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弱小国の王子だったので、近隣都市を制圧します  作者: レモンティー


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第十五話:三国同時侵攻開始 ―― 戦場が壊れる日

夜明け前。

霧が低く垂れ込める中、三方向から軍が進む。


・敵軍・東部戦線(重装歩兵)

東の陣。

重装歩兵の列の前で、将軍が笑っていた。

「小国がずいぶんと調子に乗ったものだな」

副官が答える。

「情報では、兵数は我らの五分の一以下」

「装備も軽装主体とのことです」

将軍は鼻で笑う。

「……ならば終わりだ。捻り潰してやろう」

彼はゆっくりと視線を上げ、遠くの城壁を見やる。

「あの様子だ。壁に籠もるしかない雑魚どもが――何を勘違いしたのか」

兵士たちの間にも余裕があった。

「久々に楽な戦だな」

「報奨金は山分けだ」

「塩や資源がそのまま手に入るぞ」

誰かが笑う。

それにつられて、笑いが広がる。

――戦ではなく、略奪の話だった。

将軍はその様子を一瞥し、満足げに頷く。

そして、ゆっくりと剣を抜いた。

金属音が、乾いた空気に響く。

「密集陣形!」

兵が動く。

盾が並び、槍が揃う。

重い足音が、大地を揺らす。

将軍は剣を振り下ろした。

「――押し潰せ!!」


・敵軍・西部戦線(騎兵)

西。

騎兵隊の指揮官が馬上で笑う。

「歩兵主体だと?」

「終わりだな」

副官が頷く。

「速度で蹂躙できます」

指揮官は肩をすくめる。

「新兵だろうが傭兵だろうが関係ない」

「踏み潰せば同じだ」

騎兵たちが笑う。

「一撃で終わりだ!」

「競争だな、誰が一番乗りするか!」

指揮官が剣を振る。

「突撃!!」


・敵軍・南部戦線(混成軍)

南。

弓兵と歩兵、騎兵が混ざる軍。

だが空気は緩んでいた。

「三国で一斉侵攻だぞ?」

「負ける要素がない」

指揮官が地図を見ながら言う。

「問題は“取り分”だな」

別の将校が笑う。

「技術は王に、塩や資源は我々が頂くか?」

「鉱山もあるらしいぞ」

「夢のような話だ」

誰も“戦い”の話をしていなかった。

「まあいい」

指揮官が手を振る。

「適当に崩して、降伏させろ」


・城壁の上(対比)

王とアルベルトがそれを見ている。

「……あれが敵か」

王が呟く。

アルベルトは低く言う。

「舐めている」

「完全に“従来の戦争”のつもりだ」

俺は静かに答える。

「だから勝てる」


・東部戦線:崩壊(敵の認識変化・拡張)

「突撃!!」

重装歩兵が進む。

だが――

クロスボウが火を噴く。

バン、バン、バン――

将軍の顔が歪む。

「……何だ?」

一人、倒れる。

「盾を構えろ!」

だが、貫かれる。

「は?」

さらに倒れる。

「……貫通した?」

理解が遅れる。

「そんな馬鹿な……!」

第二射。

第三射。

密集が“死”に変わる。

将軍が叫ぶ。

「止まれ!止まれぇ!!」

その瞬間だった。

――ブンッ

空気を裂く、重い音。

「……?」

誰も空を見上げる余裕がない。

次の瞬間。

ドォンッ!!

地面が弾ける。

土と肉片が吹き上がる。

「なっ――!?」

巨大な石塊。

隊列の中央が“消える”。

「……なにが起きた?」

第二弾。

ドォンッ!!

逃げ場がない。

密集した歩兵隊は、ただの標的になる。

「散開しろ!!」

遅い。

クロスボウが再び火を噴く。

逃げれば撃たれる。

留まれば潰される。

将軍の顔が絶望に染まる。

「……これは戦じゃない……」

その胸に矢が突き刺さる。

東軍、壊滅。


・西部戦線:誤算の連鎖

騎兵が突っ込む。

「踏み潰せ!」

クロスボウ、一斉射。

馬が崩れる。

前列が転倒。

「なっ――!?」

後列が突っ込む。

衝突。

混乱。

指揮官が絶叫する。

「止まれ!!」

止まらない。

さらに射撃。

騎兵はただの“的”になる。

「こんな……こんなはずでは……!」

――ブンッ!!

