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『地球ショッピング』で異世界を快適に!~医学生、善行ポイントで現代物資を取り寄せ、兎の村を最強要塞に変える~  作者: 月神世一


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EP 41

友の背中と決勝への扉

Sランクの魔法剣士サブリナを、知略と技の極みで破るという歴史的大金星を挙げた勇太。

彼が歓声の余韻を引きずりながら控え室の扉を開けると、待ち構えていた仲間たちが一斉に駆け寄ってきた。

「ユウタさーんっ! すごかったです! 本当に、本当にカッコ良かったですぅ!」

「ふふっ、流石は『私の勇者様』ね。あの氷の魔法剣士を、まさかあんな風に手玉に取るなんて」

「わっ……と!?」

キャルルとリーシャが、興奮冷めやらぬ様子で両側から勇太に抱きついてきた。

ウサギのように柔らかく弾むキャルルの感触と、リーシャから漂うエルフ特有の甘く高貴な香り。

「い、いや、オーバーだな。ギリギリだったよ。それに、二人ともちょっと近いって……!」

勇太は二人の美少女に密着され、嬉しいやら恥ずかしいやらで、顔を真っ赤にして照れるしかなかった。

そんな和やかな空気の中。

部屋の隅で腕を組み、黙って壁に寄りかかっていたイグニスは、その黄金色の瞳に、これまでにないほどの深く静かな『闘志』を燃やしていた。

彼は、モニター越しに勇太の戦いを一瞬も見逃すまいと食い入るように見ていたのだ。

力だけではない。相手の心理を読み、物理法則を利用し、最小限の動き(静寂)で強敵を打ち破る戦い方。

それは、本能とパワーだけで生きてきた竜人の彼にとって雷に打たれたような衝撃であり――同時に、武人としての血を極限まで滾らせるものだった。

『次! 第一闘技場、準決勝第二試合! イグニス・ドラグーン選手! 入場準備!』

進行係の魔法拡声器が響く。

「……」

イグニスは誰に言うでもなく静かに頷いた。

そして無言のまま、壁に立てかけてあった戦斧と大盾を手に取り、ゆっくりと試合会場に向かって歩き始める。

その分厚い背中からは、いつものような「俺様最強」といった自信過剰なオーラは消え失せ、代わりに研ぎ澄まされた名刀のような、冷たく鋭い集中力が立ち上っていた。

「……イグニス」

勇太は、二人の美少女からそっと離れ、その背中に静かに声をかけた。

「……勝てよ」

イグニスは振り返らなかった。

ただ、戦斧を持った右手を頭の上で軽く振っただけで、闘技場へと続く眩しい光の中へと消えていった。

コロッセオの中央、砂の舞う試合会場。

イグニスの対戦相手は、ユリウスと名乗る帝国騎士団の『槍術師範代』。研ぎ澄まされた槍を構える、隙のない精悍な男だった。

「始めッ!!」

審判の銅鑼が鳴る。

「おおおおおッ!!」

ユリウスは鋭い裂帛の気合いと共に槍を構え、イグニスへと疾風のごとく迫る。

だが――イグニスは動かない。

大盾を体の前に静かに置き、咆哮を上げることもなく、ただ黄金の瞳で相手の切先を見据えているだけだ。

「どうした、竜人! その巨体ゆえに私のスピードに臆したか!?」

ユリウスがイグニスを挑発する。そして、イグニスの足が完全に止まっているのを「好機」と見て、心臓を貫くべく一直線に神速の突きを放った。

――その瞬間。

イグニスは、これまで見せたことのない、静かにして最小限の動きで――まるで先ほどの勇太の『見切り』を完全にトレースしたかのように、スッと**『半歩』**だけ身を躱した。

「なっ……!?」

空を切るユリウスの槍。

突進の勢いで前のめりに体勢を崩した騎士の無防備な側頭部へ向けて、イグニスは振り向きざま、構えていた大盾の硬い『エッジ』を、コンパクトかつ冷徹に振り抜いた。

ゴッ……!!

闘技場に、重く鈍い衝突音が響く。

それは力任せのフルスイングではない。相手の突進のベクトルと、自らの回転の遠心力を利用した、完璧な『カウンター』だった。

ユリウスは一瞬にして白目を剥き、受け身を取ることもできず、糸が切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちた。

一撃。たった、一撃の盾打ち。

「し、しょ……勝負有り!! 勝者、イグニス・ドラグーーン!!」

あまりにも一瞬の、そして竜人らしからぬ洗練された決着に、審判も数万の観客も呆気にとられていた。

やがて状況を理解したコロッセオから、地響きのような爆発的な大歓声が巻き起こる。

だが、イグニスは天に向かって吠えることもせず、静かにユリウスを一瞥すると、踵を返して通路へと戻っていった。

控え室の扉が開く。

帰ってきたイグニスの顔は、汗ひとつかいていないかのように涼やかだった。

彼は真っ直ぐに勇太の目の前に立つと、獰猛な牙を剥き出しにして、ニヤリと笑った。

「約束通り、無傷で勝ち残ったぜ。……次は、決勝だ」

「ああ、見てたよ。見事なカウンターだった」

「勝負だ、勇太」

イグニスが突き出した拳。

その言葉と瞳には、初日のライオット戦で見せた狂気とは違う――共に背中を預け合う『友』として、そして頂点を争う『好敵手ライバル』としての、純粋で熱い闘志が込められていた。

「ああ。思いっきりやろう」

勇太も、その熱を正面から受け止め、己の拳を力強くイグニスの拳に打ち合わせた。

帝都武術大会「獅子王祭」、決勝戦。

その大舞台で最後に対峙するのは、同じパーティ「ホープ・クローバーズ」に所属する、二人の若き英雄。

帝都中の、いや大陸中の注目が、この数奇な運命の頂上決戦に集まろうとしていた。

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