Apostle of Aldebaran
「...あきた」
イケブクロの街を散策するアザトースだったが、代わり映えのしない景色に若干飽き飽きしていた。最初こそ立ち並ぶ建物にワクワクしていたが、どこもかしこも閉まっていて外から眺めることしかできないのはかなり歯痒い。オスカーの強化棍を取り出してその効果で松明代わりにしているせいで、片腕のアザトースができることはほとんどない。オマケに強化棍から出る炎もこれまでのオレンジと赤の混じった色ではなく、紫をベースとした暗い色に変化していて灯りとしては物足りない。かといって、魔力で照らすのは消耗するからやりたくはない。変化の理由は主に自分自身のせいだとわかっているのだが、それにしても使いづらい。
「...べんりになれー」
そう言いながら退屈を紛らわすためにブンブン振り回す。舞い散る紫の火花に蜘蛛たちが怖がって、逃げるようにアザトースのマントに潜り込んだ。
「...あれ?」
大半の火花は地面に落ちてそのまま勢いを無くして消えていったが、一つだけさらに燃え盛るものがある。不思議に思いながらアザトースが眺めていると、その炎はパチパチと地面に一条の線を描きながら燃え移っていく。
「...どして」
アザトースは地面にしゃがみ、その炎を近くで見る。火自体には大したものを感じ取らなかったが、炎そのものがよく匂う。ものが焼ける臭いとは異なる、鉄臭い匂い。
「...ち」
匂いの理由に察しのついたアザトースはすぐさま炎の筋を追いかけ始める。血を媒介としてこの炎が燃えるのなら、炎の筋ができるということは誰かが血を垂れ流しながら進んだということだろう。もっと言えば、炎が飛び飛びになっていないということは血をポタポタ垂らしながら進んだのではなく結構な血の量を流しながら進んだのであろう。それならばここまで長い筋が出来上がるだろうか?血溜まりができてもおかしくはないか?それがないと言うことはつまり。
「...だれかがしたいをひきずった」
もしかしたら会えるかもしれない期待と共に、アザトースは炎の跡を辿った。
路地裏も路地裏、血とゴミの匂いがそこらじゅうに染み付いて、だれも近寄らないようなその場所。それは一人で解体作業を行なっていた。
ベリベリと皮を剥ぎ、不要な脂を削ぎ落とす。それが必要だから。
肉を丁寧に切り落とし、むしゃりと食らいつく。それが義務だから。
四つん這いになって血を啜る。それが手段...だったら何だ!そんなことはどうでもいいだろう!!そんなものを考えて何になる!目の前に肉がある!私は腹が空いている!それだけだ!それだけだろうが!!
適当な理由を述べ続ける理性をかなぐり捨てて、解体に使った刃物を放り投げて、獣のように血肉を思う存分貪り尽くす。満足するまで食事とすら言えない何かを続け、ようやく戻った理性が残りは包んで後で食べようと考えた矢先、突然死体が燃え上がる。その色は紫で、理性を半ば捨てているそれにとってもこの事態が尋常ではないことが伝わってくる。
「...びんご」
とてとてと小走りでこちらに来た存在は、ひどくこの場に不似合いだった。しかし外付けの本能が叫んでいる。あいつを食べたいと。消えかかっていた理性が警告する。あの炎は奴によるものだ、奴は危険だと。本能と理性が口々に言う。あいつを殺せと。
「Burry...Burry...Burry...Burry...Burry...Buuurrryy!!!!!」
『アルデバランの使徒が現れました』




