表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/60

第57話:旅人の苦悩(2)

 誰もが寝静まる深夜。

とある町の宿屋も周りの民家同様に消灯していたが、1箇所だけ未だにカンテラの灯りが灯った部屋があった。

中では二人の男が椅子に座って向かい合い、深夜にもかかわらず片方の男は話し続けている。

その聞く側に回っている男、オーウェンも本来なら寝ているはずの時間だったが、常識を吹き飛ばすほどの事体に眠ってなどいられなかった。

彼はただ静かに男の声に耳を傾けているだけに見えるものの、その胸中は色々な感情が入り乱れていた。

やがて、椅子に座った向かいの男、グラン・ヴォルトの話が一旦落ち着いた。

今まで口を閉ざし続けていたオーウェンも重苦しく口を開く。


 『お前が未来から来たというのは分かった。それが本当だと言うこともな』


 『・・・』


今までとは打って変わって黙り込んだグランを一瞥したオーウェンは、その前に並べられた持ち物を見渡す。

『W2』のカード、携帯端末、M92FSハンドガン、特殊合金製のナイフと、グランにとっては元の時代では日常的に見慣れた物だ。

だが、そのどれもがこの時代の技術では到底作ることなど出来ない品ばかりであり、当然ながらその価値も計り知れない物だった。

物によっては時代を揺るがすほどの力さえ秘めている。


 『ただ、そうだとしてもお前はこれからどうする?この時代で生きていくつもりなのか?それとも、帰る手段を探すつもりなのか?』


互いが椅子に座り、同じ目線の高さでオーウェンはグランに問いかけた。

グランは考えるような素振りなど見せず、目を見開いてすぐに回答した。


 『私を、このグラン・ヴォルトをここまで追い込んだ奴を殺したい!それ以外はどうなろうと知ったことではない。例え、死ぬことになろうとも!』


狂気の色に染まった顔に、思わずオーウェンも身構えてしまう。

情報を持っているのは有益だが、こいつは・・・。

過去にオーウェンも王族という仕事柄、色々な人物を見てきていた。

その中に今のグランのように復讐にとり憑かれる者も少なからず見ている。

ただ、その全てが復讐のためには何をしても構わない、例えば一人を殺すのに国を沈めることすら厭わない様な人格が壊れたような者達ばかりだった。

彼の知っている限りでは、その多くが復讐を達成しても一生出られない牢獄送りか死刑、もしくは復讐で命を落としている。

彼の目の前にいるグランもその中に含まれてもおかしくはないだろう。

できれば関わりたくはない者だったが、オーウェンからすれば持っている情報はあまりにも魅力的であり、その価値は金や銀にも匹敵するものだった。


 『・・・ならば、この時代にお前と同様に来ている者を探すのか。復讐の手伝いは出来んが、未来の情報をくれるならこちらもそれなりの対価は払おう』


 『よかろう。貴様がどこの誰かも知らんが、それで十分だ』


初めて笑みを見せたグランだが、その笑みは狂気に満ちた禍々しいものだった。

冷静を装うオーウェンもさすがに動揺が体の硬直で表れてしまう。


 『・・・少なくとも貴様には手出しをしない。外で待っている執事も魔法使いのようだしな。まぁ、貴様が奴を匿ったりしていなければの話だが?』


グランの殺意を孕んだ探りを入れるような視線に、オーウェンも冷や汗を掻く。

今すぐにでも外で待っているタリスを呼び出し、自身も剣を構えたい。

だが、その衝動を手を強く握ることでこらえる。


 『分からないな。少なくともお前の言う奴が誰なのか教えてくれなければ、その判断もつかない』


 『クハハッ!それもそうだ。見た目は20代の黒髪の東洋人。この時代では珍しかろう?』


 『黒髪・・・東洋人・・・、ふむ・・・』


聞いたこともないような素振りを見せるオーウェンだが、その脳裏にはある人物がはっきりと浮かんでいた。

そう、妹を助けたことで一時的にイーグランドへと身を寄せているあの男の姿だ。

実際、東洋人は珍しいとはいえ、行商や旅人としてイーグランドへ立ち寄る者も少ないがいる。

グランの言っているのが瞬を指しているとはまだ断言できないものの、彼は直感で間違いないだろうと確信していた。

思い起こせば、初めて会った時にも瞬に対し、敵国の密偵ではないのかと疑いを抱く一方でどこか違和感を感じていたのを彼は思い出した。

それが今では合点が行ったためか、感じた違和感はまるで風に飛ばされる砂のように消えていく。

人知れず心の中で納得したオーウェンだが、それと実際答えるかは別だった。


 『思い当たらない。東洋人は確かに珍しいが、年単位ならば見ないこともない』


 『そうか。この時代の情報は大局的なものは知っている。これから先、何が起きてどうなるかということもな。あくまで国家間の動きでしかないから細かいものに関してはまるで分からんが、貴様には重要な情報だろう。とりあえず、貴様にその情報を渡す代わりに、食料と宿、それとその男を捜してもらおうか』


