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新緑騎士団  王都No.1人気の騎士団に男装して潜入し、生き別れた兄を探します  作者: 北村 清
第五章 中の島の攻防

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ラングーンの街

そして二日後。


アレクとリーリアは無事ラングーンに降り立った。


船の中での二日間。筋トレをする以外には寝るしかなく、ひたすら惰眠を貪っていたので気力と体力はこの上なく充実している。

一秒でも早く王都に戻る為、一行はすぐに行動を開始した。


まず最初にする事は、ラングーンにあるグリューネバルト家所有の商会にウィンクラー夫人の手紙を届ける事だ。

その手紙には『王都にいる伯爵夫人が、備蓄食料を王都に運ぶよう命じておられる』という嘘が書いてある。


伯爵夫人がグリューネバルト領に帰る途中、ラングーンの街に降り立っていたらこの嘘がバレるのでは?とアレクは思ったが嘘はバレなかった。

商会主はラングーンの倉庫に備蓄してある食料を、商会所有の船にすぐに運んでくれた。更に鎮痛薬や解熱薬もあるだけ用意してくれた。


「この冬ラングーンではインフルエンザが流行らなかったので、熱冷ましや痛み止めの薬はどこの薬屋でも余っているはずです。」

と人の良さそうな商会主は教えてくれた。

良い事を教えてくれた。

薬には使用期限というものがある。

うまく交渉すれば、安い値段で薬を手に入れられるだろう。つまり同じ量の金貨でよりたくさんの薬が買えるという事だ。


アレクは部下の一人を集めた商品の管理と積み込みの為に商会に残し、残りの四人の部下を二人一組で組ませ、そのうちの一組とアレク&リーリア組が薬屋巡りをする事にした。残りの一組の部下にはその他の用品を買い集めるよう指示した。シーツや毛布、衣類や燃料などだ。


「行くぞ、リーリア嬢。王都ではしかが流行っている事が噂になったら薬屋は薬の値段を釣り上げるはずだ。薬を安く買うのは時間との勝負だ。急ぐぞ。」

「リーリアでいいわよ。その代わり私もアレクって呼ぶから。」


さわやかな朝の空気の中、二人はラングーンの街に駆け出して行った。



そして昼。


屋台で買った具の豪華なパニーニを食べながら、アレクに一緒に来てもらって良かったなあ。とリーリアは思っていた。


アレクは値切りのプロだった。

元々薬草の種類に対して造詣が深く相場をちゃんと心得ていて、それを大量に買う事を条件に値切りまくってくれたのである。


「薬草に詳しいのね。」

「騎士団が購入する薬草の管理は事務隊の仕事だからな。」

「一つ一つの値段もみんな記憶しているのね。」

「そういう事は忘れない主義だ。」


すごいわ。とリーリアは思った。自分も商品を値切るのは苦手ではないが、商品の適正な値段を知らなかったら最初の段階でボラれるだろう。博識なアレクの存在は心強かった。

ちなみに。今食べているパニーニもアレクが値切り、三個分の値段で四個買ったのである。


昼食を食べて一回、アレクとリーリアは商会へ戻った。買った薬が持ちきれない量になったからだ。でもってついでに他のメンバーのお買い物状況を把握しておきたい。それなりの量が揃っているならもう王都に戻るつもりだ。


商会に帰ってリーリアもアレクも驚いた。

倉庫の前に人だかりができていたのだ。


「何の騒ぎ?」

「あ、おかえりなさいリーリアさん。王都で伝染病が流行った事を聞いた人達が、寄付金や食料を届けに来てくれているんですよ。」

商品の積み込みの為に残っていた団員がそう言った。彼は第五隊の人間でマクスの部下だった。


「届けに来てくれる人のほとんどが、ラングーンの花街の人達です。他人事と思えないからって。それに、中の島に馴染みの相手がいるという商人達もいます。母親に手を引かれた小さな子が貯金箱を持って来てくれたりもしてるんですよ。」

そう言って第五隊の団員は涙ぐんだ。


リーリアも胸がつまった。優しい人や応援してくれる人もたくさんいるんだ。そう思って、とても嬉しかった。


というか、もうラングーンで王都の疫病の件が噂になっているのか。

それと同時にグリューネバルト家が支援物資をかき集めている事が噂になっているのだ。商人街の情報網恐るべしだ。


一組のグループはもう戻って来ていた。雑貨を買い付けていたグループだ。

とある織物屋が激安で大量のシーツを売ってくれたという。


「倉庫の屋根が雨漏りして、商品の白いシーツが全部濡れたそうです。綺麗に洗って乾燥させたそうですが、シミが落ちなかったそうです。そのシーツを安く売ってもらいました。伝染病患者が触れた物はどうせ焼却処分するのですからこれでも十分ですよね。」


清潔であるなら問題無い。それらの品も商会の人間に頼んで船の中に運び込んだ。


しばらくしてもう一組のグループも帰って来た。彼らが買い付けた薬の量はリーリア達の半分だったが、彼らは貴重品である砂糖をたくさん買い付けていた。砂糖があれば高熱で脱水状態になっている患者に経口補水液を飲ませる事ができる。


「砂糖を安く譲る代わりに、中の島の娼館の方々にうちの商会の名前をしっかり宣伝してください。と頼まれました。」

と戻って来た二人は言った。


「よくやった!」

とアレクは部下達を褒めた。そして、それなりの量が集まったのでアレクとリーリアは王都に戻る事にした。五人の部下達のうち二人にはグリューネバルト領へ行ってもらい、ウィンクラー夫人の書いた手紙をグリューネバルト伯爵夫人に渡してもらう事にした。残りの三人には更なる買い付けを頼んだ。


「リーリアは伯爵夫人に手紙を書かなくていいのか?」

とアレクが聞くと

「今はいいわ。時間がもったいないでしょ。」

とリーリアは答えた。


まあ、確かに。時は金なり、いや命なり!なのだ。


「後は頼んだ。」

と言って、滞在時間約五時間。アレクとリーリアはラングーンの地を離れた。


「フロル、無事でいて。」

リーリアは船の中で遥かなる王都に向け祈りを捧げた。


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