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第八話 襲撃者

やっと世界観固まってきました〜。

過去最大の長さになりますがお付き合いください!

【世界観解説その2】


かつて、世界は恐怖に包まれた。

そう。

魔族による侵略が始まったのである。

魔王アポカリプスによって力を増した魔族たちは地上を蹂躙し、人界に多くの血が流れた。

だがしかし、今は亡きサルムンド王国の、

とある村に住む少年に女神アストライアの加護が舞い降りた。


少年は成長して青年になり、冒険者となり、そして旅に出た。

旅の中で出会いや別れを繰り返す中で青年は、時には仲間と共に命の危機を乗り越え、時には仲間と共に笑い合い、その中で友情を育んでいった。


だがある時、青年は偶然、女神が作りし聖剣に出会う。

その名は、“聖剣エクスカリバー”。

魔王を討つことができると言われる伝説の剣である。

選ばれし者にしか抜けぬその剣を抜いた青年はサルムンド王国最後の国王によって勇者に任命され、そして遂に魔王を討ち滅ぼした。



魔王を討ち帰還した後、青年は英雄王となった。

荒廃した大地に新たな国を築き、再び人類には平和がもたらされた。



彼の名はカイゼル・グラディオ・ディレクトゥス。

200年前世界を救った勇者であり、プエルグラトゥス王国初代国王である。



だが、カイゼル王が即位した直後、預言者の口からとある予言が告げられる。



「武の国が栄えし時、英雄の国に癒しの巫女現れん。

空色の瞳の少女は万物を癒す奇跡の力を身に宿す。

その力は傷を癒し、病を治し、呪いをも祓う奇跡となる。

世界が闇に覆われし時、巫女の光は人々を照らす大いなる光となりて地上に救いをもたらすだろう。」


ーーーーーーーーーーーーー


エイト「ーーーーそう言えば、別館にいる皇太子ってどんな人なんですか?」


僕は庭園を歩きながらアイリスさんにそう聞いた。

というか、元々それを聞きに来たんだよね。



アイリス「え、えっと....な、なんで....」



アイリスさんは戸惑っていた。

やっぱり、酷いことをされたのかもしれない。

こんなに優しい人をこんなに怯えさせるなんて....!


エイト「アイリスさん、もし酷いことをされているなら正直に言った方がいい。

もう二度とアイリスさんを酷い目には遭わせないから!」



アイリス「ーーーーーち、違うんです!!」



ーーーーーえ?


“違う”?


僕はもしかして早とちりをしていたのか?



アイリス「こ、皇太子殿下は気さくで優しい方で、身分を鼻にかけることもなく......き、緊張で上手く喋れない私に帝国の文化や特色など様々な話をしてくださって......」



あ、普通にいい人だ。



エイト「え....じゃ、じゃあなんであんなに怯えて.....」



アイリスさんは遠慮がちに話し始めた。



アイリス「その.....こ、皇太子殿下はとても美しい方で....まるで夜の女神みたいで......

そして身長が高く、その体にはき、筋肉がついてて.....と、とても逞しいんです。

ま、まるでオーガのように。

そして声が大きくて.........わ、私が別邸に行くといつも庭で木剣でご兄弟達と殴り合ってて........わ、私.....怖くて........」



そう言ってアイリスさんは泣きそうになってしまった。

.........うん。確かに彼女が怖がるわけだ。

美形な上にガタイが良くて声が大きい.......しかも常に剣で戦ってる。

まるでアイリスさんが怖がりそうな要素のフルコースだ。



ギデオン「お嬢様。お客様がお見えです。」



うわぁっ!!

びっくりした.....本当に全然気配を感じないな......この人.......

後ろから話しかけられるの心臓に悪いからやめてほしい..........

でも、アイリスさんにお客さん?

お友達はいないって言ってなかったっけ........



エイト「あ、あの.......お客様って.......?」




ギデオンさんは真顔で言った。








ギデオン「ーーーーーーーヴァルディエール侯爵家の皆様です。」


ヴァルディエール.....?



なんだろう.......


