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『地球ショッピング』で異世界を快適に!~医学生、善行ポイントで現代物資を取り寄せ、兎の村を最強要塞に変える~  作者: 月神世一


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EP 10

ファミレスの大宴会と、駄女神への壁ドン(フィナーレ)

帝都ルナミスのカチコミから数時間後。

マルストア領の中心街に最近オープンしたばかりの24時間営業ファミレス『ルナミスキング(通称:ルナキン)』は、いつにも増して異常な熱気と賑わいに包まれていた。

「う、う、うめええええええええっ!! なんですかこれぇぇっ!!」

店内の奥、いくつものテーブルを繋ぎ合わせた特大のボックス席で、ユート・ディスパーダが顔を涙と肉汁でぐちゃぐちゃにしながら絶叫していた。

彼の手元にあるのは、熱々の鉄板に乗せられた『ハンバーグ・ルナミス風』。

ロックバイソンの挽肉に、エロ本を没収されて極限まで身を柔らかくした『たまんネギ(賢者モード)』を練り込み、ソースの味がする『ソーリーフ』のデミグラスをたっぷりとかけた、ルナキンの看板メニューだ。

「太陽芋以外の飯が、こんなに美味しいなんて……っ! お肉が口の中でホロホロ崩れて、肉汁がドバーッて……っ!」

ユートはナイフとフォークを握りしめ、まるで何日も飢えていた獣のようにハンバーグと米麦草のライスを胃袋に掻き込んでいく。

マグローザ漁船行きの恐怖から解放され、100万円の借金もゼロになり、おまけに討伐報酬の金貨まで懐にある。

死の淵から生還した彼にとって、平和なファミレスで食べるこのジャンクな味は、まさに神の祝福(※ルチアナではない)のように感じられたのだ。

「ガハハハハ! いい食いっぷりだぜ坊主! 今日は俺様……いや、軍団長(優太)の奢りだ! 足りねぇなら、ピラダイのフライも追加してやるぞ!」

巨大な竜人族のイグニスが、ジョッキに入ったイモッカ(芋酒)を煽りながら、ユートの皿に次々とおかずを乗せていく。

「ユートくん、いっぱい食べて大きくなってね! はい、あーん!」

キャルルがウサギの耳を揺らしながら、自分の頼んだパフェのイチゴをユートの口に放り込む。

「あむっ……! あ、甘い! 甘くて冷たい! 生きててよかったぁぁっ!」

「ふふっ。極めて非論理的な奇跡だったけれど、あなたが恐怖に打ち勝ち、私を助けようとしたその結果は、高く評価するわ」

エルフの賢者リーシャが、優雅に紅茶を傾けながら微笑む。

「全くだ! あの絶体絶命の窮地で盾を構えたその背中、紛れもない『真の勇者』であった! ボス、ユート殿を我が騎士団の副団長に迎えたいくらいですぞ!」

騎士団長のマンミアが、すでに酔っ払って赤くなった顔で力説している。

美女たちからちやほやされ、頭を撫でられ、美味しいご飯を腹いっぱい食べる。

農家の三男坊として泥にまみれていたユートにとって、それは夢にまで見た『勇者の成功ハーレム』の光景そのものだった。

ユートが顔をだらしなく緩ませていると、そこへ、ドドドッ! と健康サンダルを鳴らして、エンジ色の芋ジャージを着た少女が乱入してきた。

「ちょっと! 私のサポートメンバーを勝手に甘やかさないでくださる!?」

地下アイドル・リーザである。

彼女はドンッ! とテーブルに両手をつき、ユートの目の前に『一枚のカード』を突きつけた。

「ユートさん! 今日からあなたが、私の『太客第2号』ですの!」

「た、ふと……きゃく?」

「そうですの! 命の恩人であるこの私を、立派なトップアイドルにするために、その懐にある金貨で全力で推し活(お布施)をしなさいの! さぁ、まずはファンクラブのゴールド会員証(月額銀貨5枚)にサインを!」