あくまで優位な立場で進めようとするグランは強気だった。

未来の情報がどれほどの価値を生み出すかを知った上でのスタンスだが、同時に与えた情報が未来を壊す原因になるのも彼は当然理解している。

ただ、今の彼にとってはそんな事よりも瞬を殺すことの方が重要なようだ。

瞬の居場所がわかったとオーウェンが言ったならば、彼は喜んで自身の知る情報をオーウェンに話してしまうだろう。


 『いいだろう。手配しよう。それとその男を捜すのはいいが、さっき言ったもの以外に特徴はないのか?』


 『特徴・・・、ないな。中肉中背、強いて言うなら優男だ』


 『ふむ、名前は分からないのか?』


若干の間を空けてオーウェンは聞いた。

己の中で確信している事をより確実にするためだ。

オーウェンの思惑など考えもせず、グランはすぐに答えた。


 『瞬・・・、奴の名は雨堂 瞬だ』


 『・・・』


やはりか。

内心で自身の考えの裏づけが取れ、予測どおりの返答にオーウェンは今後のことを早くも考えていた。

どうする事が一番の利点をもたらすのか、と。


 『よし、とりあえずその男を捜させよう』


 『ああ、そうしろ。おそらく弾頭に長年溜め込んだ私の魔法とミサイル爆発の効果が相まって、このタイムスリップは起きた。ならば、同時に巻き込まれたはずの奴も近い時間軸、近い場所にいるはずだ。ひょっとすると、私よりも先に着ている可能性もある』


グランの推測に、オーウェンに再度緊張が走る。

幸い、グランに気取らせるほどの体の動きは出なかったが、彼の厄介な判断力を認識させられた。

この時代に生きるオーウェンは知る由もないが、グランも元々は世界を支配する『W2』の中でアジア支部長を務めるほどの男であり、世界水準でもかなりの高い能力を持っている。