僕はヴァルディエール侯爵家のことをアイリスさんに聞こうと思いアイリスさんを見た。


だがーーーーー彼女は、皇太子の話をしていた時よりも明らかに顔色が悪くなっていた。


まるで世界の終わりでも予言されたかのような、そんな顔だった。



ーーーーーーーーーー



僕はどうしてもアイリスさんが心配だった。

ヴァルディエール侯爵家がどんな家かわからないけど.......何も起きないとは思えない。

庭園から離れ、屋敷に戻るアイリスさんのあとをついて行ったが、部屋の前で止められてしまった。

だが、どうしてもアイリスさんを一人にすることができなかった僕は、ギデオンさんに無理を言って中に入れてもらった。




部屋に入ると、そこには黒と真紅を基調とした服を着た二人組がいた。

一人は暗いワインレッドの髪と黄金の瞳を持つ壮麗な男性で、もう一人は純金と見紛う見事な黄金の髪と血のように赤い瞳を持つ美少女だった。

ギデオンさんが言うには男性の方はヴァルディエール家当主ベリアル・ヴァルディエールさん。

女性の方は娘のラフレシア・ヴァルディエールさんというらしい。

向かいに座っているのは相手の男性をすごい形相で睨むエルリックさんと、ひどく怯えた様子のアイリスさん。



両者の間には重苦しい空気が流れていた。



アイリスさんを見ると、呼吸がうまくできていなかった。

顔が青白く、焦点が合わない瞳には涙が滲んでいた。

体は小刻みに震え、頭を抱えながら俯いている。



エイト「ーーーーーアイリスさん!!」



アイリス「エ、エイト....さ.......」



アイリスさんが僕を呼ぶ声は、聞いたこともないほど弱々しい声だった。

まるでゆらゆら揺蕩って消え入る陽炎のような声だった。

僕を見た瞬間、彼女は大粒の涙を流して僕にしがみついた。



???「アイリス様。

その、すぐ男性にしがみつく癖。

まだ治っていらっしゃらなかったのね。

シルヴェール家は誇り高く勇敢な家だと評判なのに.......あなただけですわよ?


虫程度で大騒ぎして、殿方に媚を売るような尻軽は!」



金髪の少女はアイリスさんを見るなりいきなり罵倒した。

アイリスさんは僕の後ろでカタカタ震えている。



アイリス「ごっ、ごめんなさっ.........!」



ベリアル「やめなさい、ラフレシア。

あまり同年代の子を虐めるものではない。」



ラフレシア「フンッ!

その売女のような仕草、本当に良くお似合いですこと!」



金髪の女性はラフレシアというらしい。

天使のように儚い美しさを持つ彼女だが、その外見とは裏腹にとんでもなく毒舌だった。

僕は彼女の言葉を聞きながら腹が立った。


........アイリスさんが売女?


そんなわけないだろ。


あんなに奥ゆかしいアイリスさんが、男に媚を売れるわけがない!



エイト「ちょっと!!それは言い過ぎーーーーー」



ラフレシア「..........なんですの?」



エイト「うっ........」



何か言わなければならないのに、真紅の双眸に睨まれた瞬間、僕は何も言えなくなった。

こんな時でさえっ.......!

僕はっ...........!!



ラフレシア「(わたくし)の名はラフレシア・ヴァルディエール。

ヴァルディエール侯爵家の娘でしてよ!!

平民生まれのゴミの分際でこの私と口を利くなど言語道断!

今ここで首が刎ねられてもおかしくないのよ?」



クソッ.......!!


こんな時ですら.........僕は自分を優先するのか.......!


アイリスさんがこんなに怖がってるのに.......僕は.......怖くて動けない...........!!


だが、どんなに悔やんでも僕の手足は動こうとしなかった。

目の前の少女から発せられる圧で、僕はもはや呼吸すらままならない。


もう、ダメだーーーーそう思った時だった。



アイリス「と、取り消してください........!」



ラフレシア「ハイ?」



アイリス「エイトさんは.......ゴミなんかじゃありません!!

私の........大切なお友達です!」



アイリスさんは震える声でそう言った。

相変わらず手足は震えているが、先程とは違い相手の目をまっすぐ見ている。

その目は涙で滲んでいたが、その奥には芯の強さが感じられた。


ーーーーーだが。



ラフレシア「....................は?」



その声は驚くほど低く、アイリスさんを見るその目にはまるで獣のような鋭い眼光が宿っていた。



アイリス「ひっ........!」


アイリスさんは小さく声を上げ、ラフレシアが近づくにつれ後ずさった。



ラフレシア「こんな平民が友人?

