キザなバイオリニスト
船着き場にバイオリンの美しい音色が響き渡っていた。アルポートの住民も、船旅の為に訪れていた旅人達も、一様にその音色に導かれるように集まって来ていた。そして最後に情熱的なサビを堪能させた後、その音色は止んだ。
「ブラボー!感動したぜ」
「素敵!こんな男なら今夜、抱かれても良いわ」聴衆達は示し合わせたように、惜しみない拍手喝采を、演奏者に送った。そんな群衆の中にリューショーとヘイグの姿もあった。
「マドモアゼル!今夜、私と一緒にお酒でも如何ですか?」男は自分の演奏を聞いていた、気品のある美しい女性に声をかけた。
「なんかアイツ、いけ好かねぇ野朗だな!オレはああ言ったスカした野朗が大嫌ぇなんだよ。ちょっと締めて来てやる」ヘイグが意気込んで男の元に行こうとした。
「止めとけ!ヘイグ。我々の目的は暗黒の王、ドラゴン…じゃなかった、タイガーストリームを倒してソフィア姫を救出する事だ!あんな気障野朗は放っておけ」リューショーはヘイグを宥めた。
「分かったよ!あっ…カリン姫ね。しかし、一言くらい言ってやりたいぜ」ヘイグが一瞬、小園に戻りかけて、そんな会話をしていた時、後ろから声が聞こえた。
「なんだい!アンタたち。ボクに何か、用でもあるって言うのかい?」二人が振り返ると、そこには先ほどまでバイオリンを演奏していた男が立っていた。
「イヤ!なんでもない。我々はカリン姫を救出する為の旅の途中だ。アンタのような軽薄そうな男に用はない」リューショーはキッパリと言ってやった。
「へーっ、あのヤフゴルド王国の美人で有名なカリン姫か?噂では聞いていたが本当だったんだね!そんな美人の窮地を皆んなのアイドル、フィリップス様が捨て置く訳には行かないね。ボクの力をYOU達に貸して差し上げよう」フィリップス役を快諾してくれた後藤 修二は、小園の時の反省を踏まえて詳細に説明を受けていたせいか?すっかり、なりきっているのか、地なのかは分からない口調で喋った。
「ほう!貴様の力とな?この怪力自慢のヘイグ様を前にしても同じ台詞を言っていられるかな?」ヘイグはフィリップスにいきなり襲いかかった。しかしフィリップスはその攻撃をヒラリと華麗に躱すと、ヘイグの後ろ手に回り込み、持っていたバイオリンの弓でヘイグの項を軽く突いた。ヘイグはフィリップスに襲いかかる前への勢いと、後ろからのフィリップスの軽い攻撃で前にうっぷしもんどり打った。
「テメェ!このナンパ野朗!」直ぐに起き上がりフィリップスに向かって行くヘイグをリューショーが制止した。
「止めておけ!お前の負けだ!ヘイグ。フィリップスと言ったな。仲間は一人でも多い方が良い。アンタの実力は大体分かった。宜しく頼むよ」リューショーはフィリップスに握手を求めた。『フィリップスのレベルは30か。設定通りだな。これでオレのレベルが38、ヘイグが34か。中々良い感じで来れてるな』
「ボクの実力が?フン!ボクの実力はこんなモンじゃない。ボクは女性を癒やして差し上げるように、ヒーリングマジカルを得意としているんだ。見たところ、アンタ達は力任せに戦う傾向にあると見た!ボクを仲間にするメリットは、そこにあると思うけどね」フィリップスは長く垂らした前髪を後ろに跳ね上げて答えた。
「分かったよ。何はともあれ宜しくな!それより困った事があるんだ。次の目的地、マッドストックまでは航路を行かなければならない。仲間になったばかりのアンタに言うのもなんだが、船の当てはないか?」リューショーは核心的な悩みをフィリップスにぶつけた。しかしその悩みは簡単に解決された。
「そこに停泊してるクルーザーはボクの所有物さ!一目でボクの実力を見抜いたアンタを気にいった!仲間になった記念に好きに使うがいいよ」
こうして船と癖はあるが新たな頼りになる仲間を手に入れたリューショーたちは、一路、次なる目的地、マッドストック目指して旅立った。




