ろぐあうと:ごーごーいけぶくろ
その後取り止めもない話をしながら、コウタ達は歩いて行く。コウタが思うにアザトースの服装や後ろで車椅子を押す女性の身なりを見るに、きっとなかなかにお金持ちなのだろう。しかし彼女の出自などを聞いても答えてくれなかった。一瞬口を開いて話そうとはしてくれるのだがハッと何かに気づいた顔をした後、「...やくそく」と呟いて口を手で塞いでしまう。好奇心が疼いたのでもう少し聞いてみようと思ったが、後ろの女性のえげつない眼光に思わず怯んでしまった。
「遊ぶ約束でしたけど、何かやりたい遊びはありますか?」
「...やりたいこと...?」
「もしかしてない感じですか?」
「...ある」
「あ、なんでしょうか?」
「...おはなし」
「...お話し?」
「...そ」
「いいですけど、せっかく繁華街に来たわけですしもっとこう...他の遊びをしてみませんか?時間は結構ありますしね」
「...なるほど。じゃなにしよ」
池袋には娯楽施設は山ほどあるとはいえ、家で日がなゲームして過ごすコウタにとってアザトースが楽しめそうな施設が何かわからなかった。アザトースもアザトースでこういったところに来るのは初めてらしく、なんの意見もないようだった。二人が途方に暮れていると、ニャルと呼ばれていたお付きの女性が助け舟をくれた。
「陛下...ごほん、お嬢様。失礼ながら言わせていただきますと、もし案がなければカラオケに行くのが良いと思われます」
「...へいか、きんし」
「申し訳ありませんお嬢様。この身の失態をお許ししていただきたく願います。そしてコウタ様、今のはお忘れいただくよう深くお願いしたします」
「いやまぁハハハ...よくわかりませんがとりあえず聞こえなかったということで」
なんとなくアザトースが一般常識に疎い理由と他人にへりくだった態度をしない理由、それに付き添いのニャルがどうしてかっちりとしたスーツを着ているのかがわかった気がした。多分アザトースさんは自分とは身分が天と地くらい差のある存在だ。
「...カラオケ?はつみみ」
「えーとですね、歌が歌える場所です」
「...わたし、コウタとおはなししたい。うたうたうとできない」
やりたいことができないと思ったのか、少し頬を膨らませるアザトースにニャルは丁寧に説明する。
「いえいえ、流石に常に歌っている義務があるわけではないですよお嬢様。ハスターのところの奴らと違ってお嬢様が満足したらいつでもやめてよいのです。それにカラオケの部屋はそれなりに防音が整っています。密談をするには最適かと」
「密談!?」
「...さいよう」
「ありがたきお言葉」
「......まぁうん、アザトースさん、とりあえず行きましょうか。ニャルさん、ありがとうございます。...あのー、密談って一体なんですか...僕陰謀か何かに巻き込まれるんですか?」
「礼など必要ありませんよ下等生物様。へい...んん゛っ!お嬢様がお楽しみになられることがこの私めの最上の喜びですので。それに...」
一瞬話し言葉では絶対に不可能な罵倒のされ方をした気がしたが、気のせいだと思い話の続きを促す。それよりも密談のことの方がずっと気になっていた。
「それに?」
「長居していると巻き込まれますよ」
「冗談ですよね!?」
「ハハッ」
「なんで顔を背けるんですかぁ!?」
「...コウタ、いこー?」
痺れを切らしたのかアザトースが足をパタパタさせて催促してくる。ニャルの急かすような目もあって、コウタはとりあえずサンシャイン通りまで向かうことにした。その時ニャルがパチンと指を鳴らしていたが、突っ込んではいけない部類の類なのだろうと無視することにした。
三人が駅前から去った後、さっきまで誰もいなかった場所からぬるりと二つの影が現れる。どちらも大きく、人の形をしていない。片方は黄色いオーラを発し、もう片方は紫色のオーラを発している。どちらも、只人が浴びれば瞬く間に体が怪物に変わるか、物言わぬ肉となるだろう。
「結界は張られたみたいダネ。サテ、もう出てきてもイインダヨ?クタニド猊下さまぁ?」
「同。下等生物払いは済んだ。その身を顕すが良い。気狂いノーデンス。積年の恨みを晴らさせてもらうとしようぞ」
ニャル(一番近い表現で本体)「No.1から250までは隕石と一緒に突っ込んでくる旧神とその眷属の相手よろしく。No.251から750は『財団』と協力して池袋周辺の人物の記憶処理をお願い。必要ならイスの奴らとミ=ゴあたりを自由に使っていいいから。最後に残りの化身全員は池袋の群衆役をよろしくね。自分はシュブ=ニグラスとヨグ=ソトースの相手するから」
ニャル(化身達)「サーイエッサー!!!」




