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新緑騎士団  王都No.1人気の騎士団に男装して潜入し、生き別れた兄を探します  作者: 北村 清
第六章 ローゼンリール邸放火事件

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二度目の襲撃

襲撃は狭い橋の上で起こった。

橋の前後で襲撃者達に挟まれたのだ。襲撃者の数は十二人に増えていた。その内の半数は弓を持って遠くから矢を射かけてきた。


「フロル、シュテファン!駆け抜けろ!」

ヴェルギールが前方の敵と切り結び突破口を開いた。正直、フロル達は戦力にならない。足手まといは離脱するべきだ。フロルとシュテファンは馬を全力で走らせた。フロル達を追いかけて来ようとした者達もいたが、ユリウスがその者達の前に立ちふさがった。


怖くてたまらなかった。そしてユリウス達が心配だった。数は力だ。あんなに人数がいたらユリウス達がどんなに強くても怪我をするかもしれない。いや、もっと最悪な事が起こったら・・・。


必死になってフロルは目的地のハイネン村まで馬を走らせた。



ハイネン村は『村』と聞いていたので小規模集落かと思っていたが、結構な大きさがあった。村の周辺には堀まで掘られ、かなりの守備力がありそうである。村の入り口に警備兵がおり、シュテファンは顔見知りだったようで通行料を払ったらすぐに通してもらえた。警備兵に襲撃に遭った事を伝えると、警備兵は奥から仲間を呼んで来て十人くらいで様子を見に行ってくれた。その上で堀にかけられた跳ね橋が上げられた。


フロルは不安な気持ちで後方を見つめた。


「フロル君。打ち合わせた通り、待ち合わせ場所に行こう。」

とシュテファンに言われる。

「ええ、そうですね。」

と答える声が震えてしまった。


どうして?

という気持ちで胸がいっぱいだった。襲撃を予測して通る道をわざわざ昨日変えたのだ。なのに襲撃者は村の手前で待ち伏せをしていた。


フロル達の目的地がハイネン村だという事はグリューネバルトの人達は知らない。その情報は昨日シュテファンから伝えられた。その上で遠回りの道まで選んだ。なのに待ち伏せされたのだ。


情報が漏れている。


そしてその情報を漏らした者は、フロル、ユリウス、ヴェルギール、シュテファン、オーラフの中にいるのだ。




昨晩遅くまで書類を探していたせいで、アレクは少し寝坊してしまった。


ローゼンリール家の領館は、侯爵家の領館でありながら使用人がものすごく少なかった。そもそも、侯爵夫婦が全く領地に戻って来ないそうだ。領地経営は家令に丸投げして税金だけ吸い取っているらしい。そもそもここは旧エルネストロート領だ。領民に新領主一族を敬う気持ちなど全く無いだろう。客であるアレクはともかく、エーデルガルトまで使用人に無視されている有様だ。


アレクは書斎の続きの間で、イルムヒルトに用意してもらった毛布にくるまって寝た。朝食はグリューネバルト領から持って来た携帯食ですませる。書斎に戻ると、エーデルガルトは既に書類探しを始めていた。


「おはようございます、姫君。」

「ああ、おはよう。」


昨日までこの部屋にはいなかった生き物がいた。エーデルガルトの側に鳥籠があって鳩がいたのだ。


「その鳩は?」

「さっき届いた。おまえの仲間、襲撃されたらしいぞ。」

そう言って、エーデルガルトはアレクに手紙を差し出して来た。


「びっくりだよな。襲撃されるとしたら僕らの方かと思っていたよ。」


アレクは急いで手紙を読んだ。怪我をした者はいないらしい。内容を読んでアレクはほっとした。


「ところでイルムヒルト殿は?」

「昼食を店まで買いに行ってもらった。昨日の夕食も今日の朝食も携帯食なのに昼食までそうなのは味気ないだろう。」

それはそうだが、エーデルガルトの側を離れてもいいのか?と思った。屋敷内にはユージィンという男がいるし、アレクだって一応他人の男だ。信頼されすぎるのも逆に困る。


一応その他の侍女達がエーデルガルトの側に控えてはいるが、立っているだけで書類探しは全く手伝ってくれない。人手が必要なのだから手伝って欲しいと思うのだが、もしかしたら字の読み書きができないのかも?という可能性を考えて口を出さなかった。そもそもエーデルガルトが何も言わない以上アレクがエーデルガルトの侍女に指示をする事はできない。


「ユージィンが言っていた『面白い見世物』って何だろうな?」

突然エーデルガルトがそう言った。


「興味がおありなのですか、姫君?」

「もしかしてこの襲撃の事なのかな、と思っただけだ。」

「それはないでしょう。襲撃があったのは夕刻のようです。それを見てからこの館に昨日の時点でいるのは鳩でも無理です。」

「前座は見ない主義なのかもしれないぞ。となると本格的な見世物はこれから始まるのかもしれない。ユージィンは昨日のうちにこの屋敷を出て行ったそうだ。」


アレクの胸がざわッとした。という事は襲撃はまた起こるかもという事だ。あるいはそれ以上の何かが。


「まあ、一つ言える事は。」

書類を眺めながらエーデルガルトは言った。


「クローゼ殿達を『白葡萄荘』で殺そうとした者にとっては、我々が調べている事よりも『リーナ』という女性を探される事の方が脅威のようだな。だから、こちらには襲撃が来ないのだろう。」

「・・・・。」

「もしかしてだが、おまえ達は本当は『リーナ』について何か知っているのではないか?」

「私は知りませんが、何故そう思われるのですか?」

「『リーナ』は、おまえ達について詳しそうだからな。少なくとも僕よりは詳しそうだ。」


エーデルガルトは自分と同じ事を考えている。とアレクは思った。

フロル達が襲撃を受け、更にまた襲撃を受ける事があれば、それは誰かが『白葡萄荘でフロル達を襲わせた者』に情報を流しているという事だ。


「僕達がこれ以上ここで書類探しをする事は無意味なのかもしれない。昼食を食べたら僕達もルリという女性を探しに行ってみようか。それで敵がどう動くかで新しく見えて来るものがあるかもしれない。」

エーデルガルトはアレクにそう言った。

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