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『地球ショッピング』で異世界を快適に!~医学生、善行ポイントで現代物資を取り寄せ、兎の村を最強要塞に変える~  作者: 月神世一


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EP 23

乙女心と朴念仁ぼくねんじん

その日の午後。マルストア城塞にあるキャルルの私室は、いつもより少し華やかでふんわりとした空気に包まれていた。

「えへへ〜。どうかな、似合うかな……?」

彼女は全身鏡の前でくるくると回り、新しい服の着心地を確かめている。

それは、街の仕立て屋の店先で一目惚れしたワンピースだった。純白の柔らかな生地にたっぷりのフリルがあしらわれ、腰と胸元には海のような淡い青色のリボン。キャルルが持つ月兎族特有の愛らしさを、何倍にも引き立てる可憐なデザインだ。

「キャルル、その服、とっても可愛いわね。よく似合っているわ」

ふいに部屋の扉が開き、入ってきたリーシャが感心したように声をかけた。

「あ、リーシャさん! えへへ……街の視察の時に見かけたんですよ。少し高かったんですけど、思い切って買っちゃいました」

キャルルは、長い兎耳を嬉しそうに揺らしてはにかむ。

「そう。……それで? そのとびきり可愛い姿、勇太にはもう見せたのかしら?」

「!? えっ……と! ま、まだです……っ!」

リーシャの直球な言葉に、キャルルの顔が途端にリンゴのように真っ赤になる。その初心うぶすぎる反応を、リーシャは心底楽しむようにクスクスと微笑んだ。

「そう。じゃあ、私のこの服はどう? 帝都の最新の流行りを取り寄せてみたのだけれど」

リーシャが、軽くその場で優雅にターンしてみせる。

彼女が着ているのは、深い緑色を基調とした、身体のしなやかなラインが美しく映えるタイトなドレスだった。上品でありながら、胸元が大胆にV字に開いたデザインは、エルフとしての気高さと、彼女自身の大人びた色気を強烈に際立たせている。

「す、素敵ぃ〜っ! リーシャさん、とっても綺麗です! でも、その胸の開きは、ちょっと大胆すぎませんか〜!?」

キャルルが素直な賞賛と驚きの声を上げる。すると、リーシャは悪戯っぽく瞳を細め、キャルルの耳元に顔を寄せた。

「ふふっ。ねえ、キャルル。今から一緒に勇太のところへ行きましょうよ」

「えっ!? え、え? で、でもぉ〜……仕事中かもしれないし、そんなの、恥ずかしいですよぉ……」

もじもじと両手で顔を覆って尻込みするキャルルに、リーシャはトドメの一言を放つ。

「あら、行かないの? ……じゃあ、今のうちに勇太は私が独り占めして、貰っちゃおうかしら?」

「だ、駄目ですッ! 抜け駆けは絶対駄目ですよ、リーシャさん!!」

その言葉に、キャルルは慌ててリーシャの細い腕をガシッと掴んだ。

「フフフ。じゃあ、決まりね。行きましょうか」

かくして、おめかしをした二人の美しい少女は、それぞれの淡い決意(と下心)を胸に、若き領主の待つ執務室へと向かったのだった。

ガチャリ。

「……ん? どうしたんだい、二人とも揃って」

書類の山から顔を上げた勇太が、持っていた羽ペンを止めて不思議そうに尋ねる。

部屋の隅の長ソファでは、非番のイグニスが退屈そうに寝そべって欠伸をしていた。

キャルルとリーシャは、勇太の机の前にスッと進み出ると、これ以上ないほど可愛らしく、そして艶やかににこりと微笑み、少しだけポーズをとってみせた。

「勇太さんっ♪」

「どうかしら? 似合ってる?」

二人の、期待に満ちたキラキラとした視線。

――その絶対的な『意図』を、ソファに寝そべっていたイグニスは男の勘で即座に理解した。

(お、おいユウタ! 分かってんだろな!? ここは『凄く可愛いよ』とか『綺麗だね』とか、息を吸うように褒めちぎるとこだぞ! お前、政治や商売の頭は回るんだから、頼むぞ、空気読めよ!)

イグニスが内心で冷や汗をかきながら必死に念を送る中。

勇太は、可愛らしくポーズを決める二人とその服装をきょとんとした顔でまじまじと見比べ――そして、心底不思議そうに首を傾げた。

「え? ……何が?」

ピキッ。

執務室の空気が、凍りついた。

それは、あまりにもあんまりな、朴念仁ぼくねんじんの極みとも言える一言だった。

次の瞬間。

キャルルとリーシャの顔から、花のような笑顔がスッと消えた。

完全な無表情(真顔)になった二人は、一切のアイコンタクトもなく、かつてミスリルリザードを討伐した時以上の『寸分の狂いもない完璧な連携動作』で――勇太の両脇腹に、同時に鋭い肘鉄を叩き込んだ。

ゴツゥッ!!

「ぐっふぇぇッ!?」

カエルのような奇声を上げ、何が起きたのか全く理解できないまま、両脇腹を押さえて床に蹲る若き領主。

その傍らには、呆れ果てたように腕を組んで冷たく見下ろす二人のヒロイン。

そして、ソファの上では。

「あーあ……言わんこっちゃねえ」

イグニスが、重い頭痛に耐えるように、大きな手で顔を覆って天を仰いでいた。

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