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『地球ショッピング』で異世界を快適に!~医学生、善行ポイントで現代物資を取り寄せ、兎の村を最強要塞に変える~  作者: 月神世一


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第三章 碧海の交易都市と深淵の秘宝

マルストア領へ。潮風の街と三人の出迎え

帝都武術大会「獅子王祭」の熱狂と、思いがけない「子爵位」及び「領地」の拝命から数週間後。

ホープ・クローバーズの一行は、莫大な優勝賞金の一部で購入した頑丈な大型馬車に乗り込み、帝都アウストラを後にして新たな領地――『マルストア』へと向かっていた。

南へと続く街道を数日かけて進むにつれ、車窓の景色は穏やかな平原から、ゴツゴツとした岩がちな海岸線へと変わっていく。

やがて、馬車が小高い丘を越えた瞬間。彼らの目の前に、紺碧の海と、岬の断崖にそびえ立つ堅牢な城塞、そしてその麓に扇状に広がる活気ある港街の全景が現れた。

「へぇ……ここがマルストアか」

勇太は馬車の窓から街を見下ろし、感慨深げに呟いた。帝都ほどの巨大さはないが、海と城塞が織りなす風景は、独自の歴史と潮の香りに満ちている。

「わぁ……! 潮風がすっごく気持ち良いです~!」

キャルルは早速窓から身を乗り出し、長い兎耳を風に揺らしながら海の香りを胸いっぱいに吸い込んでいる。

「きっと、お魚が美味しいんだろうなぁ……! 早く市場に行ってみたいです!」

彼女の頭の中は、すでに名物の海産物でいっぱいのようだ。

「ガハハ! 違いねえ! 強い海魔シーモンスターの肉なんかも食えるかもしれねえな! あぁ、腹が鳴ってきたぜ」

イグニスも、長旅の疲れより未知の食材(と戦い)への期待感で牙を剥き出しにして笑う。

「あら、見て。あそこの丘の上にある白い壁の建物……あっ、あのテラス席のあるレストランとか、すごく美味しそうじゃない?」

リーシャは早くも、エルフの優れた視力で街一番のお洒落なスポット「白金のレストラン」の看板を見つけ出し、優雅な新生活に思いを馳せていた。

そんな浮かれた一行の中で唯一、極めて冷静に街の「戦略的価値」を分析している者がいた。

人間の青年の姿をとり、腕を組んで静かに窓の外を眺めていた番竜、アカメである。

「……ほぉ。あれは『魔砲』か」

アカメの真紅の瞳が、断崖の城塞の城壁に据え付けられた、黒光りする巨大なカノン砲を鋭く見据えていた。

「魔砲……って、大砲のこと?」

「そうだ。それも数か所に、海側へ向けて設置されているな。中々本腰を入れた防衛兵器だ。……ということは、ユウタ。この街にはそれだけ強力な外敵(海賊や魔物)がいるか、あるいは『過去にいた』ということだぞ」

アカメの的確な指摘に、勇太は気を引き締めるように頷いた。皇帝がタダで気前よく街を一つ譲ってくれた裏には、何かしらの『厄介事』が隠されていると見るべきだろう。

一行を乗せた馬車は、活気と潮の香りが入り交じる港湾区を抜け、街の中心である高台の城塞(領主の館)へと到着した。

巨大な鉄格子の門が重々しい音を立ててゆっくりと開くと、中庭には三人の人物が整列して彼らを待ち構えていた。

馬車を降りた勇太たちの前に、最初に進み出てきたのは、仕立ての良い執事服を完璧に着こなした、銀縁眼鏡の壮年の男性だった。

「お待ちしておりました、ユウタ様。ようこそ、辺境の地マルストアへ」

彼は背筋を伸ばしたまま、寸分の隙もない優雅な所作で深く一礼した。

「私はこの城塞の執事を務めております、ルンベルスと申します。以後、領主様の右腕として粉骨砕身働く所存でございます。お見知りおきを」

「ルンベルスさんですね。よろしくお願いします」

勇太が挨拶を返すと、続いて執事の隣に控えていた人馬一体の騎士――上半身が凛々しい女性で、下半身が屈強な馬の体を持つ半人半馬ケンタウロス族の騎士が、ひづめをカツンと鳴らして進み出た。

「お初にお目にかかります! マルストア騎士団を預かる騎士団長、マンミヤ・ユルスクと申します!」

彼女は胸の鎧に力強く右拳を当て、美しい姿勢で騎士の敬礼を行った。その鋭く力強い眼差しは、値踏みするように真っ直ぐに勇太を見据えている。

「我らマルストア騎士団、本日より新たな子爵様マスターの剣となり盾となることを誓います!」

そして、二人の背後から、すすけた顔で、しかし好奇心に満ちた爛々とした目を光らせていたドワーフの老人が、豪快な笑い声を上げながらずかずかと歩み寄ってきた。

「お~お~! あんたが帝都で噂の新しい領主様かぁ! いや~、若けえな!」

彼は勇太の腰にある見慣れない素材のマジック・ポーチや、衣服の裁縫(地球の技術)を穴の開くように見つめている。

「あんた、魔法とも違う『不思議な技術スキル』を持ってるんだってなぁ? 鍛冶師の血が騒ぐじゃねえか……! 俺はドルグ。この街の工房を束ねてるモンだ。いやはや、退屈な街に楽しみが増えたぜ~、ガハハハッ!」

礼節を重んじる執事。

武を誇る半人半馬の騎士団長。

技術と好奇心に生きるドワーフの鍛冶師。

個性も、立場も、そして種族も全く異なる三人の出迎え。

勇太は、彼ら一人一人の顔をしっかりと見つめ返すと――若き新領主として、威張ることも、ふんぞり返ることもなく、現代日本の青年のようにスッと深々と頭を下げた。

「僕はナカムラ・ユウタです。今日からこの街の領主を務めます。……でも、街のことはまだ何も分からない未熟者です。だから、皆さんの力を、ぜひ僕に貸してください。よろしくお願いします」

その新領主らしからぬ謙虚な姿勢と、しかし確かな芯のある声に、三人の側近たちは僅かに目を見開き――やがて、それぞれの顔に信頼と期待の笑みを浮かべた。

勇太と、彼を支える頼もしい仲間たち。

そして、彼を迎えるマルストアの個性豊かな領民たち。

潮風が吹き抜けるこの南の港街で、ホープ・クローバーズの新たな物語が、今、静かに、そして力強く動き出そうとしていた。

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