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新緑騎士団  王都No.1人気の騎士団に男装して潜入し、生き別れた兄を探します  作者: 北村 清
第六章 ローゼンリール邸放火事件

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エルネストロート家の悲劇

残酷描写があります

「んぁっ?」

泣きすぎて鼻が詰まっているのでフロルは変な声が出てしまった。


「ローゼンリール侯爵夫人って娘がいたの?」

「侯爵夫人の娘ではありません。侯爵の前の・・いや前の前だったかな、とにかく侯爵の子供であって侯爵夫人にとっては継子です。」

「フロレンティーナ様。今は一刻も早く領地に戻らなくてはならない状況ですので、続きは馬車の中で話しましょう。どうか馬車にお乗りください。」

とルーカスに急かされた。


「ヴェル様は?」

とフロルが聞くと、ルーカスとクリスティーネは顔を見合わせた。


「領地まで連れて行くか、ここに置いて行くかの二択ですわ。」

「そんな!せめて王都まで送らせてください。というか、一刻も早く医者に・・・。」


「フロル様。この麻痺薬は二、三日体が麻痺しますが命に関わるという事はありません。ついでに言うと解毒薬もありません。肝臓と腎臓が薬物を分解するのをひたすら待つしかないのです。」

「そしてですね、フロレンティーナ様。王都まで送って行く時間も惜しいくらい今は喫緊の事態なんです。とにかく一刻も早く領地に戻って頂かないと困るんです。フロレンティーナ様は今領地にいる事になっています。そして相手は侯爵令嬢で、フロレンティーナ様より身分が上の御方です。面会を申し込まれてずるずると先延ばしにするわけにはいかないのです。」

「何より面倒なのは、クローゼ殿と一緒にフロル様が新緑騎士団の団舎に戻って、これ以上の外出は禁止とか上官に言われてそれを何とかして説得する。という事態になる事ですわ。フロル様、レーステーゼ殿にこれ以上の里帰りは禁止と言われて口答えできますの?」


そんな自信はない。


だが、まだ殺人者が潜んでいるかもしれないこの土地にヴェル一人を置いて行くという選択肢は絶対にない。


結局、フロルはそのままヴェルと共にグリューネバルト領に戻る事となってしまった。



そして馬車の中。


現在、御者台にはルーカスが座り、フロルとクリスティーネ、ヴェルギールは馬車の中にいる。


ヴェルギールの意識はまだ戻らない。


「この薬は、体の自由を奪うもので意識を失う事はあまりないんですけどね。よっぽど体質に合わなかったか、よっぽど大量に飲まされたかでしょうね。」

とクリスが首を捻っている。本当にこのまま寝かせておくだけで大丈夫なのか、ものすごくフロルは不安だった。


「ところで、何でローゼンリール家のお嬢様が亡命なんかして来たんですか?」

「まあ、一言で言えば、継母が妊娠したからです。我が国では、誰かが亡くなった時財産は配偶者か兄弟、子供に分配される事になっています。親が相続する事はできません。ようするに、侯爵令嬢が亡くなられても父親や継母が財産を受け継ぐ事はできないのです。」

「はあ。」

「ですから、今まではローゼンリール侯爵夫人が継子を殺しても夫人には何の得もありませんでした。ですが夫人は妊娠しました。事実はどうあれ、その子はローゼンリール家の子供、つまり侯爵令嬢の弟妹です。なので、その子供には侯爵令嬢の財産を継ぐ資格があるのです。その為侯爵令嬢は、ローゼンリール侯爵夫人に殺されるのではと恐れを抱いて侯爵領から逃げて来られたのです。侯爵令嬢はフロル様に自分の後見人になって欲しいと希望されておられます。」


「そんなにお金持ってんの?その人。」

「侯爵令嬢の実の母上はエルネストロート公爵家の唯一人生き残った令嬢でした。女性でしたので領地は継承できませんでしたが、お金やお宝は相続しておられます。おそらく我が国でフロル様に次いで個人資産を持っている10代でしょう。」

「でもローゼンリール侯爵夫人は王様の愛人なんだから、お金なんて腐るほど持っているでしょう?わざわざ人殺ししてまで更に手に入れる必要ある?」

「フロル様。貪欲な人間はどんなにお金を持っていても、更に欲しい、もっと欲しいと思うものなのですよ。」


その娘さんも大変だ。

フロルはそう思ってげんなりした。


フロルもエルネストロート一族の悲劇については一通り知っている。おもな情報源が学校の歴史の教師ではなく吟遊詩人なのでどこまで正確かは不明だが、フロルの認識はそれほど間違っていないと思う。


フロルが生まれるちょっと前。エルネストロート家は泥沼の内戦状態に陥ったのだ。




エルネストロート公爵という人には、優秀な弟がいたが息子がいなかった。なので弟を自分の後継者として指名していた。弟には息子が二人と娘が一人いた。孫息子もいた。なので、エルネストロート家は安泰だと思われていた。


そして公爵はある日突然病気でぽっくり逝ってしまった。爵位はすぐに弟が相続した。しかし、葬儀から一ヶ月後。元公爵夫人が自分は妊娠をしている、と言い出したのだ。


半年後、元公爵夫人は出産した。生まれたのは男の子だった。元公爵夫人は義弟に爵位を譲るよう迫った。


その事実に義弟自身よりも、家臣達が猛反発した。首も座っていない子供に公爵としての仕事ができるわけがない。それに家臣達は、その赤子が本当に先代公爵の子供かどうか疑っていた。


ようするに。


元公爵夫人に人望が全く無かったのだ。


だが公爵夫人は権力を諦めず、王家に訴え出た。国王としては思い通りに操るのに、公爵は智勇兼備の中年男より言葉も話せない赤ん坊のほうが都合がいい。その頃の国王は先代の国王だったのだが、国王は甥に公爵位を譲るよう命令した。公爵と家臣団は命令を拒み、国王が軍を派兵して内戦が始まった。


兵の数が多いのは国王軍だが、地の利は公爵軍にある。内戦はだらだらと一年近く続いた。


その頃、王都で大地震が起きた。人々は死んだ前公爵の呪いでは?と噂した。国王軍はもう内戦をしている状況ではなくなった。その為和平交渉が行われ国王軍は撤退した。


だが三ヶ月後。前公爵夫人が公爵に自分と息子が殺されそうになった!

と言って殺人未遂の罪で公爵を告訴した。国王は公爵を王都に召喚しようとし公爵は拒否した。そしてまた内戦が始まった。公爵領も、もういろんな事が限界だった。公爵は戦死し、家族は捕らえられた。女性達は命を助けられたが男は三歳の孫息子まで皆処刑されてしまった。

そして、前公爵の息子が王家のバックアップのもと新公爵になった。


なのにだ。


その二ヶ月後、新公爵は猩紅熱にかかって死んでしまったのである。


結局領地は王家が接収し、財産は処刑を免れた公女が全て相続した。


領民達にしてみたら、あの内戦は何だったんだ!と言いたいところであろう。それと同時に新公爵が死んだのは無惨に殺された公爵一族と家臣達の呪いだ。という噂が広く囁かれた。


生き残った公女は、王様の甥と結婚させられた。莫大な財産を相続しても彼女は当然不幸だった事だろう。相次ぐ悲劇で心の弱っていた公女は、娘を生んだ直後に亡くなってしまった。


その娘が、グリューネバルト領に亡命して来たのである。

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