リーザは強欲な笑みを浮かべ、羽ペンをユートに押し付けた。

「ええっ!? つ、月額!? でも、僕の稼いだお金……」

「命と100万円に比べたら、安いものですわよ!? ほら、サイン! サインですの!」

「わぁぁっ、引っ張らないでぇ!」

ギャーギャーと騒ぎながら、リーザに首根っこを掴まれて揺さぶられるユート。

その騒がしくも温かい光景を、少し離れた席から見つめている男がいた。

「……まぁ、悪くない結末だ」

ジャージ姿の優太は、グラスに入った鮮やかな緑色の『メロンソーダ』をストローですすりながら、フッと優しく微笑んだ。

たった数日前。冒険者ギルドで半泣きになっていた、借金まみれの農民の少年。

彼は、死の恐怖に直面し、己の弱さを知り、それでも「仲間を守る」という打算なき勇気を振り絞って、自らの手で未来を切り拓いた。

(ルチアナの悪徳ローンは破棄させた。だが、あいつが手に入れた『勇者の力』と『仲間』は、紛れもないあいつ自身の本物だ)

優太は、ドンチャン騒ぎを続けるチームの面々を見渡し、深く安堵の息を吐いた。

リーダーとして、大人として、一人の若者を正しく導けたこと。それは、強大な魔獣を打ち倒すことよりも、優太の心に静かな誇りを与えていた。

「おーい、リーダー! リーザちゃんが勝手に僕のお財布から金貨を抜こうとしてますぅぅっ! 助けてくださーい!」

ユートの情けない悲鳴が響く。

「自分でどうにかしろ、勇者サマ! それも修行のうちだ!」

優太が笑いながら怒鳴り返すと、ルナキンの店内に、これまでで一番大きな笑い声が響き渡った。

マルストア領の平和な夜は、こうして賑やかに、そして幸福に更けていくのだった。

***

――一方、その頃。

アナステシア世界を見下ろす、遥か高みの『セレスティア(天界)』にて。

ドンッッ!!!!

大理石でできた神殿の壁に、凄まじい衝撃音が響き渡った。

「ひぃぃぃっ!?」

壁に押し付けられていたのは、ピンク色のジャージを着た世界神、駄女神ルチアナだった。

そして、彼女の逃げ場を塞ぐように、両手で激しい『壁ドン』を決めているのは、美しい黄金の翼を持つ天使長・ヴァルキュリアである。

「ル・チ・ア・ナ・様?」

ヴァルキュリアの顔には、完璧なまでの美しい微笑みが浮かんでいた。

だが、その瞳の奥には一切の光がなく、背後の黄金の翼からは、怒りのあまり『バチバチバチッ!』と凄まじい神気のスパークが漏れ出している。

「あ、あははは……。ば、ヴァルちゃん、お仕事お疲れ様。その、壁が凹んでるんだけど……気のせいかしら?」

ルチアナが引きつった笑顔で冷や汗を流す。

「いいえ、気のせいではありません。……ところでルチアナ様。先ほど、人間界のアンテナショップにて、マルストア領の領主様から『クーリングオフ』なる申し立てを受けたそうですね?」

「ッ!?」

「しかも、未成年の農民にタローマンの安物を100万円で売りつけ、あまつさえ魔王ラスティア様の首に勝手に懸賞金を懸けて、ソシャゲのガチャ代を稼ごうとしていたとか。……私が少し目を離した隙に、また随分とクリエイティブな詐欺ビジネスを思いつきましたね?」

「ち、違うのよヴァルちゃん! これは健全な勇者育成システムの一環で……! ほ、ほら、結果的にあのユートって子は立派な勇者に成長したじゃない! 全ては私の計算通りの導きだったのよ!」

ルチアナが必死に両手を振って弁明する。

「言い訳は不要です」

ヴァルキュリアの冷徹な声が、神殿に響いた。

「世界の理を司る神が、己の物欲(オタ活)のために弱者を搾取し、あわやアバロン魔皇国との全面戦争を引き起こしかけるなど、言語道断。……覚悟はできていますね?」

「いやああああぁぁぁっ!!」

ヴァルキュリアは、ルチアナの襟首を掴み、神殿の奥の『反省室』へと強引に引きずっていった。

「これより、五時間の正座! および、私の手作りである特製高濃度青汁『緑の絶望』ジョッキ三杯の一気飲みの刑に処します!!」

「やめてぇぇっ! あれ飲むと三日くらい胃液が草の味になるのよぉぉっ! 月人くぅぅぅん、助けてぇぇっ!!」

駄女神の情けない悲鳴が、美しいセレスティアの空に虚しくこだまする。

自業自得。因果応報。

神様であっても、悪いことをすれば必ず裁きが下る。

アナステシア世界のパワーバランスは、今日も今日とて、絶妙な(ギリギリの)均衡を保っているのであった。

読んでいただきありがとうございます。

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