判断に関して言えば人を管理し続けてきた彼がミスをすることはないに等しい。

オーウェンにとっては今後、渡り合っていくのが困難な相手でしかないが、彼が復讐に取り付かれている事はその点にだけ有利に働く。

何せ、瞬という復讐相手の事しか頭になくなるのだから。


 『・・・今日はもう遅い。これ以上は宿にも迷惑がかかる。続きは明日にしよう』


 『いいだろう』


 『隣に部屋を取ってある。そっちで十分に休』


 『その必要はない』


 『『!?』』


突然、窓が吹き飛んだように乱暴に開く。

まるで台風でも来たかのような開き方だが、そこに飛び込んできたのは台風がかわいく思える程の存在だった。

物音に反応して中へと入ったタリスを含め、三人の男たちの前で強引な来訪者はゆっくりと立ち上がる。

そして、傷のある顔を上げ、澄んだ瞳でグランを捉えると彼を指差し、まだ事体の把握できていない三人に告げた。


 『その男、こちらによこせ』


 『お前はっ!あの時の『旅人』か』


 『なっ!?『旅人』だとぉ!!なぜ、この時代の『旅人』が私を!?』


 『知る必要はない』


黒い衣服に身を包み、あくまで落ち着いた顔のアイシア。

対して、動揺と緊張が見て取れるほど、男たちの体は強張っていた。

男達へと向かってアイシアが1歩踏み出すと、我に返ったタリスが間に割ってはいる。


 『下がれ!この方を何方と!?』


 『知っている。用があるのはお前の主人じゃない。その男だけ渡せば危害を加えるつもりもない。主人が大切なら下がっていろ』


放たれた殺気にタリスの足は竦み、体は震え始める。

どうあがいても勝てない相手であることをタリスは悟った。


 『ぐぐっ!』


 『そのまま、動かないことだ。さて、グラン・ヴォルトと言ったか。悪いが・・・死んでくれ』


言葉の終わりと同時に一瞬でグランとの間合いを詰めたアイシア。

人知を超えたスピードに、オーウェンとタリスは知覚することすら出来ない。

唯一、『旅人』との経験があるグランだけは意識的に身構えていたため、瞬時に目の前に現れたアイシアにも反応してみせる。

だが、それまでだった。

流れるような動作でアイシアは焦りと恐怖に押し潰される寸前のグランへと掌底を放つ。

その速度は目で捉えることすら困難であり、手の形どころか手の動きすら常人には分かりはしない。

対峙していたグランも同様だったが、何かが来るのを直感的に察した。

当たれば肉が爆ぜ、骨が砕けるであろう一撃にグランは己の死をイメージするが、その無残な予想を覆すべく全力で体を捻った。


 『うおぉぉっ!・・・がっ!ぐがぁっ!?』


体を突き抜けるような痛みがグランを襲う。

まるで、剣で刺された痛みと棍棒で殴りつけられた痛みが同時に襲ってきたような、味わったことのない激痛にグランは叫びを上げるしかない。

今、連続で攻撃されればどうしようもなく死ぬだろう。

ささやかな抵抗でしかないのかとグランは己の無力さを痛感し、同時にちっぽけな気力を振り絞り、襲い掛かるであろう死の痛みへと覚悟を決めていた。

ただ、そんな彼に追撃は訪れなかった。


 『む?』


グランが霞む視界で捉えたアイシアは不思議そうな目でグランを見ているだけであり、追撃してくる様子はなかった。

彼女は未だにグランが生きていることを素直に驚いていた。

頭へと向かって放った掌底はグランの右肩へと突き刺さり、命を脅かすまでには至っていなかったためだ。

当然、それがグランの文字通り必死な回避によってもたらされた結果であることも、アイシアは理解していた。


 『致命傷を避けたか。虚を突いた私の速度に反応し、僅かとはいえ動いてみせるとは驚いた。あの男といい、未来から来た者は皆こうなのか?』


 『!!・・・貴様っ!今、なんと言った!?』


グランは痛みを忘れ、アイシアの言葉に即座に反応した。

彼にとっては憎たらしい笑顔の男が泡の様に沸き立って心の中を埋め尽くす。


 『あの男といい、未来から来た者は皆こうなのか?、と言った』


律儀に一言一句正確に返すアイシアに、グランに再び狂った笑みが宿る。

出来ることなら誰しもが近づきたくはない笑顔だった。


 『クハハッ!そうか、知っているんだな!雨堂 瞬を!』


 『・・・なるほど、お前の知り合いか』


 『違う!奴は私の標的だ!殺さなければ気が済まん!教えろ!奴はどこだぁっ!!!』


叫びながらグランは左手を肩の位置まで上げ、魔法による黒い球を作り上げていく。

当然、その照準はアイシアへと定まり、言わなければ放つと言う脅しの行為だった。


 『それがお前の魔法か。私にそんな物が通じると思っているのか?『旅人』を知っているならお前も知っているだろう?』


 『やってみなければわかるまい!』


 『愚かな』


黒い球体、『ヘブンズゲート』はその大きさを増していく中、1歩後ろへと下がったアイシアは『イージスの盾』を展開させる。

直後、グランは溜めた力を解き放つが如く、『ヘブンズゲート』をアイシアへと打ち出した。

