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『地球ショッピング』で異世界を快適に!~医学生、善行ポイントで現代物資を取り寄せ、兎の村を最強要塞に変える~  作者: 月神世一


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EP 42

決勝、友との誓い

帝都武術大会「獅子王祭」、決勝戦。

巨大なコロッセオ・アウストラは、もはや石造りの建築物そのものが揺れんばかりの、地鳴りのような観客の熱狂で満ちていた。

選手待機エリアへと続く最後の薄暗い通路で、勇太とイグニスは足並みを揃え、見送りに来たキャルルとリーシャに向き直った。

「二人とも、頑張ってください! どっちも応援してますからね!」

キャルルは、大好きな仲間同士が血を流し合うことに少し複雑そうな表情を見せながらも、心からの笑顔で両手に拳を握ってエールを送る。

「ええ。でも、お互いに取り返しのつかない怪我だけはしないようにね。私の最高位の回復魔法にも、魔力の限界があるのだから」

リーシャは、三本目の特製ハイ・ポーションを握りしめ、ひどく心配そうに釘を刺した。

「ああ……」

勇太は苦笑して頭を掻いた。

「ごめん、リーシャ。それは多分……無理そうだな」

勇太の言葉に、隣のイグニスも獰猛な牙を剥き出しにして不敵に笑う。

これから始まるのは、手加減など一切存在しない、互いの魂と誇りを懸けた『本気』のぶつかり合いだ。小手先の寸止めなど、目の前の強大な友への侮辱でしかない。

勇太とイグニスは、闘技場の左右のゲートから、割れんばかりの大歓声と金管楽器のファンファーレを浴びながら決勝の光の舞台へと足を踏み入れた。

広大な円形の闘技場の中央で、二人は静かに向かい合う。

同じ屋根の下で暮らし、同じ飯を食い、背中を預け合ってきた仲間。そして今、立ち塞がる『最強の好敵手ライバル』として。

(イグニスは圧倒的なパワーファイター。それは変わらない。だけど――)

勇太は、静かに呼吸を整えるイグニスの巨体を観察する。

(ライオット戦で見せたように、今の彼はただの力任せじゃない。土壇場での爆発力と、戦いの中で他者の技を吸収する『柔軟な知性』がある。一瞬たりとも気が抜けない!)

「両者、構え!」

審判の張り詰めた声が響く。

勇太は模擬薙刀を青眼に、イグニスは巨大な模擬戦斧と大盾を、それぞれ静かに構えた。

「始めェッ!!」

銅鑼の音と同時に、まず動いたのは勇太だった。

静かに己の間合い(薙刀の絶対領域)へと踏み込み、互いの出方をうかがう。そして、探りを入れるように、鋭く、しかし回避困難な牽制の突きをイグニスの胸元へと放った。

「甘えぜッ!」

だが、イグニスはその神速の突きを、大盾の『面』ではなく『縁』で弾き、綺麗にいなしてみせた。

力で押し返すのではなく、攻撃のベクトルを逸らす高度な防御技術。そして、その流れるような動作から一切のタメを作らず、今度は手首を返した戦斧で勇太の胴を真っ二つに薙ぎ払う!

「……ッ!」

風を切り裂く轟音。勇太は、その必殺の横薙ぎをサイドステップで素早く回避した。

だが――それこそが、イグニスの狙い通りだった。

「そこだァッ!!」

勇太が回避行動を取って足が止まった『その先』に、イグニスは待ち構えていたとばかりに大きく息を吸い込み――竜の口腔から、灼熱の火炎球ファイア・ブレスを放った!

戦斧での大振りな攻撃は、勇太をこの回避不能な火炎の射線上へと『誘導』するための、完璧な布石トラップだったのだ。

(誘導された……!? イグニスが、頭脳戦を!?)

絶体絶命のピンチ。一瞬で視界が紅蓮の炎に染まる。

しかし、勇太は極限状態にあっても恐ろしいほど冷静だった。

彼は迫りくる火炎球に対し、逃げるのではなく、その場で薙刀をプロペラのように超高速で回転させた!

ブォンブォンブォンッ!!

風を切る凄まじい音が鳴り響き、高速回転する薙刀が生み出した強烈な遠心力と風圧が、局地的な『竜巻(防風壁)』を巻き起こす。

「ふッ……!」

勇太は、その自ら作り出した風の壁を利用し、炎の渦を巻き込むようにして薙刀を斜め上へと振り抜いた。

炎と風が激突し、火炎球は強引に軌道を変えられ、勇太のすぐ脇を通り過ぎて後方の闘技場の石壁にドガンッと爆ぜた。

もうもうと立ち上る黒煙と、焦げた砂の匂い。

「……ガハハッ! やるな、ユウタ。俺様の完璧な不意打ち(トラップ)を、力技で捌ききりやがるとはな」

煙の向こう側から、イグニスが感心したように、しかし心の底から楽しそうに笑う声が響いた。

その黄金の瞳には、かつてないほどの強敵と闘う喜びに満ち溢れている。

「ああ、肝を冷やしたよ。……イグニス、君も随分と『頭』を使うようになったじゃないか」

勇太も、額に滲んだ汗を手の甲で拭い、不敵な笑みを返した。

互いの著しい成長を確かめ合った二人の闘志は、限界を突破してさらに熱く燃え上がる。

帝都の空を焦がす「獅子王祭」の頂点を決める戦いは、まだ始まったばかりだ。

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