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05.知覚(後編)

ほぼ型月。


「じゃあまずは……座学ね。」


焦らしてくれるじゃねぇか!

まぁ座学は嫌いではない。好きではないが。

理論も知らないものを使うのってなんだかつまらなくないだろうか。

高校生の時、趣味で電気工事士の勉強をしたとき、世界の見え方が変わったことを思い出す。あの時から資格マニアの道が始まった。


「お母さん、ざがく、って何?」

「お勉強の事よ。」

「えー、私お勉強嫌い。」

「最低限だけお母さんに時間頂戴。最低限これだけ守ればうちで魔法を使ってもいいわ。」

「ルミエ、僕だってめちゃめちゃお勉強は嫌だけど、それよりもっと怪我する方が嫌だし、何よりもルミエが怪我するのが嫌だ。だから一緒に聞こう?」

「……うん。」


なるほど、そうなってるんだ。

ドラクエやらFateやらクトゥルフなんかを通ってきた僕としては、何とかギリギリ理解できる範囲だった。

聞いていて思ったのは、どことなく型月作品っぽい考え方だなということだ。


体内を走る魔力回路という概念がある。

それが個人と世界の理との仲介を果たし、それが結果を引っ張ってくる。世界の理や世界の理では無く、世界そのもの、またはそれに近い、精霊や龍などの存在、それらとの交渉材料として、触媒や自身の魔力、情報などを使って現象を起こす。それがこの世界の魔法の基本概念だ。


「魔術回路」は全く別物らしい。

確かに魔術回路を身体に刻みつけたり、埋め込んだり、魔力回路に書き込む(型月で言う魔術刻印?)人間も居るらしいが、基本的に魔術というのは特定の魔術式が書き込まれた紙や触媒そのものを指す。

その魔術回路に魔力を通すことによって、魔術回路そのものから現象が発生する。

つまり電気回路で言うとライトに電気を流すとライトは当然光るが、ライトの中の構造そのものを魔術回路といい、引っ張り出された現象を魔術という。


つまり、型月的に魔術と魔法の区別は、「その時代の文明の力で再現できる奇跡かどうか」

だが、この世界では、「魔術回路という式を使った現象を魔術、世界との交渉の結果得られた現象を魔法」

としているのか。


「お母さんあんまり詳しくないんだけど、魔法陣って言うのもあってね。」

「魔法陣?魔術回路じゃなくて?」

「同じ水を出すって事をやっていても、仕組みがまるっきり違うの。やってることはほとんど魔法と同じで、ただ誰でも魔力さえあれば蛇口を捻れるようにするのが魔法陣の役割。魔法陣は魔術回路と違って、元々ある魔法を陣に落とし込む必要があるから、魔術回路と違っていきなりその場で作るのは難しいけれど、工業化するならば魔法陣はとても有益なものよ。」

「御手洗のお水も、もしかして水源から引いてないの?」

「いいえ、うちは上下水道を川から引いているから、魔力をほとんど家の中で使用しないわ。強いて言うなら照明ね。」

「ちなみになんでなの?」

「お父さんの趣味よ。」


個人的にはいい趣味だと思う。

この世界においては別に魔法や魔術の技術と、建築や工業の知識に貴賤はない。ただどちらも等しく技術であるし、エネルギーの元が何かというだけの話だ。まぁ感染症なんかに掛からなければの話だが。

確かに家で生水を飲んだ記憶がないな。


「……魔導?」

「まぁこれは御伽噺だけれどね。」

「言葉だけ聞くとめちゃめちゃ強そうだけど。」

「魔導は規模の話じゃないのよ。」


曰く、魔導とは世界に頼らないのだと言う。

本質的には魔法よりも魔術に近い。

ただし、現象を引っ張ってくる式が自分自身なのだと言う。自分自身そのものが魔術回路を成り立たせる唯一絶対の要素。この世界の神が、その存在を成り立たせるに足る要素。初めの神は、自身の存在から言葉という概念を発生させ、そこから神が光という言葉を作り、ありとあらゆるものを成り立たせた。つまりこの世界は神の魔導の結果産まれたものであり、対価として自身の存在強度を使った。だから神は信仰を必要とする。信仰があればあるほど、神の存在は大きくなり、力は大きくなり、その影響も大きくなる。


「はーい今回の座学はここまで。第1回は扱い易い魔術から説明するわね。」

「私魔法やりたい!」

「もうちょっと大人になったら、お兄ちゃんくらいの年になったらね。それまでは待ってね。」

「お兄ずるい!」

「安心しろ。ルミエ。我が愛しの妹が魔法を使う時にゃ、俺が手取り足取りよりどりみどりに教えてやる。」

「よりどりみどりは違うんじゃないかしら?」

「だからほら、今日から一緒に魔術のお勉強しような。」

「うん!」


「さて、ここに印鑑があるわ。さっき説明した通り、この印鑑を紙に押して印影をつけることで、魔術回路は成立する。この印鑑は昨日私が彫ったもので、『魔力が通れば反応して、魔力を対価に水を生み出す』ように書き込んであるわ。」

「質問!それって、お肉を出すことってできるの?」

「答えとしては、対価次第ね。ちなみに、魔術や魔法で発生した物体と自然で発生した物は素材の性質が全く異なっていたり、あんまり変わらなかったりするわ。お水はあんまり変わら無い方。沸点は少し高くなったり低くなったりするけれど、お水を対価にお水を生み出すと、沸点が完璧に安定するわ。このあたりの話はもはや講義になるからやめときましょう。」


うーん、俺の仮説だと元素結合の1部を無理やり編んだりして生成してるのだろうか?

まぁ世界は広い。どっかに研究してる学者がいるだろ。いつか聞こう。(小並)


「紙に印影をつけた所だけれど、貴方たちって魔力の使い方わかるのかしら。」


ふるふる。

ルミエと揃って顔を左右に揺らす。


「それじゃあちょっとだけ魔力とは何かを教えましょうか。」

説明っぽくなってしまうのは控えたい……。

まぁこの後魔術回路とか魔法陣とかほぼ出てこないんですけどねお兄さん。

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