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弱小国の王子だったので、近隣都市を制圧します  作者: レモンティー


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第二十一話:再鋳 ― 勝者の炉

――ゴォォ……

炉が唸る。

赤く溶けた鉄が、ゆっくりと流れる。

その周囲に積まれているのは――

剣、槍、鎧、盾。

すべて、鹵獲品だった。

「……これ全部、敵のかよ」

若い鍛冶職人が顔をしかめる。

「血、まだ付いてるぞ……」

親方が無造作に一振りを蹴った。

「気にすんな。鉄は鉄だ」

「だがよ、親方……」

「怖いか?」

「……少しな」

親方は鼻で笑う。

「なら覚えとけ」

「次にそれで斬られるのは、向こうだ」


・視察

扉が開く。

レオンが入ってくる。

副官が後ろに続く。

「おい、旦那が来たぞ」

空気が変わる。

レオンはゆっくりと武器の山に近づいた。

一本、剣を拾う。

「軽いな」

軽く振る。

「……鈍い」

親方が腕を組む。

「安物だ。数だけ揃えた連中の武器だな」

レオンはそのまま剣を投げた。

ガラン、と音が響く。

「全部溶かせ」

職人たちがざわつく。

「全部、ですか?」

「ああ、全部だ」

「もったいねぇ……」

若い職人が思わず言う。

レオンは一瞬だけ視線を向けた。

「使えるか?」

「……いや」

「なら資源だ」

沈黙。

親方が口を開く。

「で、何を作る」


・設計

レオンが図面を広げる。

副官が覗き込む。

「弩ですか?」

「ただの弩じゃない」

レオンが指で構造をなぞる。

「装填を短縮する」

「引き絞りを軽くしろ」

「連射は?」

副官が聞く。

「できるならやれ」

親方が低く唸る。

「……バネが持たねぇぞ」

「鉄が弱い」

レオンは武器の山を顎で示す。

「だから溶かす」

「混ぜて、質を上げる」

親方の目が変わる。

「……なるほどな」

「寄せ集めを一つにするってわけか」

レオンは頷く。

「粗を消す」

「強い部分だけを残す」

若い職人が呟く。

副官が笑う。

俺は言う

「気づいたか」

沈黙。

そして――

親方たちが笑った。

「面白ぇ」

「やってやる」


・現場

槌の音が響く。

カン、カン、カン――

「もっと温度上げろ!」

「まだだ、赤じゃ足りねぇ!」

「流せ! 一気にだ!」

火花が散る。

汗が飛ぶ。

鉄が溶ける。

「親方、これでいいのか!?」

「いいわけねぇだろ! 叩け!」

「くそ、硬ぇ!」

「いい鉄になってる証拠だ!」

レオンは黙って見ている。

副官が小声で言う。

「楽しそうだな、あいつら」

「生きてるからな」

短い返答。


・アルベルト

工房の隅で、アルベルトがその光景を見ていた。

「……これが、兄上のやり方ですか」

呟く。

副官が横に立つ。

俺が言う。

「気に入らないか?」

アルベルトは少し考えた。

「……理解はできます」

「だが」

視線は炉へ。

溶けていく剣。

「戦った者の痕跡が、全部消えていきます。」

副官は笑う。

「逆だ」

「全部残ってる」

「形が変わっただけだ」

アルベルトは何も言えなかった。


・完成

数日後。

新しい武器が並ぶ。

改良型の弩。

軽量化された槍。

強度を増した鎧。

レオンは一つ手に取り、構える。

――バン

試射。

的が貫かれる。

副官が口笛を吹く。

「いいな」

「前より速い」

レオンは頷く。

「これでいい」

そして、静かに言った。

「次の戦で使う」


・王城

報告を受けた王が、低く呟く。

「……敵の武器で、敵を殺すか」

レオンは答える。

「効率がいい」

王は笑った。

「違いない」

アルベルトは、その会話を黙って聞いていた。


・終幕

戦場で失われた武器は、

終わりではなかった。

炉に投げ込まれ、

溶け、

混ざり、

そして――

より強い形で生まれ変わる。

敗者の刃は、勝者の力になる。

「資源は、循環する」

レオンは呟く。

「戦争も同じだ」

火は消えない。

ただ、燃え方が変わるだけだ

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