡々と見下ろす。
「結果を出したな」
新王が答える。
「あなたの資金と物資があってこそ――」
レオンが遮る。
「言い換えろ」
沈黙。
新王の喉が鳴る。
「……我が国の支援で、クーデターが成功した」
副官が小さく笑う。
・書状
アルベルトが書状を差し出す。
「新たな通商協定です」
新王が目を通す。
「関税固定……主要物資の優先取引……通貨比率の指定……」
顔が曇る。
レオンが言う。
「残ってると思ってたのか?」
沈黙。
・証拠
レオンが指を鳴らす。
側近が箱を持ってくる。
蓋が開く。
中には――
封蝋付きの書簡。
金の受領記録。
武器の出荷証。
新王の目が止まる。
「……これは」
レオンが言う。
「お前が受け取ったものだ」
一拍。
「全部、写しがある」
静かに。
「どこへでも出せる」
空気が凍る。
・世論
レオンは続ける。
「民は今、怒っている」
「飢えと価格でな」
新王が歯を食いしばる。
「……知っている」
レオンは頷く。
「そこへ“外の国に買われて王を殺した”と流れたらどうなる?」
沈黙。
副官が口を挟む。
「暴動じゃ済まねぇな」
・再現性
レオンが一歩近づく。
それだけで新王の肩がわずかに震える。
「クーデターは一度起きた」
「二度目も起きる」
短く。
「資金があればな」
新王の視線が落ちる。
理解。
完全な理解。
・選択
レオンが言う。
「崩壊するか」
「続けるか」
新王が低く答える。
「……続ける」
レオンは頷く。
「なら、守れ」
・条件の固定
アルベルトが読み上げる。
「穀物・鉄材の優先購入権はレヴァンティアに帰属」
「通貨交換比率は本書の通り固定」
「反故にした場合、供給停止および契約の公開」
新王が呟く。
「……公開、か」
副官が笑う。
「優しいですな」
・反発
新王が顔を上げる。
「私は傀儡ではない」
一瞬、空気が張り詰める。
レオンは否定しない。
「そうだな」
一拍。
「“必要な王”だ」
新王の目が揺れる。
レオンは続ける。
「民にパンを配れ」
「兵に賃金を払え」
「流通を止めるな」
静かに。
「それができる限り、お前は民を救った王だ」
・確認
新王が問う。
「できなければ?」
レオンは即答する。
「別の“できる者”を立てる」
沈黙。
完全な支配。
・締結
新王が震える手で書状に触れる。
「……受け入れる」
署名。
封。
副官が息を吐く。
「成立だ」
・去り際
新王が立ち上がる。
背を向ける直前、低く言う。
「……あなたは、何を望む」
レオンは窓の外を見る。
人と物資の流れ。
「流れだ」
「止まらない流れを、握る」
扉が閉まる。
アルベルトが静かに言う。
「……完全に縛りましたね」
副官が笑う。
「鎖じゃなく、契約です」
レオンは地図に目を落とす。
次の国だ。
証拠と価格で。
国は支配される。