ただの魔法であれば、それは『イージスの盾』により雲散、もしくは弾かれてしまう。

それはグランも重々承知している事だった。

『ヘブンズゲート』は『イージスの盾』を掠め、アイシアの足場となっている床へとぶつかる。

狙いが逸れたわけではない。

そこが彼の狙い通りの位置だった。

着弾するや否やその床に広がった黒い影は床を消失させ、彼女の足場をなくしてしまう。

それにより彼女が下の階へと落ちるのは当たり前だった。

彼女は下の階のベッドに派手な音を立てて着地すると、アイシアの重みと落ちた衝撃でベッドは中から折れた。


 『小癪な真似を・・・』


階下から自身の通ってきた穴を見上げたアイシアだが、そこにはすでにグランの姿は見えなかった。

残っていたのは動くに動けないオーウェンとタリスだけだった。


 『お、おい!お前、何をしてるんだ!』


アイシアは声に振り向くと、下の階の出入り口に短剣を持った恰幅のいい宿屋の主人が立っていた。

おそらく、宿屋全体の軋みと騒がしい連中に注意を促すつもりで上の階へと上がる途中、大きな何かが壊れるような物音に気づいて先に下へと来たのだろう。

そこで彼が見たのは無人だった部屋のつい数時間前とは違う荒れ果てた中に立つ、異質な存在だった。

当然、宿泊客でないのは彼も知っている。

得体の知れない見慣れぬ不審者に、せいぜい護身用程度に持ってきていた短剣を、店主は抜かざるを得なかった。


 『お前がこれをやったのか!?』


 『面倒だな』


 『何だと!?』


 『これをくれてやるから、口を出すな』


震える店主にアイシアは頭ほどの大きさがある袋を作り出して放り投げた。

床の上に落ちたそれは少しも跳ねず、かなり重いものが入っていると店主も予想できたが、その先はまるで予想が出来ていなかった。

落ちた衝撃で袋の口を縛っていた紐が緩み、袋の中から鈍く光る物が転げ落ちる。

その落ちた物に目が向いた店主だが、その目線はアイシアへと戻ることはなかった。

何しろ、彼は自身の目を金色に光る延べ棒から離すことはできなかったからだ。


 『・・・こっ、ここ、こいつは、まさか金か!?』


震えながらも素早く手に取った延べ棒は、正に金色に輝く金であり、袋に入った分も合わせればかなりの金額だった。

こんな宿なら軽く十軒は建てられるほどの桁外れの金額に店主は言葉を失う。

目の焦点すらもぶれ、今の彼は手元の金でさえまともに見えていない位の衝撃を受けるのも無理はない。


 『正真正銘の金だ』


 『こんなに!?』


 『なに・・・、この宿自体の代金だからな』


 『え?』


言葉の意味が分からない店主の前で、アイシアは金と同じく鈍く光る銀色の巨大なハルバートを作り出す。

そのあまりの長さに部屋の角から角までを占有し、店主は尻餅をついて震えた。

彼には最早、これが現実なのかも分からないだろう。

正気を失う寸前の店主の前で、アイシアはハルバートを思い切り振り回しにかかった。

先端の鋼鉄の刃は回転により、十分な勢いも乗らぬままにすぐさま壁へと激突する。

並みの人間であれば、そこで壁へと突き刺さって終わりだろう。

最も、アイシアの身長をも軽々と超える長さのハルバートは、例え平地であったとしても常人には難しい。

だが、アイシアの振り回すハルバートの刃は壁を易々と砕き、狭い部屋内を強制的な拡張を行いながら回りきった。

その確かな手応えにアイシアは割れた窓から外へと飛び出す。

伏せていた店主はハルバートの壁をぶち抜く音がやんで顔を上げたが、そこにアイシアの姿がないことに安堵したものの、周りの異変に気づいた。


 『な、なんだ!?この音はっ!?』


建ててから十数年立つ慣れ親しんだ宿が、店主も今までに聞いたことのない音を上げて地震が来たかのように揺れていた。

異常な事体に慌てて逃げようとした店主だが、異変は先に最高潮を迎えた。

切られたというよりは押し潰された壁や柱が自重を支えきれなくなり、軒並み崩れ落ちていく。


 『うわぁぁぁっ!ひ、ひいぃぃっ!?』


落ちてきた瓦礫がハンマーで叩かれた程の痛みを店主に与え、たまらず店主は外へと逃げ出す。

始まった崩壊に上の階には亀裂が走り、上に残っていたオーウェンも揺れに足を取られていた。


 『くっ!』


 『王子、失礼します!』


タリスは揺れの中でもどうにか立ち上がり、オーウェンを拾い上げながら窓から飛び出した。

タリスがちょうど地面へと降り立ち、そして店主が外へと這い出てきた途端、宿は叩き潰されたように崩れ落ちた。

その様をグランは別の建物の影から伺っていた。


 『まさか、この時代の『旅人』にまで狙われるとはな。・・・まぁいい、私の狙いは』


 『雨堂 瞬を殺すことか?』


 『っ!?』


反射的にグランは声の方を向きながら逆のほうへと跳んだ。

その手にはM92FSが握られ、銃口を向けつつ引き金を絞っていた。


 『遅い』


