占星術師 スターシャ
マッドストックの街中のほぼ中央に位置する場所には、行列が出来ていた。暗黒王の異名を取るタイガーストリーム王、ドルゲマによる侵攻に苦しめられる、ここマッドストックでは、人々の心の拠り所となる占星術が街を上げてのブームになっていた。
そんな占星術師の中でも、取り分け的中率が高いと評判のスターシャと言う、女占星術師が人気を集めていた。
「凄え行列だな?スターシャってのは、もしかしたらサポーターを必要としない、コンピュータシステムで動くキャラになってんじゃねぇのか?」ヘイグは行列を見て、占いが行われているだろう事を鑑みて、スターシャは自動で動いていると予想した。
「さぁな、そうだったらサポーターになってくれる人材を捜さなくて済むから楽なんだが、取りあえず列の先頭に行って、確かめてみよう」リューショーの提案により、三人は占星術が行われているであろうスターシャが待つ列の先頭まで向かった。
「じゃあ明日の午前中に自分が一番大事にしている品を裏山の一本杉の根元に埋めりゃあ良いんだな!分かった、ありがとう」マッドストックの住民であろう男が、占いの結果を受けてか、上機嫌にその場を去った。
「ヘイグの予想は当たっていたようだな。少し声をかけてみよう」リューショーは自動で動いているであろうスターシャに話しかけた。しかし、今までの二人同様に静止画のように動いていない。
「どう言う事だい。この美人、動いていないのに、客は占い結果を聞いたように帰って行くじゃないか」フィリップスが不審に思って言った。
「恐らくはコンピュータ上の都合だろう。設定で住民キャラに何を言うかまで決まっているから、その体でストーリーが流れているんだと思う」リューショーは冷静に分析した。
「…と言う事は、やっぱりスターシャのサポーターを捜さなきゃいけない…」ヘイグが探り探りにリューショーに問うた。
「…と言う事だな」仕方なく三人はリューショーの瞬間移動マジカルで、ヤフゴルドに戻った。
現実世界に戻った滝沢は、小園が目を覚まさない事に気付いた。
「オイ!小園、大丈夫か?オイ!」滝沢は小園を揺り動かしたが、中々、目を覚まさない。
「滝沢さん、多分なんですけど、ソイツただの寝不足で熟睡してるだけと思いますよ。昨日の飲み会で盛り上がって、結構、遅くまで飲んでましたから」後ろで見ていた後藤 修二が、呆れ顔で報告した。
「何や!モッサ君、寝てて起きひんのかいなぁ。糖分が足らへんからや!ちゃんとサンライズ食べて糖分補給せなな!ホンマはメロンパンの方がエエねんけど…」サンライズ片手に川上が言った。
「あぁ、先生!この間、ネットでメロンパンが手に入りましてね、明日には届くはずなんで明日に差し入れさしてもらいます」このところのバタバタで、滝沢はすっかり川上に言うのを忘れてしまっていた。
「ホンマ!嬉しいがなぁ。楽しみに待っとるわ。そん変わり、モッサ君は今夜は研究室で預かったるわ」
取りあえず小園に明日は休んで良いと言伝てを頼み、滝沢は業務に戻った。昨日は作戦が中止になった分、通常業務を熟したので、作業自体はかなり進んでいた。
昼になり、滝沢は昼食を買いに、近くのコンビニエンスストアに行った。その時、滝沢に声がかかった。
「先輩!滝沢先輩。お久しぶりです」振り返ると、自分と同年代の、どこかで見た事がある顔が目に写った。
「和倉?和倉じゃないか!久しぶりだなぁ」懐かしい顔に疲れ気味の滝沢の表情が、幾分、明るくなった。
「先輩こそ。あっ、私、今はこう言う者です」和倉は名刺を差し出した。
"月刊 ゲーム王国 編集部 和倉 瞳"
「へぇ、和倉がゲーム雑誌の記者かぁ!折角コンピュータ関連の専門学校を卒業したのに、記者とは何か勿体ないなぁ」滝沢が意外がるのも仕方ない。和倉 瞳は滝沢の専門学校時代の後輩で、滝沢と同じくゲームプログラマーを目指して、日々勉強に明け暮れていた努力家だったからだ。
「結局は私って才能がない事に気付かされましてね。一個上の先輩に、二人も天才がいたんで、劣等感が半端なかったんですから」和倉は当時を懐かしみながら答えた。
「二人って、オレと森野の事か?」滝沢は急に怪訝な顔になった。
「そうっすけど…あっ!今度、先輩を取材させて下さいよ。折角、業界の風雲児と知り合いなんだから、それを使わない手はないですもんね」和倉は急に態度を変えた滝沢との空気を変えるように明るく振る舞った。その時、滝沢の脳裏にある思惑が浮かんだ。
「オイ、今から時間あるか?取材なら受けてやる!それよりも頼みたい事があるんだ」またまた雰囲気を変えて来た滝沢に一瞬、尻込みしたが、取材が出来るとなって、和倉は再び明るい笑顔を見せた。
「もちろんっす!会社には直ぐに連絡入れますんで」
「そうか、助かるよ。会社は、直ぐこの先だから、行こうか?」二人はDGP企画に向けて歩を進めた。




