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『地球ショッピング』で異世界を快適に!~医学生、善行ポイントで現代物資を取り寄せ、兎の村を最強要塞に変える~  作者: 月神世一


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EP 27

リーシャの全属性魔法、特撮エフェクトに無駄遣いされる

「魔法少女には、絶対に欠かせないものがある。それは……背後で巻き起こる『大爆発』だ!」

マルストア城の広大な訓練場。

俺は、ピンク色のフルグラフィックTシャツというふざけた出立ちのまま、愛するエルフの妻・リーシャに向かって熱弁を振るっていた。

「大爆発……ですか?」

美しい銀髪を揺らし、神秘的なブルーの魔法少女衣装(超実用的戦闘服)に身を包んだリーシャが、不思議そうに首を傾げる。その仕草だけでも絵画のように美しいが、今はオタク防衛線の最重要任務中である。俺は真面目な顔で頷いた。

「そうだ。僕の故郷である地球の特撮番組やアニメにおいて、戦士が名乗りを上げる際、その背後では必ずと言っていいほど、赤や青のカラフルな煙と共に大爆発が起きる。あれこそが、オタクの魂を揺さぶる『特撮エフェクト』と呼ばれる至高の演出なんだ」

ピザとコーラによる「不健康アピール作戦」が、異世界の美食文化に敗北した翌日。

俺は作戦を根本から見直し、オタク特有の「痛さ」――いわゆる中二病的な振る舞いを極限まで高めることにした。

戦士としてではなく、「現実と虚構の区別がついていない、痛々しい頭のおかしい男」としてサブリナさんにドン引きしてもらうのだ。

「なるほど……。その『特撮えふぇくと』とやらを、私の魔法で再現してほしいのですね?」

「ああ。僕たちが決めポーズを取った瞬間に、背後でド派手な爆発を起こしてほしい。ただし、僕たち自身には一切のダメージがないように、音と光、そして色のついた煙だけを発生させるんだ。……かなり無茶な注文だとは分かってる。無理なら……」

「――いいえ、勇太。やらせてください」

リーシャは碧色の瞳を細め、フリルのついたスカートの裾をふわりと持ち上げて、優雅にお辞儀をした。

「愛する勇太の頼みですもの。それに、魔法使いとしても非常に興味深い課題です。威力を追求するのではなく、見栄えと安全性を極限まで両立させる……。ふふっ、腕が鳴りますわ」

リーシャは全属性の魔法を極めた、この大陸でも指折りの大魔術師だ。

彼女は早速、訓練場の中央に立ち、ぶつぶつと独自の魔法理論を組み立て始めた。

「まず『火』属性で強烈な閃光と熱源を作り出します。しかし、そのままでは危険ですから、即座に『風』属性の結界を私たちの背後に展開し、爆風と衝撃波を完全に上空へと逃がす。さらに『土』と『水』を微細な粉塵として混ぜ合わせることで、勇太の言う『カラフルな煙』を再現……ええ、いけますわ」

言うのは簡単だが、それは相反する複数の属性魔法を、無詠唱かつコンマ一秒の狂いもなく同時制御するという、神業に近い魔力操作だった。

だが、リーシャは涼しい顔でそれをやってのける気らしい。

「よし、キャルルも準備はいいか!?」

「はいっ、勇太様! いつでもいけます!」

ピンクの魔法少女衣装を着たキャルルが、気合い十分にダブルトンファーを構えた。

訓練場の隅では、今日のオタ活修行(と称したドン引き作戦)を見学するためにやってきたサブリナさんが、木剣を片手に真剣な眼差しでこちらを見つめている。

(よし、サブリナさんが見ているな。……ここで、極限まで痛い名乗り口上を決めてやる!)

俺は深く息を吸い込み、キャプテン・アメリカ顔負けの無駄に良い姿勢と、腹の底から響き渡るバリトンボイスで叫んだ。

「――愛と正義のオタク戦士! ティンクル・ユウタ、ここに推参ッ!!」

俺が両手に持ったサイリウムを天に掲げ、足を大きく開いてポーズを決める。

それに合わせて、キャルルとリーシャも両手でハートマークを作る『ティンクル・ポーズ』を取った。

「月の戦士、ティンクルムーン!」

「星の戦士、ティンクルピーチ!」

三人の声が重なった、まさにその瞬間だった。

ドゴォォォォォォンッ!!!!!