銃声が辺りへと轟く中、銃弾を交わしてグランの腹へとアリシアの掌底がねじ込まれる。

咄嗟のことで回避にまで余裕のなかった彼に、殺人的な攻撃は直撃した。

人外の力に吹き飛ばされたグランは、他の家の壁へと叩きつけられ、自分の服を染めるほど大量の血を吐き出した。


 『ごはっ!』


地面へと倒れこんだグランだが、最早、その体に反撃できるだけの力は残ってはいなかった。

に・・・げる・・・ん、だ。

起き上がる力を振り絞り、立ち上がろうとするも動くことすらままならない。

そこへアリシアは悠然と歩いて1歩ずつ歩み寄り、その手に宿を潰したハルバードを作り出す。


 『このまま放っておいても死ぬだろうが、私はさっさと終わらせたいんでな』


 『く、そ・・・』


 『これで最後だ』


アリシアはハルバードを振り上げた。


 『ま、待て!その男にはまだ用がある!』


騒ぎを聞きつけて駆けつけたオーウェンの声に、アリシアはハルバードを止めた。


 『用?それはお前の国の行く末か?それとも自身の未来か?どちらにせよ、本来お前が知るべきことではない。いや、誰も知るべきではない。未来のことはな』


 『だとしても、私には国を、国民を守る王族としての責務がある!それを果たすためには情報が』


 『そんな物、おまえ自身がどうにかするだけの話だ。未来を知らなければ消える弱小国など、あってもなくても変わりはしない。・・・まぁ、私の後を継がせようとしているお前がそこまで能無しならば私の見立違いだったと言うことだ』


 『しかし』


 『これ以上の反論は無しだ。口出しすればお前だろうが殺す。いいな?オーウェン』


 『・・・オー、ウェン、だとっ!?』


息も絶え絶えで今にも死にそうなグランは、口を閉じたオーウェンを見た。

ただ、その表情は死ぬ恐怖ではなく、瞬のことを聞いた時と同様に驚きに満ちていた。


 『ま、さか・・・、貴方、いや貴方様が・・・っ』


瀕死の状態にもかかわらず、オーウェンへと向かってグランは手を挿し伸ばしていた。

オーウェンからすればそれはただの助けを求める行為にしか見えず、言葉一つも出せないオーウェンは目を逸らした。

直後、グランへと必殺の一撃は振り下ろされる。

肉が切り裂け、潰れる音の後、グランは物言わぬ死体へと変わっていた。


 『仕事は終わった。お前も元の行動に戻るがいい』


 『・・・』


何も言えないオーウェンの前からアリシアは跳びあがり、暗闇にまぎれてその姿を消してみせた。

彼女が地面へと降りた時にはすでに村の外だった。

そのまま、そこから走り出そうとしていた彼女だったが、その足の先に一本の矢が突き刺さった事で足を止めた。


 『・・・何の真似だ?』


矢の飛んできた先をアリシアは睨みつける。


 『何、ちょっとどうなったか聞こうと思ってな』


アリシアの見る先に立っていたのは弓を持ったロビンだった。

ロビンは弓を消すとふざけているのか、欠伸をして尋ねる。


 『で、どうなったんだ?』


 『殺した』


 『そうか。・・・瞬が言っていたんだが、過去に飛んできたのは奴の魔法が原因だったそうだ』


 『なるほど、お前の言いたいことはこうか?奴が生きてさえいれば魔法を使って二人とも未来へ送り返すことが出来たんではないか?ガイアの命令である「2ヶ月以内に未来へと送り返すか、殺すか」の前者を実行できたのではないかと?』


 『まぁな』


 『残念だが、私はそんなあやふやな物に頼る気はない。お前も知っているだろう。どうやって過去に来たのかも知らないが、時間や時空関連の魔法の制御は普通の魔法よりも難しいと聞く。そんな物に頼るよりも私は確実な方法を取る』


 『そう言うだろうとは思っていた。ただの可能性の話だ、忘れてくれ』


ここから去ろうとロビンは背中を見せたが、一歩踏み出す前にアリシアは会話を続けた。


 『自己中心的で気の向いたことしかしないお前が、やけに肩入れするな?』


 『別に。ただ、俺の相手ができる唯一の相手だからな。全力は出せないがそれでも重宝する相手なんだよ』


 『・・・それだけなら、二ヶ月の期限一杯に殺せばいいんじゃないか?』


 『フン、飼った猫や犬を見殺しにする気はねぇよ』


そう言うとロビンはその場から去っていった。

後に残されたアリシアは、長年見続けている男の些細な変化に疑問を抱いていた。


 ここまで読んでいただきありがとうございます。

出来れば文法や書き方、ストーリー展開で意見を頂けるとありがたいです。

お気に入り登録いただけるともっとありがたいです。


 仕事が忙しいため、間隔が伸びました。

休日にまとめてかけるような奴ではないため、1週間で50~70行と言うのを繰り返してようやく書いたのがこれです。

元より集中力が低いためか、1話をまとめて書けた試しはありませんが、他の人達は書き出したら書き終わるまで終わらないもんなんですかね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