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弱小国の王子だったので、近隣都市を制圧します  作者: レモンティー


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第十九話:残された土産

・残された土産

「レオン様、確認しました」

副官が報告する。

「敵は完全に壊滅。補給物資、大量に残されています」

「どれくらいだ」

「……倉庫三つ分」

口笛が鳴る。

「美味しいな」

傭兵の誰かが笑う。

「辛うじて生き残ったやつらは食料や物資までおいて逃げたのか」

「逃げ足だけは一流だな」

別の傭兵が言う。

「違うな」

副官が首を振る。

「“逃げるしかなかった”だ」


・鹵獲

「食料、山ほどあるぞ!!」

「武具も大量だ! これ全部持って帰れるのか!?」

傭兵たちの空気が、一気に変わる。

さっきまでの緊張は消え、現実的な“取り分”の話になる。

「なあ団長、これウチの取り分はどれくらいなんだ?」

誰かが笑いながら聞く。

傭兵は答えた。

「契約通りだ」

一瞬の静寂。

そして――

歓声が上がった。

「マジかよ!!」

「おまけに捕虜の身代金もがっぽり取れそうだ」

「最高だなこの仕事!!」

「命を張らずに安心して儲かるとか、天国かよ!!」

だが、その中で一人がぽつりと言う。

「……いや、違うな」

全員がそいつを見る。

「戦ってるさ」

「ただ、相手が勝手に折れてるだけだ」


・補給

「これだけでもレヴァンティアが半年は持つ量じゃないか」

補給担当が言う。

「いや、節約すれば一年だな」

副官が眉を上げる。

「敵の物資だけでか?」

「ああ」

にやりと笑う。

「しかも質がいい。連中、準備だけは一流だったらしい」

「長期戦にも備えていたと見える」

「それを全部置いて逃げた、と」

「そういうことだ」


・副官との会話

俺は静かに荷を見ていた。

積み上げられた食料。

整然と並ぶ武具。

「……いいな」

短く言う。

「想定以上だ」

副官が問う。

「この後は?」

傭兵は少しだけ考え、答えた。

「武具以外は売る」

「は?」

「物資も、食料もだ。」

副官が目を細める。

「敵に、ですか?」

「そうだ」

あっさりと言う。

「金を払うなら、な」

沈黙。

そして、理解が広がる。

「……えげつねぇな」

誰かが呟く。


・敵国

「……食料が足りん」

「……レヴァンティアの食糧や物資を手に入れるはずだったのに」

「……なんてことだ」

机の上の帳簿を見ながら、官僚が言う。

「前線に置いてきた分が戻らん……補給路も崩壊している」

「残りは?」

「……三ヶ月」

沈黙。

「戦えば?」

「一ヶ月です」

「……では、買うしかない」

誰かが言う。

「どこからだ」

その問いに、全員が黙る。

答えは、分かっていた。

「……レヴァンティアからか」


・敵国市内

「パンが高い……」

「塩もだ……どうなってるんだよ」

「戦争のせいだろ……」

違う。

皆、心のどこかで理解していた。

「……奪われたんだ」


・命令

「配給は増やせ」

俺は続ける。

「ウチの連中には、な」

「理由は?」

「“差”を見せる」

「こっちは食ってる」

「向こうは飢えてる」

静かに言う。

「それだけで、勝負はつく」


・傭兵団

「レオン様、ほんとに売るんですか?」

副官が問う。

俺は肩をすくめる。

「商売だ」

「敵ですぞ?」

「だからだ」

一歩、前に出る。

「飢えた相手ほど、高く買う」

傭兵たちの間に、低い笑いが広がる。

「なるほどな……」

「戦争ってのは、こうやるのか」


奪われたのは、物資。

だが、それだけではない。

奪われたのは――

選択肢だった。

戦うか。

飢えるか。


そして、その両方を握っているのは――

レヴァンティア

「さあ……いくらで買う?」

それは戦争ではない。

“市場”だった。


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