ハッ.........お笑いね。

ペットを友人だなんていう人、初めて見たわ。

こんな頭にお花畑の咲いてる能天気な女が“癒しの巫女”だなんて、世も末ね。」



ラフレシアは冷たい目でアイリスさんを見下ろした。

アイリスさんは目を瞑り、ドレスの裾を強く握りしめながら大粒の涙を流した。



アイリス「わ、私っ......私は.......」



ラフレシア「全く.....こんな女がヴァルディエールの敷居を跨ぐというだけで吐き気がするわ。

シルヴェール家の方々は少々甘やかしすぎなのではなくて?」


.........は?


どういうことだ.......?



ベリアル「そう言うなラフレシア。

いずれはお前の義姉となるのだ、今のうちに仲良くしておくが良い。」



........“義姉”?

話についていけない僕を他所に話は進む。



アイリス「わ、私は.......結婚するつもりは........」



エイト「ちょ、ちょっと待ってください!一体何の話ですか!!」



ラフレシア「控えなさい平民!!

あなたには関係のない話でしてよ!!」



次の瞬間、ベリアルさんが笑った。



ベリアル「はっはっは、元気のいい子だ。

要はね、うちの息子と結婚するという話だよ。」



ラフレシア「お、お父様!?」



ベリアル「良いではないか、ラフレシア」



結婚........?


アイリスさんは嫌がってるじゃないか........!!


もしかして、無理矢理結婚させる気か......!?


アイリスさんは僕の後ろで震えている。

僕は確信した。


これは.....明らかにアイリスさんの意思じゃない.......!


エイト「そんなの......そんなのおかしいです!

だってアイリスさんが嫌がってるじゃないですか!」



絶対におかしい.......!!


アイリスさんの意思を無視して勝手に話を進めるなんて.......!


そんなの絶対におかしい!!



ベリアル「貴族社会ではよくある政略結婚だよ。

シルヴェール家は軍事と外交を司る我がヴァルディエール家の庇護下に入る。

その代わりシルヴェール家には娘を差し出してもらう。

平民の君には縁のない話だろうが、いい機会だから覚えておくがいい。」



そうか......貴族社会ではよくあることだったのか.......


でも.......アイリスさんは震えてるじゃないか.......!!



エイト「でも.....アイリスさんは嫌がってるじゃないですか!

好きでもない人と無理矢理結婚させるなんて、間違ってると思います!!」



そうだ、間違ってる。


アイリスさんだって好きじゃない人と結婚なんて嫌に決まってる!



アイリス「あ、あの.......私は、結婚するつもりはありませんっ.......」



ベリアル「そうはおっしゃられましても、私とて心配しておるのです。

貴族の令嬢は通常15歳になる頃には婚約者を決めるのが普通。

あなた様はもう16になられます。

無理を押し付けるようなことは致しませんが、そろそろ婚約者を決められた方がよろしいのではありませんか?」



コイツ........まさか気が弱いアイリスさんを狙って......?


アイリスさんを結婚させるくらいなら、僕が一時的にでも盾になれば......!



エイト「ま、待ってください!!

こ、婚約者が必要なら僕がーーーーーー」



ラフレシア「ーーーーーあなたがどうすると言うの?

アイリス様の婚約者になると?

ハッ、揃いも揃っておめでたい頭ですこと!

どうぞご勝手に。

”汚れた血“と結ばれたシルヴェール家の汚点と蔑まれたいのならね!」


そんな......どうしようもないのか?


このままアイリスさんは結婚してしまうのか?


ーーーーーそう思った時だった。



???「娘の躾がなっていないぞ、ヴァルディエール侯爵!!

キンキン頭に響いて耳障りじゃ!」



振り返ると、そこには身長2メートルほどの大男がいた。


世界を闇で覆うようなどこまでも深く暗い漆黒の髪は短く切り揃えられ、深海のように深い藍色の瞳には刃のように鋭い眼光が宿っている。

肩幅が大きく、声はまるで拡声器を使っているかのように部屋中に響く。

もしかして.......この人が皇太子なのか?

でも、なんか怖そう.......



ベリアル「マ、マルクス殿下!!何故ここに!?」



エルリック「マルクス殿下の弟君であらせられる皇太子殿下が、別邸にご招待なされたのだ!

他のご兄弟もいらっしゃる!」



マ、マルクスって名前なのか.......

