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『地球ショッピング』で異世界を快適に!~医学生、善行ポイントで現代物資を取り寄せ、兎の村を最強要塞に変える~  作者: 月神世一


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EP 13

交易路の確保と切り札の封印

マルストアの領主執務室。

分厚いマホガニーのテーブルに広げられた広域地図を、勇太、ルンベルス、そして騎士団長のマンミヤが囲んでいた。

特級の薬草、干鰯ほしか、そして長期保存が可能な缶詰。

若き領主と仲間たちの知恵、そして領民たちの努力により、マルストアの莫大な富を生み出す新たな特産品の生産体制は、着実に整いつつある。

「さて、と……。帝都にいるニャングルさんとの販売ルートの算段も済んだ。問題は、ここから帝都へ商品を運ぶ『輸送手段の確保』だね」

勇太は、辺境のマルストアから帝都アウストラへと長く伸びる街道を指でなぞりながら言った。

執事のルンベルスが、銀縁眼鏡を押し上げて恭しく頷く。

「左様でございます。現在のところ、陸路は堅牢な牛車や荷馬車を、海路は月に数便の沿岸輸送船を用いて帝都へ運びます。ですが、どちらのルートも……」

「……道中の『魔物』や『盗賊たち』の襲来がネックになるね」

勇太が、ルンベルスの言葉を引き継いだ。

地図には、過去に被害が報告された危険地帯(山賊の縄張りや海魔の巣)がいくつも赤インクで記されている。せっかく最高の特産品を作っても、安全に届けられなければ一文の得にもならない。

その懸念に対し、沈黙を保っていた騎士団長マンミヤが、不敵な笑みを浮かべて進み出た。

「その件につきましては、既に万全の対策案をご用意しております。街道上の要所要所に急造の詰所を設け、我がマルストア騎士団が定期的に巡回を行い、潜んでいる魔物や盗賊共を『事前に根絶やし』にします。海上ルートにつきましても、水兵隊による警備航行を強化いたします」

彼女の声には、有無を言わさぬ絶対的な自信が満ち溢れていた。

それもそのはずだ。「地獄の超回復合宿」を乗り越えた現在のマンミヤは、全身から溢れ出る闘気の密度が以前とはまるで違っていた。半人半馬の強靭な肉体はさらに研ぎ澄まされ、ただ立っているだけで、鋼の刃のような威圧感を放っている。

今の騎士団の練度であれば、並の盗賊や魔物など鎧袖一触がいしゅういっしょくだろう。

「頼もしいな。それじゃあ、交易路の護衛と掃討任務はマンミヤさんにお願いするよ」

勇太は満足げに頷いた。

そして、その顔からふっと柔らかな笑みを消し、領主としての冷徹な眼差しで、一つ、極めて重要な釘を刺した。

「だが、巡回任務や護衛において――『マギス・マグナム』は絶対に使用しないでくれ」

「……と、仰いますと?」

マンミヤが、わずかに訝しげな表情を見せた。

ドルグが開発したあの圧倒的な魔砲があれば、遠距離から敵の拠点ごと安全に吹き飛ばせる。被害を最小限に抑える最強の武器を使わない理由が、純粋な武人である彼女にはすぐには理解できなかった。

「あれは、強力すぎるんだよ」

勇太は地図から顔を上げ、窓の外の平和な街並みを見つめた。

「もし、街道でむやみにあれを使って、他領の密偵や商人にその存在を知られたらどうなる? マルストアが『少数で軍隊を殲滅できる未知の兵器』を持っていると知れ渡れば、周辺の貴族たちは必ず恐怖し、同時に喉から手が出るほどそれを欲しがる」

「……ッ」

「羨望、嫉妬、そして恐怖。……最悪の場合、設計図を奪うための暗躍や、いらぬ軍拡競争(争い)を招きかねない。だから、マギス・マグナムは、このマルストアの街そのものが脅かされた時にだけ抜く、『絶対不可侵の切り札』として存在を秘匿しておくんだ」

強力な兵器は、持っていることを悟らせず、ただ自陣の奥深くで睨みを利かせるからこそ「抑止力」となる。

勇太の、一領主として、そして先の先を見据える戦略家としての言葉に、マンミヤはハッとして息を呑んだ。

彼女は己の騎士団の強化と、新兵器の威力にばかり目が行っていた。だが、勇太はその先にある『政治的リスク』までを完全に見抜いていたのだ。

マンミヤは、改めて自らの若き主君の深謀遠慮に畏敬の念を抱き、蹄を鳴らして深く、深く頭を下げた。

「……はっ! 重々承知いたしました。一介の武将としての浅慮、お恥ずかしい限りでございます。既に、あの試射会に参加した者を含め、騎士団にはマギス・マグナムの件は『厳重なる口外無用』として徹底しております。あれは、我らマルストアを守る最後の盾として、大切に秘匿いたします」

「うん、それでいい。頼んだよ、マンミヤさん」

勇太はいつもの穏やかな笑顔に戻り、頷いた。

こうして、マルストアの血脈となる安全な交易路を確保するための作戦が、静かに幕を開けた。

現代の科学トレーニングと魔法の融合によって生まれ変わった『新生・マルストア騎士団』が、その真の実力(マギス・マグナム抜きでさえ、周囲を戦慄させるほどの圧倒的な暴力)を世に示す時は、刻一刻と近づいていた。

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