第二十六話:戦利の流れ ― 金は血より強い
・戦後処理
戦場の煙が消えた頃。
動き始めたのは――剣ではなく、商人と計算だった。
「捕虜、全員生存確認!」
「重傷者は分けろ!死なせるな、価値が落ちる!」
「将軍クラスは別管理だ、丁重に扱え!」
兵士たちの声が飛ぶ。
傭兵が笑いながら言う。
「優しくしろよ、お前ら」
「そいつら、金になるんだからな」
別の兵が肩をすくめる。
「戦ってる時より気を使うってどういうことだよ……」
・鹵獲物資と食料
城内の倉庫。
積み上がる武器、鎧、食糧。
「おいおい……まだあるぞ!」
「どんだけ持ってきてんだあいつら!」
「万が一を考えてだろうな」
鍛冶職人が剣を手に取る。
「質は悪くねぇな」
「溶かして作り直せば、かなりいいもんになる」
別の職人が笑う。
「材料費タダって最高だな」
兵士が食糧袋を開ける。
「小麦、干し肉、保存食……」
「ここにあるだけでもしばらく食うに困らねぇぞ」
別の兵が言う。
「いや、困らないどころか余る」
「売れるぞ、これ」
鹵獲物資と食料品は食料や資源が余ってるレヴァンティアには必要がないものだった
・身代金交渉
王都。
捕虜のリストが机に並ぶ。
副官が報告する。
「将軍級三名、貴族七名、士官多数」
「全員、交渉材料として十分です」
・分配
広場。
傭兵たちが並ぶ。
「今回の報酬だ」
袋が投げられる。
「おい……重くねぇか?」
「開けてみろよ」
――ザラッ
「……金貨?」
「おい、冗談だろ……」
副官が言う。
「今回は特別だ」
「よく働いたな」
傭兵たちがざわつく。
「この国、頭おかしいだろ」
「いや、最高だろ」
「次もここで戦うわ」
・都市の変化
夜。
街に明かりが増える。
「いらっしゃい!今日は景気いいよ!」
「酒だ!もっと持ってこい!」
「金が回ってる……」
商人が呟く。
「これが“勝った国”か」
遊郭。
笑い声。
音楽。
「今日は羽振りいいじゃないか」
「戦勝祝いだ」
「なら、朝まで付き合えよ」
通りでは屋台が増える。
「安いぞー!鹵獲品だ!」
「新鮮な食糧だ!今だけだぞ!」
子供が笑う。
「すげぇ……パンがいっぱいだ!」
母親が目を潤ませる。
「こんなに……」
・外からの流入
門の前。
列ができている。
「仕事をくれ!」
「鍛冶ができる!」
「商売がしたい!」
兵士が戸惑う。
「おい……増えてないか?」
別の兵が言う。
「噂が広がってる」
「“勝てば金になる国”だってな」
・王都・会議
アルベルトが言う。
「……国が膨張しています」
副官も続く。
「金、人、物資……全部流れ込んでる」
「このまま制御できますか?」
レオンは短く答える。
「する」
「溢れる前に流せ」
アルベルトが問う。
「どこへ?」
レオンは地図を見る。
「必要な場所へ」
「都市を増やす」
副官が笑う。
「まだ広げるのですか」
レオンは淡々と。
「止める理由がない」
・捕虜
牢。
縛られた将軍が呟く。
「……なぜ殺さない」
看守が答える。
「殺す方が安いだろ」
一拍。
「でも、お前は高い」
将軍は目を閉じる。
「……屈辱だ」
看守は肩をすくめる。
「安心しろ」
「お前の国が払う」
・レオン
夜。
窓の外、明るい街。
副官が言う。
「戦争でここまで潤うとは」
アルベルトも静かに言う。
「……人が集まります」
レオンは答える。
「当然だ」
一拍。
「逃げ道がないからな」
副官が苦笑する。
レオンは街を見下ろす。
「負けた国からは出るしかない」
「勝った国には来るしかない」
静かに。
「流れは止まらない」
遠く。
まだ見ぬ戦場。
「だから――」
「次も勝つ」
・敵国王都 ― 崩壊の報
玉座の間。
重い沈黙。
扉が勢いよく開く。
「へ、陛下!!」
息を切らした伝令が膝をつく。
「報告を申します……!」
王がゆっくりと目を向ける。
「……遅い」
低い声。
「結果だけ言え」
伝令の喉が鳴る。
「……進軍軍は壊滅」
「将軍三名、捕縛」
「残存兵、散開……戦闘不能です」
沈黙。
誰も動かない。
王の指が玉座の肘掛けを叩く。
一度。
二度。
「……あり得ん」
静かに。
だが、確実に怒気を孕んだ声。
「内部から崩壊しているはずだった」
「逃げ道も確保されていた」
側近が震える声で言う。
「そ、それが……すべて罠だった可能性が……」
王の目が細くなる。
「……スパイは?」
誰も答えない。
「報告を上げた者はどうした」
別の官僚が答える。
「現在、所在を確認中ですが……」
王が遮る。
「捕らえろ」
一拍。
「家族もだ」
空気が凍る。
「一族すべて処刑する」
・スパイの家
夜。
兵士たちが家を取り囲む。
「ここで間違いないな」
「間違いありません」
「踏み込むぞ」
――ドンッ!!
扉を蹴破る。
「動くな!!」
だが――
静かすぎる。
「……誰もいない?」
部屋を確認する兵。
「家具はそのままだ」
「食事も……途中だ」
「逃げたのか?」
一人が床を指差す。
足跡。
だが、それは途中で消えている。
「……消えてる?」
外に出る兵。
周囲を見渡す。
何もない。
ただ、夜だけが広がっている。
・王都
報告。
「……すでにもぬけの殻です」
玉座の間。
王の指が止まる。
沈黙。
長い沈黙。
「……最初からか」
誰にも聞こえないほどの声。
だが、確かに漏れた。
「最初から……仕組まれていたのか」
側近が恐る恐る言う。
「へ、陛下……これは……」
王は答えない。
ただ、前を見ている。
「……戦争ではないな」
吐き捨てるように。
「狩りだ」
・余波
城の外。
民衆がざわつく。
「負けたらしいぞ……」
「将軍が捕まったって……」
「嘘だろ……」
一人が呟く。
「……終わりだ」
その言葉が、静かに広がっていく。




