ろぐあうと:かみんぐあうと
ツイッター始めました。歯車ぐるりと検索すれば出てくると思います。ちょこちょこ設定開示したりするつもりです
「お待ちしておりました。ニャル様、そして...」
「長生きしたければそれ以上はいけませんよ。それよりもこんな突貫工事に付き合わせてしまって申し訳ないですね」
「いえいえ、日本の大名は一日で城を建てたと言うではありませんか。それに比べれば軽いお仕事でしたよ」
「...アザトースさん、僕長生きできますかね?」
「...したい?」
「そりゃまぁしたいですけど...」
「...じゃあできるよ。......ところでコウタ、これなに」
「名前は知らないですが、これはカラオケで歌いたい曲の登録ができるタブレットですね。最近は採点だけじゃなくて色々できるみたいですよ」
「...ふーん......じゃこれは?」
「それはマイクです。歌うときに使うやつですね」
カラオケの支配人とでもいうべき壮年の男性にコウタ達は丁重に迎えられ、大部屋まで案内された。車椅子のアザトースが動きやすいよう席の配置が考えられている部屋だった。コウタがおっかなびっくりしている横で、アザトースは初めての体験であるカラオケに目を丸くし、ニャルはこちらの気も知らずに支配人とハハハハと楽しげに笑い合っている。
「では私はこれで。皆様、ごゆっくりお楽しみください。それとコウタ様、料金は必要ありませんのでどうぞお寛ぎください」
そういって支配人は部屋からさっていく。非日常続きでくつろげるわけないとは思ったが、せっかくタダなわけだし割り切って楽しもうと考え直すことにした。歌っているうちにきっとこの漠然とした不安感も薄れてくれるだろう。しかし手元のタブレットで曲の検索を始めた直後、アザトースの手に袖を引っ張られて邪魔される。彼女の頬は少し膨れていた。
「...コウタ、おはなし」
「ああそうでしたね。でもせっかくカラオケにきたことですし、一曲くらい歌ってからじゃダメですか?」
「......むぅ.........いいよ」
コウタの言葉に一瞬逡巡した後、あからさまにしょんぼりした顔をしてOKするアザトースを見てコウタもちょっと申し訳なくなってきたので、やっぱり先にお話ししようと伝えたがアザトースは下を向いてマイクを差し出すだけだった。部屋の空気が加速度的に気まずくなっていき、いっそのこと短い曲をさっさと歌って終わらせようかと思っていたときだった。
「申し訳ありませんお嬢様。このニャル、お付きの身でありながらこの場ではしゃいでしまい、自分の歌いたい曲を10曲ほど入れてしまいました...!」
ニャルラトホテプがそう妙に演技がかった言い方でアザトースに向かって言いながら、バチコーンとコウタにウインクしてくる。タブレットから予約履歴を見てみると、曲はひとつも入ってなかった。ニャルの意図を察したコウタは、頑張ってニャルの演技に合わせていく。
「えーと...フゥーンなるほど...俺の歌の手番がしばらく遠のいたというわけか。期せずして時間ができてしまったな」
下を向いていたアザトースの頭のアホ毛がピクっと跳ねる。心なしか彼女の視線が上向いている。
「本当に申し訳ありません。せめてお暇を埋める手段があれば良いのですが...」
「フゥーンこれは困ったな。例えばそう...誰かとお話しできれば良いのだが」
「このニャル、その意見に深く賛同いたします。こんなときに話の合う方...例えばコウタ様が遊んでいるゲームの重大情報を持っていらっしゃる方がいらっしゃればいいのですが」
アホ毛がピクピクっと跳ねる。顔を伏せたままコウタの方を窺うようにアザトースが見ている。後一押しだ。コウタとニャルは目を合わせる。
「フゥーン「ラストリゾート」の重大情報だと...そんなものがあるならば是非とも聴きたいところだ。カラオケで一曲歌うよりそっちの方が絶対いいだろうなぁ...」
「......ふふふ。コウタ、ききたい?」
顔を上げて嬉しそうにこちらを見てくるアザトースに対して、コウタは当然了承を返す。その背後ではアザトースの機嫌が治ったことにほっとした顔を見せるニャルラトホテプがいた。その手にはタブレットとマイクが握られていた。
「それで...話って何ですか?」
「......えっと、しととたたかった」
「えっ!?ほんとですか!倒せましたか?」
「...のー。モトベにじゃまされた」
「モトベが!?一体どうして...?じゃあ使徒はどうなりました?」
「...にげた...でもだいじょぶ。すぐみつかる」
「もしかして使徒の居場所を見つけたんですか?」
「...ちがう......しと、こはく」
「............ええええええええ!!?」




