星食
活動報告でも触れましたが、アザトースの魔術にルビを振りました。
食い足りない。一日に一人食べなければ持たない。それなのに目の前の小娘は燃やした。肉を灰にしやがった。気付かれないようにヒトを捕まえるのにどれだけ苦労するのか知らないだろうに。
「Burrrrrr...」
だがこいつはヒトだ。埋め合わせにちょうどいい。止まらない唾液を撒き散らし、使徒はアザトースを喰らわんとその体を震わせた。
「...ない」
アザトースは『アルデバランの使徒』を見て正直呆れていた。仮にも使徒を名乗るのならば、もう少し気品のある姿をするべきだとアザトースは思う。ニャルラトホテプがいい例だ。性格はちょっと面倒だが、身だしなみや信仰を広めるための知性に関しては特級品だ。それに比べて今目の前にいる使徒はどうだろうか?主人であるアルデバランに唾を吐きかけていると言っても過言ではないくらいひどい。こだわりの全く感じられない全身を覆い隠すボロボロの黄色いローブ、主人の名を唱えることすらできなさそうな錯乱ぶり。少なくとも「使徒」を名乗っていい存在ではない。おまけに言えばフードから覗く赤い瞳と涎で汚れた口元は使徒がアザトースを獲物としか考えていない。
「...つみぶか」
これは少し「格」をわからせる必要がある。自分を喰らうなどと考えている使徒に怒りを覚えながら、馬鹿正直に突っ込んでくる使徒に対して、アザトースは努めて冷静に魔術を持って対抗する。
「...おしおき。『叛逆的な盾』」
「Bu!?」
発動した魔術によって、使徒の攻撃からアザトースを守るように緑色の障壁が生み出される。使徒は勢いを殺すことができず、生み出された壁に衝突してしまう。『叛逆的な盾』に使徒がぶつかった直後、使徒の体に電流が走ったかのように頭の先から爪先まで衝撃が伝わる。それはまるで自らの攻撃が己自身に叛逆したかのようだった。
「...いたい?」
『叛逆的な盾』を使ったのは初めてだが、思った通り格下相手には便利な魔術だ。痛みに悶え転がる使徒の姿を見てアザトースは思う。肉体による攻撃でなければ攻撃そのものを反射できないのは使い勝手が悪いが、効く相手にはこの通りだ。
「Burryaaa!!」
地面に転げ回りながら使徒は投げ捨てていたナタを回収する。それは大きく肉厚で、まだ暖かそうな血に濡れていた。拾い上げると同時に使徒はアザトースに向かって襲い掛かる。
「...おばか。『叛逆的な盾』」
学習しない者だとため息をついて、アザトースは再び障壁を発生させる。それは使徒が振り下ろしたナタを受け止め、その衝撃をそのまま跳ね返そうとする。ゴインと重々しい衝撃音が鳴り響く。もう一度吹き飛ばしてもわからないようだったら殺してしまおう。そう考えている時だった。
「Starrrrrr Ecliiipse!!!」
「...やばっ」
使徒の掛け声と同時に斬撃の軌跡をなぞるように次元が裂け、暗黒空間が現れる。それは反射されるはずだった衝撃を飲み込み、その勢いで『叛逆的な盾』にミシミシと嫌な音を立てながらヒビが入る。ヒビは瞬く間に障壁全体に広がり、破られた障壁がガラス片のように散らばった。
『空間の〜』がアザトース、『肉体の〜』がシュブ=ニグラス、『○○の〜』がヨグ=ソトースによって定義、解釈された魔術だったりじゃなかったり




