女王
「それでは参加者全員が揃ったところで我らが女王陛下、偉大なる「あとぼしさま」の末裔アルキオネ様から開催に向けてのお言葉があります」
これまでの盛り上げるような口調と違って神妙な雰囲気で話し始めるモトベに観客達もさっきまでの熱狂が嘘のように静まりかえる。そして誰も口を開かない中、貴賓席に座っていた一人の長身の女性が椅子から腰を上げて話し始めた。体を緻密な装飾の成されているスラリとした全身鎧で覆い、その顔も牛を模した兜で口元あたりしか見えなかった。
「こんにちは、自分が女王アルキオネです。名前は知ってるけど実際会うのは初めて〜な人が多いんじゃないかな?その......もし高貴な感じを求めてたらごめんね?自分そういうの向いていないんだ」
見た目によく似合うハスキーな声で女王らしからぬことを言い出すアルキオネによってこれまで場に漂っていた緊張感が困惑とともに消え去っていく。観客達は隣のヒトたちと顔を見合わせており、女王の近くにいる部下達の姿を見ると彼らは頭を抱えているか、やれやれといった表情をしていた。
「今日はわざわざ牡牛の心臓を見にきてくれてありがとね?自分とっても嬉しいな。参加してくれた彼らの料理と闘いを存分に楽しんでね?」
にへらっと笑う彼女の一言に呼応して、妙な空気になって萎えかかっていた会場のボルテージが一気に上がる。その様は彼女がイケブクロにおいて女王として民衆に認められているのだとはっきりとアザトースにも理解できた。こはくとコウタの方を見ると顔は被り物と兜でわかりにくかったが彼女の奇妙なカリスマに気圧されているというか、驚いているというのか少しのけぞっていた。
「うんうん!喜んでくれて嬉しいな!本当はもっとお話ししたい気分なんだけど、その前に牡牛の心臓のルールと食材について説明しないとなんだよね!そうでしょ?えーっと」
「恐れ多くも申し上げますと女王陛下、私の名前はモトベです」
「あ!そうそう。ごめんね?自分脳みそ空っぽだからさ」
「滅相もございません」
「そっかそっか。じゃあ説明するね?まずはルールだけど制限時間は1時間!それまでに自分に料理を届けることが大事です。過ぎちゃったらまぁ...そこはケースバイケースかな。料理の種類は問いません。ただ指定した食材を使わないことは禁止です」
指定された食材という言葉に少しだけアザトースは引っかかりを覚えた。指定された食材とやらをコウタに言われた覚えはない。もちろんアザトース自身が聞いていなかっただけかもしれないが。
「今回指定された食材、それはこの牡牛の心臓にふさわしいものなんだよね。ではカモーン!」
その言葉と共にアザトース達が出てきた入口とは別のところにある鉄柵で塞がれていた入り口が開く。そこから何人もの屈強な男達によって引っぱられて出てきたのは鎖でがんじがらめにされた一匹の巨大な牛の頭を持つ巨人といった見た目の化け物だった。全身は白と黒の斑らの毛皮に覆われていて、頭から伸びている2本の角は血に濡れたかのように先端が赤かった。その怪物の登場と共に観客は悲鳴で埋め尽くされる。
「驚いてくれたかな?アレは牛闘鬼。今回自分が求める食材はアレの心臓だよ」
アルキオネの見た目のイメージは某ミケラブレードさんです