地響きと共に、俺たちの背後で凄まじい爆発が巻き起こった。

燃え盛る紅蓮の炎、そして視界を覆い尽くすほどのピンクとブルーの極彩色の煙が、まるで巨大な花が咲くように訓練場の空へと吹き上がる。

「うおおっ!? す、すげえっ!」

俺は思わず素の声を上げてしまった。

背後で起きた爆発の熱気は感じるが、衝撃波はリーシャの風魔法によって完璧に逸らされており、俺たちの髪の毛すらほとんど揺れていない。

地球のハリウッド映画も真っ青の、完璧すぎる「特撮エフェクト」だった。

「どうかしら、勇太? タイミングは完璧だったと思うのだけれど」

「ああ! 完璧だ、リーシャ! 君は天才だよ!」

俺たちが歓喜に沸いていると、訓練場の隅から、ガタン、と何かが落ちる音がした。

見れば、サブリナさんが手から木剣を取り落とし、口を半開きにしたまま、俺たちの背後に立ち昇る極彩色の煙を凝視していた。

(よし! さすがに今の痛々しい寸劇にはドン引きしただろ!)

俺は内心でガッツポーズをした。

いい年をした大人三人が、奇抜な服を着て大声でポーズを決め、無駄に魔法で爆発を起こして喜んでいるのだ。「この人たち、頭がおかしい」と思われて当然である。

だが、サブリナさんは震える足でゆっくりとこちらへ歩み寄り、そのまま俺の目の前で、崩れ落ちるように片膝をついた。

「……恐れ入りました、ユウタ様。そして、リーシャ様」

サブリナさんの声は、恐怖と、それ以上の深い畏敬の念に震えていた。

「はい?」

「今のは……敵の視覚と聴覚を同時に奪い、さらに戦場全体を不可視の煙で覆い尽くす、究極の『広域制圧魔法スモークスクリーン』ですね……!」

「……え?」

「しかも、あれほどの規模の多重属性爆発を、一切の詠唱なしで、ご自身の背後スレスレで起爆させるという異常なまでの魔力制御! もしあれが、殺傷力を伴った状態で敵陣の中心に放たれていたならば……帝国軍の一箇大隊すら、一瞬で灰燼に帰していたでしょう」

サブリナさんは、ガタガタと震える己の肩を抱きしめた。

「それを、あのような『名乗り』という隙だらけの儀式の最中に、寸分の狂いもなく発動させる……! つまりこれは、敵に対する『我々はいつでも貴様らを塵にできる』という、圧倒的な力の誇示! 極限の威圧プレッシャー!」

「違う! ただカッコよく登場したかっただけなんだ!」

俺の悲痛な叫びは、極彩色の煙と共に虚しく空へと消えていった。

「ユウタ様……貴方様が信仰する『特撮』という兵法、あまりにも奥が深すぎます。ただの戦闘技術を超えた、心理戦の極致……!」

サブリナさんは、熱を帯びた紫色の瞳で俺を真っ直ぐに見上げた。

「お願いです、ユウタ様! 私にも、その『特撮えふぇくと』を背負う資格を与えてください! 私も、貴方様と共に、戦場に極彩色の煙を咲かせたいのです!」

「なんで特撮エフェクトが兵法になってるんだよおおおおっ!」

俺は両手のサイリウムを天に掲げ、涙を流して絶叫した。

痛いオタクを演じれば演じるほど、マルストアの戦力が過剰に評価され、サブリナさんの俺に対する忠誠度(好感度)が限界を突破していく。

エルフの天才魔術師による超高等技術の無駄遣いは、俺の貞操防衛戦の壁を、またしてもド派手な爆発と共に粉砕してしまったのであった。

読んでいただきありがとうございます。

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