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弱小国の王子だったので、近隣都市を制圧します  作者: レモンティー


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第十八話:分裂

王都の空気は、もはや戦時のそれではなかった。

疑心と恐怖が、静かに広がっている。


・王都・貴族会議

「講和すべきだ」

その一言で、場が割れた。

「ふざけるな!!」

「ここで頭を下げれば、我らの威信は地に落ちるぞ!」

「威信で国が守れるのか!?」

怒号が飛び交う。

机を叩く音が響く。

「兵は壊滅だ! 次は誰が戦う!?」

「徴兵すればいい!」

「誰が来る!? “戦うな”が広がっているのにか!?」

沈黙。

その沈黙が、すべてを物語っていた。


そのとき、一人の若い貴族が立ち上がる。

顔は紅潮し、拳は震えていた。

「……ふざけるなよ」

誰もが彼を見る。

「味方の兵が死んだのに――戦わないのか!?」

空気が一変する。

「俺の兄は前線で死んだ!!」

「友も、部下も……皆、あの“化け物みたいな兵器”に殺された!!」

声が震える。

だが、止まらない。

「それで終わりか!? 頭を下げて終わりか!?」

「そんなの……そんなの、あんまりだろ!!」

沈黙。

誰も、すぐには答えられなかった。


やがて、一人の老臣が静かに口を開く。

「……その通りだ」

若い貴族が顔を上げる。

だが――

「だからこそ、戦ってはならん」

「……は?」

「これ以上、同じ死を増やすだけだ」

低く、しかし確実に言う。

「仇討ちで国は救えん」

「だが……!!」

「お前の兄を殺したのは敵だ」

老臣の目が細くなる。

「だが――」

一拍。

「その敵に、勝てるのか?」

言葉が、突き刺さる。

若い貴族は何も言えない。


・強硬派

「まだ終わっていない」

老将が低く言う。

「数を集めろ。包囲しろ。兵器ごと叩き潰せばいい」

「だが、その兵器が――」

「恐れるな!!」

怒鳴りつける。

「所詮は道具だ!! 壊せば終わる!!」

だが、その言葉に力はなかった。

“どう壊すか”を、誰も言えない。


・講和派

「時間がない」

冷静な声。

「経済も崩れている。塩の価格は暴落、商人は撤退」

「兵も民も、戦う意思を失っている」

一歩、踏み出す。

「この状態で戦争を続ければ――」

「内側から崩壊します」


・王

王は黙っていた。

ただ、玉座に座り、全てを聞いている。

「……ならば、どうする」

絞り出すような声。

「頭を下げろと?」

誰もすぐには答えなかった。


そのとき。

扉が開いた。

「報告!!」

使者が飛び込む。

「敵国より――通達です!!」

ざわめき。

「……読め」

使者は震える声で読み上げる。


「“我が国は、これ以上の侵攻を望まない”」

「“ただし、敵対行為を継続する国家に対しては――”」

一瞬、言葉が詰まる。

「……続けろ」

「“徹底的に殲滅する”」

空気が凍る。

誰も動かない。

「……脅しだ」

誰かが言う。

だが、その声は弱い。

「……脅しではありません」

前線帰りの将校が、静かに言う。

「“実例”を、我々は見ています」

誰も否定できなかった。


「終わったな……」

商人が呟く。

「戦うか、滅ぶかだ」

「いや……違う」

別の男が首を振る。

「もう一つある」

「何だ」

「頭を下げて、生きる」

沈黙。

それは屈辱だった。

だが――

魅力的な選択でもあった。


「……いい流れだ」

側近が問う。

「よろしいのですか? 講和に傾いていますが」

「構わない」

即答だった。

「むしろ理想だ」

「理想……?」

俺は地図を見る。

三国の位置に、指を置く。

「連中は今、“一枚岩じゃない”」

「恐怖でまとまった連合は、恐怖で崩れる」

指を、ゆっくりと動かす。

「ここで叩くべきは、軍じゃない」

「……では?」

俺は、笑った。

「国家そのものだ」


・命令

「通達を出せ」

「はっ」

「講和を望む国には、条件を提示する」

「拒否する国には?」

一瞬の沈黙。

「……見せつけろ」


・終幕

その日。

三国は、完全に分かれた。

戦う国。

降る国。

そして――

迷う国。


そして、そのすべてを――

一人の男が、盤上の駒のように見ていた。

「さあ……選べ」

それは、戦争ではない。

“選別”の始まりだ。

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