空気が裂ける音。

「……?」

黒い影が空を横切る。

一瞬の静寂。

ドォンッ!!

衝撃。

地面が砕け、騎兵が吹き飛ぶ。

馬が逃げる。

隊列が崩壊する。

「後退しろ!!」

だが、遅い。

第二弾。

第三弾。

逃げ場のない平原に、石が降る。

クロスボウがそれを“刈り取る”。

前は潰れ、後ろは詰まる。

横は撃たれる。

「……囲まれている……?」

違う。

囲まれてすらいない。

ただ――

射程の中にいるだけだ。

西軍、崩壊。


南軍。

混成部隊の指揮官が、ふと目を細める。

「……あれは何だ?」

副官が視線を向ける。

城壁の内側。

並んでいる“何か”。

木製の巨大構造物。

腕のようなものが伸びている。

副官が首をかしげる。

「いや……距離がある」

「この距離で使うものでは――」

指揮官が笑う。

「ハッ、焦って持ち出しただけだろう」

「使える代物じゃない」

兵士たちもざわつきながら、すぐに気を抜く。

「無駄なもん持ち出してるな」

「やっぱり素人か」


・“それ”が動く

次の瞬間だった。

ギィィィ……

低い、軋む音。

全員の視線が止まる。

「……動いた?」

誰かが呟く。

腕が引かれる。

限界まで。

止まる。

一瞬の静寂。

そして――

放たれる。

ブンッ!!

空気が裂ける音。

「――は?」

誰も理解できない。

黒い影が空を横切る。


・着弾

ドンッ!!!!

土と巨大な石が吹き飛ぶ。

地面が爆ぜる。

人が宙を舞う。

馬が逃げ出す。

一瞬、音が消える。

次の瞬間、悲鳴が爆発する。

「な、なんだあれはあああああ!!」

「攻撃……!?」

「どこからだ!?」

指揮官の顔が凍る。

「馬鹿な……届く距離じゃない……!」


・恐怖の拡大

第二射。

ブンッ!!

「来るぞ!!」

ドンッ!!

爆ぜる。

陣形が消える。

「散開しろ!!」

だが遅い。

第三射。

第四射。

空から“死”が降ってくる。

兵士が叫ぶ。

「なんだあれは!!」

「見えない!!」

「避けられない!!」

混乱が一気に広がる。


・理解の崩壊

副官が震える声で言う。

「将軍……これは……」

指揮官は答えられない。

ただ呟く。

「こんな兵器……聞いたことがない……」

さらに一撃。

ドンッ!!

「ひぃっ……!」

兵が後ずさる。

前線が勝手に崩れる。

命令が通らない。


・“戦う前に壊れる”

そこにクロスボウ。

「撃て」

乾いた連射音。

バン、バン、バン――

逃げる者から倒れる。

叫ぶ者から倒れる。

兵士が泣き叫ぶ。

「無理だ!!」

「こんなの戦えない!!」

「なんだあれは!!」

一方的な殺戮。

「やめろ……!」

「これは戦いじゃない……!」


・指揮官の絶望

指揮官が叫ぶ。

「落ち着け!!」

だが、その声は震えている。

「ただの投石器だ!!」

言いながら、自分で理解している。

違う。

これは“ただの兵器”ではない。

戦場の外から、一方的に殺す装置。

「撤退……」

口に出しかけて――

ドンッ!!

視界が白く弾ける。


・南部戦線、消滅

霧が晴れたとき。

そこにあったのは、軍ではなかった。

ただの“破壊跡”だった。


・戦場の終わり

霧が晴れる。

残ったのは静寂だけ。


・城壁の上

王が呟く。

「……あれほどの軍が」

アルベルトが震える声で言う。

「“戦った”とは言えない」

「ただ……消えた」

「だが一つだけ確実だ」

一拍。

「これまでに無い戦い方だ」

俺は静かに言う。

「使い方の問題だ」

俺は答える。

「旧時代がな」


・余韻

敵は最初、笑っていた。

勝利を疑わなかった。

だが最後に残った言葉は、同じだった。

「こんなはずではなかった」

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