タイトルコール
「ご来場の皆様、素晴らしき料理大会、牡牛の心臓へようこそ!司会と進行は私モトベがお送りいたします。それでは今回の参加者達の入場です!」
その言葉とともに他の参加者達が一斉に入場口の近くへと進む。観客席は埋め尽くされており、その歓声が鳴り止まなかった。
「エントリーナンバー1!押しも押されぬ優勝候補!この男の店に行列が出来ない日はないらしい....。イケブクロの若き天才が我らが女王の心と舌を掴まんと名乗りを上げた!太陽のカイザ、堂々参戦です!」
モトベの言葉と同時に揺れるような声援に迎えられて一歩踏み出したのは背の高いスラリとした色男だった。肌は健康的に日焼けしていて、黒い髪は短く切られていた。頭にかぶった熊のフードからのぞく顔はとても端正で観客に手を降りながら爽やかな笑みを浮かべると、観客席から黄色い声が上がった。
「エントリーナンバー2!絶海都市シナガワからの侵略者!丘のヤローどもに海の幸を思い知らせてやろうと一人の変態がここに立つ!サモン・サーモン、ここに見参!!」
カイザの次に入場してきた男、サモンも凄まじい声量で迎えられた。その声の大半は悲鳴だったが。その姿は狂人としか呼べなかった。彼はその名前通りにシャケの被り物をしていたが、イケブクロの住民のそれがあくまで作り物に過ぎないのに対して彼の方は完全にシャケだった。首から上がシャケにすげ替えられたといった方が彼を表すのに適切だった。実際彼の頭は生臭かった。異常なのはそれだけでなく、首から下も問題だった。つけているものが海パンにエプロン、後は2本の包丁だけだったからだ。観客からは罵声が飛んできたが彼が生気の無いシャケの顔で睨むとすぐに止んだ。
「エントリーナンバー3!出身、年齢、目的!その一切が完全不明!ウシ!トラ!ウサギの異色のコンボ!チーム琥珀の登場だぁぁーーーー!!!」
入場の時のモトベの口上に観客は他二人のときは声援を上げたが、チーム琥珀ことアザトース達の時は全くの盛り上がりを見せず困惑だけが広がっていた。当然だろう、アザトース達は別にここで料理人をやっていた訳ではない。しかし自分がこの微妙な空気の中入場するのは少し気が乗らなかった。そんなことを考えているとこはくがいきなり抱きしめてくる。
「...なに」
「大丈夫大丈夫☆全部応援に変えちゃお?」
「......りょ」
彼女なりの気遣いにアザトースの心が少しだけ晴れる。神たる自分がヒトが作り出した雰囲気に飲み込まれてどうするというのか。アザトースは気持ちを切り替えて牡牛の心臓の会場へと向かった。
50000PVを超えました。一つの目標を突破して感無量です。