見た目通り強そうな名前..........



エルリック「エ、エエエエイトくん!!君も頭を下げたまえ!!


この方はフォルティトゥード・イプサ・ユースティティア皇帝国第二皇子

マルクス・フォルティトゥード・ユースティティア殿下だ!!

不敬罪に問われたら困るのは君だぞ!?!?」



ハッと気づいて辺りを見回したら、僕以外全員膝をついて頭を下げていた。

あんなに高圧的だったラフレシアですら、信じられないほど縮こまっている。

そんな様子を見て僕は悟った。



........あ。これ、僕もやらなきゃマズイやつだ。



エイト「す、すすすすみません!」



僕は慌てて膝をついてみんなと同じように頭を下げた。



マルクス「ハーハッハッハ!!構わん!!

皆の者、楽にせい!!

今日の俺は第二皇子マルクスではなく、ただの冒険者マークじゃからな!!」



エルリ&ベリアル「はは!!」



.......ん?


マーク..........?


どこかで聞き覚えが........


........っていうか冒険者!?


大国の皇子が!?


何が何だかわからない僕を他所に話は進み、とりあえず婚約の件は保留になった。




ーーーーそんな時。


皇太子「兄者ーーーーーー!!!

トイレはまだかーーーーーーーーーーー!!?」



声デカッ!!

遠くから聞こえるのに耳元で叫ばれたみたいな声量!!


言われなくともわかる........


これは......絶対マルクスさんの兄弟だ.......





マルクス「おぉ、すまんな皆の者。

弟に呼ばれたので俺は行く!

ではさらばじゃ!!」



そう言ってマルクスさんは部屋から飛び出して行った。


嵐のような人だった。



ーーーーーーー


その夜。


僕は部屋で本を読んでいた。

勇者カイゼルの建国物語だ。

このプエルグラトゥス王国では知らぬ者はいない非常に有名な本で、国中で慣れ親しまれている。

かく言う僕も勇者カイゼルのファンで、幼い頃はよく勇者ごっこなどをして遊んでいた。


そんな思い出に浸っているとーーーーー





アイリス「ーーーきゃあ!」


近くの部屋にいるアイリスさんの悲鳴が聞こえた。


僕は枕元に置いてあった黒の柄の無骨で地味な剣を取り、急いでアイリスさんのもとに向かった。

.........正直セレスティアさんがいるから使う機会なさそうだけど、念のためだ。


部屋に着くとーーーーアイリスさんが襲われていた。


ベッドの上で馬乗りになり、喉元にナイフを突きつけていた。


僕は支援魔術を自分にかけ、そして駆けた。


高く飛んで振りかぶり、アイリスさんを襲う奴の足を狙って剣を振った。


だがーーー僕の剣は空振り、気づけば僕の背後から短剣が迫っていた。


その短剣をギリギリで受けたが、相手の力が強く僕は押されてベッドに倒れ込む。


段々腕に力が入らなくなり、相手の切先が僕の喉に当たる。


出血し、首から一滴血が流れ落ちる。

ふと、涙目で僕を見るアイリスさんが目に映った。




ーーーーーここで......負けてたまるか!!



僕は更に支援魔術を重ね掛けし、相手を突き飛ばして体勢を整える。


ーーーー大丈夫。


まだやれる。


僕は支援魔術《拘束(バインド)》を使って相手の動きを封じた。



エイト「ハァァァァァァァァッ!!」



そのまま相手を蹴り飛ばす。


彼の体は宙を舞う。




ーーーーッダァン!!



壁に強く打ち付けられ、そのまま動かなくなった。


.........お、終わったのか..........?


室内に沈黙が流れる。

ハッ.......アイリスさんは.........!?


僕はアイリスさんを見た。


座り込んでしまっているが、彼女の体には傷ひとつ無かった。


エイト「アイリスさん!

とりあえず僕は襲撃者のことをエルリックさんに知らせてきます!

アイリスさんは部屋から動かないでください!!」






ーーーーだが。


扉を開けた先には襲撃者の仲間と思われる、全身黒ずくめの2人組が立っていた。

作者です!


アイリスを襲う襲撃者を倒したエイト!

そこに現れる2人組!

エイトとアイリスはどうなるか!?



次回!


「第九話 癒しの巫女」よろしくお願いします!

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